第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

2 総合的な少年非行防止対策

(1) 少年事件・非行集団対策
 [1] 少年事件の捜査体制の確立
 警察では、担当警察官の増強を進めるとともに、少年事件特別捜査隊等を編成し、捜査員を集中投入するなどして、少年事件の捜査体制を充実・強化している。また、全都道府県の警察本部に少年事件捜査指導官を設置し、少年の特性や少年審判の特質を踏まえた少年事件捜査が行われるよう、警察署等の指導を行っている。

 
暴走族の取締り
暴走族の取締り

 [2] 非行集団対策の推進
 警察では、暴走族を始めとする非行集団やその背後で活動する暴力団を取り締まり、非行集団の解体に努めている。また、学校その他関係機関やボランティア等地域住民と連携し、中学生・高校生を対象とした暴走族加入防止教室を開催するなどして、非行集団への加入阻止を図るとともに、少年や保護者に働き掛けて、非行集団からの離脱を促している。さらに、非行集団から離脱した少年に対しては、運動、社会奉仕活動等地域の実情に即した居場所を提供することで立ち直りを支援し、非行集団へ再び加入することを阻止している。

事例
 愛知県警察では、暴走族の元構成員である少年らに対して、ボランティア活動への参加を促した結果、平成16年3月、暴走族の元構成員等によるボランティア団体が結成された。この団体は、地域の清掃や病院での高齢者の介助等のボランティア活動に積極的に参加している。

 
(2) 少年サポートセンターの活動の活性化
 警察では、全都道府県警察に少年サポートセンターを設置し、そこに配置された少年相談、継続補導、被害少年の支援等の専門的・継続的な活動を行う少年補導職員(注1)や、複雑な少年相談事案の処理や少年相談担当職員への指導、助言等を行う少年相談専門職員(注2)を中心に、総合的な非行防止対策を行っている。平成17年4月1日現在、全国190か所に少年サポートセンターが設置され、そのうち66か所は、少年や保護者が気軽に立ち寄ることができるよう、警察施設以外の施設に設置している。


注1:平成17年4月1日現在、全国に約1,000人の少年補導職員が配置されている。
 2:平成17年4月1日現在、全国に約100人の少年相談専門職員が配置されている。

 [1] 少年相談活動
 少年サポートセンターでは、少年や保護者等からの悩みや困りごとの相談に応じており、心理学や教育学の専門知識を有する職員や少年非行問題を取り扱った経験の豊富な職員が、親身になって指導・助言を行っている。また、気軽に相談できるよう、フリーダイヤルの電話や電子メールにより相談を受理することができるようにしている。

 
図3-32 警察が受理した少年相談の件数(平成16年)

図3-32 警察が受理した少年相談の件数(平成16年)
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 [2] 街頭補導活動
 少年非行・犯罪を抑止し、健全な育成を図るためには、飲酒、喫煙、深夜はいかい等の犯罪や非行に至らない不良行為の段階で適切に対処することが必要である。警察では、少年のい集する繁華街や学校周辺、通学路、公園等において、学校その他関係機関やボランティア等地域住民と共同で街頭補導活動を実施している。

 [3] 継続補導・継続的支援
 少年相談や街頭補導活動を通じてかかわった少年に対し、家庭、学校、交友関係その他の環境が改善されるまで、本人や保護者等の申出に応じて、少年サポートセンターでの面接、家庭訪問、社会奉仕活動や運動への参加を通して、立ち直りに向けた指導・助言を繰り返し行っている。
 また、いじめや性犯罪の被害を受けた少年に対しては、心の傷がいやされるまで、継続的に悩みを聞いたり、カウンセリングを行ったりしている。

 [4] 情報発信活動
 警察では、学校で非行防止教室等を開催するとともに、地域住民や少年の保護者が参加する少年非行問題に関する座談会を開催するなどして、少年非行・犯罪の実態や少年警察活動についての理解を促している。16年度中は、非行防止教室等を全国1万9,893校で延べ2万2,211回開催し、延べ約482万人の児童・生徒が参加した。

コラム2 非行防止教室等プログラム事例集
 17年1月、警察庁と文部科学省は、非行防止教室の開催に当たっての注意点や、他の取組みの参考となる開催事例を紹介する「非行防止教室等プログラム事例集」を作成し、各都道府県の警察本部、教育委員会等に配布するとともに、文部科学省のウェブサイトで公開した。

 [5] 関係機関・団体との連携
 少年サポートセンターでは、平素から学校、児童相談所その他の関係機関・団体と緊密に意見交換等を行い、少年や家庭等に対する支援の充実強化に努めている。

事例
 島根県警察では、16年度、島根県が推進する「地域社会で子どもたちが健やかに育つ環境づくり」の一環として、少年サポートセンター分室を併設した「子ども支援センター」を県内4市に設置し、県教育委員会や県健康福祉部と協力して、少年の就労支援、カウンセリング等を行っている。

 
(3) 学校その他関係機関との連携確保
 [1] 少年サポートチーム
 少年の問題行動が多様化、深刻化し、その背景や要因も複雑化する中、個々の少年の問題状況に応じた的確な対応を行うため、学校、警察、児童相談所の担当者等から成る少年サポートチームを編成し、それぞれの専門分野に応じた役割分担の下、少年への指導・助言を行っている。

 [2] 学校と警察との連絡
 教育委員会等と警察との間で締結した協定等に基づき、非行少年等問題を有する児童生徒に関する情報を学校と警察が相互に通知する「学校・警察連絡制度」が、平成16年度末現在、32都道県で運用されている。また、警察署の管轄区域や市区町村の区域を単位に、全都道府県で約2,700の学校警察連絡協議会が設けられている。

 [3] スクールサポーター
 スクールサポーター制度とは、学校からの要請により、警察官を退職した者等を学校へ一定期間継続して派遣し、学校における少年の問題行動等への対応や巡回活動、相談活動等を行うものである。16年度末現在、14都府県で導入されている。

事例
 16年5月、山口県警察と県内7市の教育委員会は、協定を結び、警察官や教員を退職した者による「少年安全サポーター(スクールサポーター)」制度を導入した。採用された少年安全サポーターは、不審者の侵入を想定した訓練の指導、学校周辺のパトロール、街頭補導活動等を、学校や警察と連携して行っている。

 
(4) ボランティアとの連携
 警察では、平成17年4月1日現在、全国で少年補導員(注1)約5万2,000人、少年警察協助員(注2)約700人、少年指導委員(注3)約6,300人のボランティアを委嘱しており、協力して街頭補導活動その他少年の健全育成のための活動を推進している。また、少年と年齢が近い者にボランティアを委嘱したり、学校ごとに担当者を決めたりするなどして、活動の活性化に努めている。


注1:街頭補導活動、環境浄化活動を始めとする幅広い非行防止活動に従事している。
 2:非行集団に所属する少年を集団から離脱させ、非行を防止するための指導相談に従事している。
 3:風俗適正化法に基づき、都道府県公安委員会から委嘱を受け、少年を有害な風俗環境の影響から守るための少年補導活動や風俗営業者等への協力要請活動に従事している。

 
ボランティアによる街頭補導活動
ボランティアによる街頭補導活動

 
(5) 少年の薬物乱用防止対策
 少年が薬物の危険性、有害性を正しく認識することができるよう、警察職員を学校に派遣し、薬物乱用防止教室を開催している。また、都道府県警察では、大型スクリーン等の視覚的効果を有する資器材を登載した薬物乱用防止広報車を配備し、街頭における広報啓発活動等に活用している。

 第4節 少年の非行防止と健全育成

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