第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

2 捜査体制の整備

(1) 組織・人員の効率的な運用と捜査員の増強
 犯罪情勢の悪化に伴い、捜査すべき事件の数は増加し、その内容も複雑化・高度化している。これに対し、警察では、業務の合理化を徹底して推進しているほか、刑事部門と他の部門が連携した横断的なプロジェクトチームを設けたり、機動捜査隊等警察本部の執行隊を情勢に応じて集中配置したりするなど、限られた組織・人員の効率的な運用に努めている。
 他方、こうした取組みにもかかわらず、多発する事件に捜査と検挙が追い付かないのが現状で、それが検挙率の低迷となって現れていることから、効率的運用や合理化を進めてもなお不足する捜査員の増強を行い、捜査体制を強化している。

 
(2) 初動捜査体制の整備
 事件発生時には、迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、又は現場の証拠物や目撃者の証言等を確保することが重要である。
 このため、自動車の機動力を生かした捜査活動を行い、事件発生時には現場や関係箇所に急行して犯人確保等を行う機動捜査隊や、現場鑑識活動が特に重視される事件について、高度な鑑識活動を行うため現場に臨場する機動鑑識隊(班)を編成し、24時間体制で事件の発生に備えている。

 
出動する機動捜査隊
出動する機動捜査隊

事例
 平成16年12月、兵庫県明石市の路上で強盗事件が発生したとの110番通報を受け、機動捜査隊員が現場に急行し付近を検索したところ、少年(17)を発見し、職務質問等所要の捜査を実施したところ被疑者と判明したため、強盗致傷罪で逮捕した。この事件では、迅速・的確な初動捜査により、110番通報受理後、約30分で被疑者を逮捕することができた(兵庫)。

 
(3) 鑑識活動の強化・鑑定技術の高度化
 犯罪の現場等から採取した資料は、犯人の絞り込みや特定のために活用され、公判でも、犯罪の立証上極めて重要な役割を担う。
 このため、警察では、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等の設置・運用により、現場鑑識活動を強化するとともに、最新の知見を生かした関連技術の研究開発や資機材の開発・整備を推進している。

 
出動する機動鑑識隊
出動する機動鑑識隊

 
現場鑑識活動
現場鑑識活動

 
(4) 捜査員の育成
 「捜査は人なり」と言われ、捜査力の充実強化には、優れた人材を登用し、その知識及び能力を伸ばすことが不可欠である。このため、都道府県警察では、刑事部門の捜査員として任用する者の選考に当たっては、適性を的確に見極めるとともに、任用予定者に対して所定の教育訓練を行っている。警察学校で教育した知識、理論及び技能は、経験豊富な捜査員と共に行う実務を通じて、実践的に体得させるよう努めている。
 また、犯罪捜査には、特定分野に関する高度な専門知識、専門技能が必要とされることが多く、その傾向は、経済社会の進歩に伴い強くなっているため、警察庁の附属機関である警察大学校等において、特殊事件捜査、科学捜査、財務捜査等に従事する者に専門的な教育訓練を施している。

 
(5) 国民との協力による捜査
 犯人を検挙し、事件を解決するためには、犯罪捜査に対する国民の理解と協力が不可欠である。しかし、犯罪捜査に対する国民の意識は変化し、その理解と協力を得ることは、これまで以上に困難となりつつある。
 警察では、様々な媒体を活用して、事件発生時の速やかな通報、聞き込み捜査に対する協力、事件に関する情報の提供等を広く国民に呼び掛けている。また、必要に応じ、被疑者の発見、検挙や犯罪の再発防止のため、被疑者の氏名等を広く一般に公表して捜査を行う、「公開捜査」を行っている。

事例
 警視庁府中警察署の特別捜査本部では、平成17年2月に発生した殺人事件の被疑者が所持していたと思われる腕時計の写真と特徴を記した広告を、現場近くの駅を通過する電車の車内に掲示し(いわゆる中づり広告)、情報提供を求めた。同年6月現在、捜査中である。

 
事件に関する情報の提供を求める広告
事件に関する情報の提供を求める広告

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤強化

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