第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

3 広域捜査力の強化

(1) 広域捜査隊の設置運用
 通信手段や交通手段の発達等を背景に、多くの犯罪捜査では、複数の都道府県にまたがって活動する必要が生じている。また、犯行後に素早く他の都道府県に逃亡する例や、同一犯人が広域にわたって連続的に犯罪を敢行する例も目立っている。我が国の警察組織は都道府県を単位としていることから、こうした事象に的確に対応するためには、都道府県警察が相互に緊密に連携して捜査を行うことが重要となる。
 このため、都府県境をまたがって連続的に市街地が形成されている区域等において、事件発生時の初動措置を迅速かつ的確なものとするため、都府県警察の単位を越えて広域的に捜査やその訓練を行う広域捜査隊の編成が進められている。平成16年7月に、新たに警視庁と千葉県警察との間で協定が締結され、協定締結地域は全国で12地域となった。

 
広域捜査隊
広域捜査隊

 
広域捜査隊の訓練
広域捜査隊の訓練

事例
 16年10月、茨城県で殺人事件が発生し、被害者の所有車両が所在不明となっていたところ、事件発生の翌日、茨城県と栃木県の県境付近で、被害者の所有車両が走行していることが判明した。そこで、茨城県警察と栃木県警察の警察官により編成された北関東広域捜査隊が検索した結果、栃木県内の駐車場で被害者の所有車両を発見し、さらにその付近で運転手の男(31)を発見し、殺人罪及び死体遺棄罪で逮捕した。

 
(2) 専門捜査員制度の運用
 専門捜査員制度とは、航空機事故や列車事故のように、捜査に特別の専門的知識等を必要とする一方で、発生がまれであるなどの事情により、専門的知識等を有する警察職員が少ない事案に対処するため、あらかじめ特別の専門的知識等を有する職員を専門捜査員として登録し、他の都道府県で発生した事件であっても活用することができるようにする制度である。
 平成16年4月には、専門捜査員の派遣をより円滑に行うことができるようにするため、犯罪捜査共助規則を改正し、都道府県警察は、航空機事故や列車事故等が発生した場合は、その旨を警察庁の内部部局及び管区警察局に報告しなければならないこととし、また、警察庁長官は、必要があると認めるときは、捜査を行う都道府県警察に専門捜査員の派遣の要求をすべきことを指示することとした。

 
(3) 合同捜査、共同捜査の推進
 警察では、複数の都道府県の地域に関係のある重要な犯罪で広域にわたるものが発生した場合には、指揮系統を一元化し、関係都道府県警察が一体となって捜査を行う「合同捜査」や、指揮系統の一元化までは行わないものの、捜査事項の分担その他捜査方針の調整を行う「共同捜査」を積極的に推進している。

 
捜査本部での検討
捜査本部での検討

事例1
 平成12年8月から16年3月にかけて、ピッキングやサムターン回し等の手口により中高層マンションへ侵入し、金品を窃取する事案が全国で発生した。関係警察による合同捜査・共同捜査を進めた結果、16年9月までに中国人の男(27)ら24人を窃盗罪等で逮捕した。被疑者らは、福建省からの密入国者を中心に窃盗団を組織して525件の窃盗事件を敢行しており、その被害総額は3億4,595万円相当に上った(京都、大阪、和歌山、兵庫、滋賀、奈良、三重、警視庁)。

事例2
 16年1月から6月にかけて、無職の男(25)は、長野県ほか3県にあるコンビニエンスストア15店舗に侵入した上、店員に刃物を突き付けて脅迫し、現金合計約250万円等を強取した。関係警察による共同捜査を進めた結果、16年6月、男ら4人を強盗罪で逮捕した(長野、群馬、埼玉、栃木)。

 
(4) 警察庁指定事件制度
 警察庁指定事件とは、複数の管区警察局の管轄地域で発生している社会的影響の大きい凶悪又は特異な事件で、複数の地域にまたがり組織的に捜査を行う必要があるものとして警察庁が指定した事件をいう。現在までに、23事件が指定されている。
 警察庁指定事件について、警察庁は、都道府県警察と捜査会議を開催し、捜査方針を協議するほか、関係都道府県警察以外の都道府県警察に対して捜査共助を指示したり、関係情報を集約・分析したりするなど、事件の解決に向けて捜査活動を支援している。

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤強化

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