第4章 組織犯罪対策 

3 国際組織犯罪対策

(1) 来日外国人犯罪対策
 警察では、来日外国人犯罪の摘発を強力に推進するとともに、不法滞在を助長する犯罪の取締りやその実態把握を徹底しているほか、不法滞在・不法就労を防止するため、外国人の雇用にかかわる事業者等に対する指導啓発活動を推進している。
 また、入国管理局と合同で不法滞在者の摘発を実施したり、盗難自動車の不正輸出を防止するため税関と情報交換を行ったりするなど、国内関係機関との連携を強化している。

 
入国管理局との合同摘発(警視庁)
入国管理局との合同摘発(警視庁)

事例1
 埼玉県浦和東警察署では、平成16年6月、管内の18事業所とともに浦和東警察署不法就労防止連絡協議会を設置した。同協議会では、不法滞在、不法就労及び悪質な就労あっせん等を排除するための広報啓発活動、外国人に対する緊急通報要領や交通事故防止に関する指導等を行っている。

事例2
 16年2月、警察庁、警視庁、法務省入国管理局及び東京入国管理局は、合法滞在を装う者やこれらを組織的に仲介、幇助する者の取締りを徹底するため、調査・捜査協力プロジェクト調整会議を設置し、情報交換や効率的な調査及び捜査を行うための任務分担の在り方等を検討している。

 
(2) 新しいシステムの導入
 平成17年1月、警察庁、法務省及び財務省は共同で、航空会社の協力を得て、航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と関係省庁が保有する要注意人物等に係る情報とを入国前に照合することのできる「事前旅客情報システム(APIS)」を導入した。これにより、入国管理の厳正化と国際犯罪等に係る捜査・調査の効率化を図っている。
 また、偽変造旅券の使用や他人へのなりすましによる不法入国等を防ぐためには、顔情報、虹彩、指紋等のバイオメトリクス(生体情報)を活用することが有効であることから、16年6月、犯罪対策閣僚会議の幹事会の下にワーキングチームが設置され、バイオメトリクスを活用した出入国管理に関する検討を進めている。

 
(3) 外国の捜査機関等との協力
 警察庁では、国際犯罪捜査に関する情報交換や犯人の逮捕と引渡しを円滑に行うため、外国捜査機関や国際刑事警察機構(ICPO)との協力関係の強化を図っている。
 特に、来日外国人犯罪の検挙者の多くが中国人であることから、中国との協力関係を強化している。両国は、共同で国際犯罪を摘発しているほか、国外犯の処罰規定を積極的に活用し、日本国内で犯罪を犯した後に帰国した中国人被疑者の捜査を協力して行っている。
 また、平成16年11月には、東京で第1回東アジア地域組織犯罪対策会議が開催され、国際化する組織犯罪に対処するため、韓国、フィリピン、ロシア等の治安機関と組織犯罪に関する情報交換を行った。17年6月には、グレンイーグルズ・サミットの議長国である英国の主催により、英国のシェフィールドでG8司法・内務閣僚級会合が開催され、組織犯罪に関する様々なデータベースを各国が相互に活用する方策を検討することが合意された。

 
(4) 国外逃亡被疑者等の追跡
 日本国内で犯罪を行い国外に逃亡している者及びそのおそれのある者(以下「国外逃亡被疑者等」という。)の数は年々増加し、平成16年末現在で743人となっている。このうち外国人は590人で、79.4%を占める。国籍・地域別にみると、中国人が283人(38.1%)、次いで日本人が153人(20.6%)である。推定される逃亡先は、中国が138人(18.6%)と最も多く、次いでブラジルが47人(6.3%)、フィリピンが36人(4.8%)、韓国が34人(4.6%)となっている。また、出国年月日が判明している国外逃亡被疑者212人のうち、犯行当日に出国した者が8人、犯行翌日に出国した者が19人であるなど、犯行から10日以内のうちに87人が出国している。

 
図4-22 国外逃亡被疑者等の推移(平成7~16年)

図4-22 国外逃亡被疑者等の推移(平成7~16年)
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 警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、入国管理局に手配するなどして出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関等の協力を得ながら所在の確認を行うなどの対策を講じ、所在が確認されれば犯罪人引渡しに関する条約等に基づく引渡請求を行っている。日本人の被疑者であれば、逃亡先国で退去強制処分に付された場合に、公海上の航空機で身柄を引き取るなどして検挙している。
 16年中に検挙した国外逃亡被疑者は34人で、このうち外国人は10人であった。また、国内の空港で国外逃亡寸前に検挙した被疑者は17人で、このうち外国人は13人であった。

事例
 16年4月、東京都江戸川区の江戸川に浮遊していたかばんから、飲食店を経営する韓国人女性の遺体が発見された。被疑者3人のうち1人は韓国に逃亡していたが、犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約に基づく手続を経て、同年11月、身柄の引渡しを受け、殺人罪等で逮捕した(警視庁)。

 第4節 来日外国人犯罪対策

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