第5章 安全かつ快適な交通の確保 

3 運転者教育と運転者施策

(1) 運転者教育
 [1] 体系
 運転者教育の機会は、運転免許を受ける過程及び運転免許を受けた後における各段階に体系的に設けられており、その流れは次のとおりである。

 
図5-2 運転者教育の体系

図5-2 運転者教育の体系

 [2] 運転免許を受けようとする者に対する教育の充実
 運転免許を受けようとする者は、都道府県公安委員会の行う運転免許試験を受けなければならないが、指定自動車教習所(注1)の卒業者は、そのうち技能試験が免除される。指定自動車教習所は、平成16年末現在、全国で1,459か所あり、その卒業者で16年中に運転免許試験に合格した者は約187万人と、合格者全体の93.7%を占めている。警察では、教習指導員の資質の向上を図るなどして、指定自動車教習所における教習の充実に努めている。
 また、運転免許を受けようとする者は、免許の種類に応じて、安全運転に関する知識や技能等を習得するための講習(取得時講習)を受講することが義務付けられている。ただし、指定自動車教習所又は特定届出自動車教習所(注2)を卒業した者は、この講習と同内容の教育を受けているため、受講する必要がない。


注1:職員、施設及び運営方法が一定の基準に適合するものとして都道府県公安委員会が指定した自動車教習所
 2:届出自動車教習所のうち、職員、施設、教習方法等が一定の基準に適合するものとして都道府県公安委員会が指定した教習課程を行う自動車教習所

 [3] 運転免許取得後の教育の充実
 更新時講習は、運転免許証の更新の機会をとらえて定期的に講習を行うことにより、安全な運転に必要な知識を補い、運転者の安全意識を高めることを目的としており、16年中は1,732万9,742人が受講した。受講対象者を優良運転者、一般運転者、違反運転者及び初回更新者に区分して実施しているほか、高齢者学級、若者学級、二輪車学級といった特別学級を編成するなど、教育の内容を受講者の特性に応じたものとし、講習の効果が高まるように努めている。
 また、こうした法定講習のほか、自動車教習所では、いわゆるペーパードライバーを始め、運転免許を既に取得した者を対象とした交通安全教育を行っている。その水準向上と普及を図るため、一定の水準に適合する場合には都道府県公安委員会の認定を受けることができる制度が設けられている。

 
(2) 運転者施策
 [1] 運転者の危険性に応じた行政処分や教育の実施
 警察では、道路交通法違反を繰り返し犯す運転者や重大な交通事故を起こす運転者を、道路交通の場から早期に排除するため、行政処分の厳正かつ迅速な実施に努めている。また、道路交通法等に違反する行為をし、累積点数等が一定の基準に該当する者や行政処分を受けた者に対しては、危険性の改善を図るための教育を行っている。

 
表5-2 運転免許の行政処分件数の推移(平成12~16年)

表5-2 運転免許の行政処分件数の推移(平成12~16年)
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表5-3 危険運転者の改善のための教育の状況(平成16年)

表5-3 危険運転者の改善のための教育の状況(平成16年)
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 [2] 運転免許手続の利便性の向上等
  ア 運転免許手続の簡素合理化
 警察では、免許更新に係る国民の負担を軽減するため、更新免許証の即日交付、日曜日の申請受付、警察署への更新窓口の設置、申請書の写真添付の省略等の施策を推進している。平成16年末現在、全国に即日交付窓口を246か所設置しており、16年中の即日交付件数は全体の約70%であった。また、優良運転者は、住所地を管轄する公安委員会以外の公安委員会を経由して更新申請をすることができ、16年中の経由申請件数は5,309件であった。

  イ 障害者の利便性の向上
 警察では、障害者がその障害に応じた特別の装備を施した車両を持ち込んで運転免許試験を受けることを認めており、指定自動車教習所に対しても、教習実施に際し同様の措置を講じるよう指導している。また、障害者や一定の病気にかかっている者が安全に運転できるかを個別に判断するため、専門知識の豊富な職員を配置し、運転適性相談活動の充実を図っている。さらに、試験場施設の整備・改善、字幕入り講習用ビデオの活用、漢字に振り仮名を付けた試験問題による学科試験の実施等を推進している。

  ウ 国際化への対応
 16年中の国外運転免許証の交付件数は35万6,187件であった。警察では、その申請・交付窓口の拡大、電子計算機処理による発行事務の迅速化等により、利便性を向上させている。
 一方、外国の行政庁の運転免許を有する者については、一定の条件の下に運転免許試験の一部を免除できることとされており、この制度による16年中の運転免許証の交付件数は4万4,897件、対象となった外国行政庁は148であった。警察では、真正でない外国の運転免許証を使用して日本の運転免許を取得しようとする事案も発生していることから、慎重な審査を行い、不正取得の防止に努めている。

  エ 運転免許証のICカード化
 13年の道路交通法改正により、運転免許証の記載事項の一部を電磁的方法により記録できることとされたことを受け、警察庁は、仕様を定めるなど、ICカード方式の運転免許証の発行開始に向けた準備を進めている。ICカード化により、偽変造がされにくくなるほか、券面から本籍地の記載が削除され、プライバシーが保護されること、運転免許証の国際標準規格に対応できること、交通反則切符の作成や運転免許証更新手続の時間が短縮され、国民の利便性と業務の効率の双方が向上することなどの利点がある。

 3 運転者教育と運転者施策

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