第6章 公安の維持と災害対策 

6 オウム真理教の動向と対策

(1) オウム真理教の動向
 [1] 教団の危険性と「原点回帰」の教団運営
 オウム真理教(以下「教団」という。)は、公安審査委員会による観察処分の更新を免れるため、上祐史浩最高幹部が中心となって教団改革を推進し、無差別大量殺人行為である松本サリン事件及び地下鉄サリン事件を首謀した、麻原彰晃こと松本智津夫被告の影響力が払拭(しょく)されているかのように装ってきた。ところが、平成15年10月に上祐が教団の指導部を離れてからは、幹部による集団指導体制に移行し、教団運営の方針を「麻原隠し」から松本への帰依を強調する「原点回帰」へと転換した。
 その後も教団は、信者に対して、松本の説法を収録したビデオテープの視聴を義務付けたり、松本への帰依を誓わせたりするなど、松本の影響を強めようとしており、いまだ治安に対する危険性を具備している。
 他方、東京地方裁判所は、16年2月27日、地下鉄サリン事件等に関して起訴されていた松本をすべての罪で有罪とし、死刑を言い渡した。

 
図6-6 オウム真理教の拠点施設等

図6-6 オウム真理教の拠点施設等

 [2] 組織活動の閉鎖性及び欺瞞(まん)性
 教団は、依然として、信者を教団施設に居住させて活動しているほか、教団名を伏せて施設の確保や信者の勧誘活動を行うなど、組織活動の閉鎖性及び欺瞞性を維持している。また、教団幹部による薬事法違反事件では、違法な資金獲得活動の実態が明らかになった。さらに、教団の分派グループによる傷害致死事件の捜査を通じ、教団が組織的に違法行為を行い、松本を唯一の帰依の対象としている実態が明らかになった。

 
教団施設の内部
教団施設の内部

 
(2) オウム真理教対策の推進
 [1] 特別手配被疑者の追跡捜査と組織的違法行為の厳正な取締り
 地下鉄サリン事件の発生から10年以上が経過した平成17年6月現在も、同事件等に関与した平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は逃走中である。このため、警察は、3人を警察庁指定特別手配の対象者とし、広く国民の協力を得ながら、全国警察を挙げた追跡捜査を推進している。
 また、教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進し、16年中は、6件の事件で34人を検挙するとともに、9都県で延べ67か所を捜索し、関係資料約2,700点を押収した。

 


 [2] 信者による違法事案の未然防止
 警察は、松本の公判に際し、所要の警備対策を講じ、国内外の信者による違法事案の未然防止を図ったほか、教団施設周辺の住民や関係地方公共団体の要望を踏まえ、住民の平穏な生活を守るため、関係機関と連携して教団の実態把握に努めるとともに、パトロール等の警戒警備活動を実施している。また、オウム真理教対策関係省庁連絡会議に参画し、関係省庁との連携を強化している。

 6 オウム真理教の動向と対策

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