第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

11 政治的・構造的不正事案

 国会議員が公設秘書の給与を詐取した事案が明らかになる一方で、地方公共団体の長や議員らによる贈収賄事件、偽計入札妨害事件、買収や公務員の地位利用等の公職選挙法違反の摘発が続くなど、政治的・構造的な不正が顕在化している。
 警察では、こうした事案の捜査体制を整備するとともに、専門的知識及び技能を有する捜査員の育成強化に努めている。また、不正の実態に応じて様々な刑罰法令を適用するなどして、事案の解明を進めている。

 
図3-14 政治的・構造的不正事案の検挙状況(平成7~16年)

図3-14 政治的・構造的不正事案の検挙状況(平成7~16年)
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(1) 贈収賄事件
事例1
 元社会保険庁石川社会保険事務局課長(48)は、国民年金保険料の納付を促すためのテレビコマーシャルの制作等の業務に関し、有利な取り計らいを受けたことに対する謝礼であり、また、今後も同様の取り計らいをしてもらうための見返りで供与されるものであることを知りながら、平成15年2月と4月の2回にわたり、広告代理店代表取締役(51)から合計160万円を収受した。16年6月、収賄罪で逮捕した(警視庁、石川)。

事例2
 前北海道石狩支庁長(58)は、指定介護老人福祉施設等に対する指導監督に関し、有利な取り計らいを受けたことに対する謝礼として供与されるものであることを知りながら、14年1月ころから15年5月ころにかけて、数十回にわたり、社会福祉法人理事長(56)から合計170万円を収受した。16年11月、収賄罪で逮捕した(北海道)。

 
(2) 談合・競売入札妨害事件
事例
 城陽市議会議員(73)は、平成15年7月ころ、同市発注の公共工事の入札に際し、入札予定価格を推認し得る立場にあった同市担当部長から入手した設計金額に関する情報を土木建築会社代表取締役に内報し、入札書比較価格に近接する価格で落札させ、偽計を用いて公の入札の公正を害した。16年2月、競売入札妨害(偽計入札妨害)罪で逮捕した(京都)。

 
(3) 選挙違反
 第20回参議院議員通常選挙(平成16年7月11日施行)における選挙期日後90日現在(16年10月9日現在)の公職選挙法違反の検挙件数は407件、検挙人員は399人(うち逮捕者140人)と、前回の第19回参議院議員通常選挙期日後90日の時点に比べ、検挙件数は66件(14.0%)、検挙人員は470人(54.1%)減少した。

事例1
 木津町長(72)は、16年3月ころから6月中旬ころにかけて、町役場の職員十数人に対し、その職務上の地位を利用して、自己の支持する候補者を当選させる目的で投票や投票の取りまとめ等を依頼した。同年7月、公職選挙法違反(公務員等の地位利用)で逮捕した(京都)。

事例2
 特別養護老人ホーム園長(71)らは、16年7月上旬ころ、選挙管理委員会が不在者投票を行う施設として指定した同特別養護老人ホームで、入所者の有権者の投票用紙を使用し、ほしいままに候補者の氏名等を記入するなどして投票を偽造した。同月、公職選挙法違反(投票偽造)で逮捕した(奈良)。

 
(4) 公務員犯罪
事例
 元衆議院議員(62)は、同人の妻である公設第一秘書らと共謀の上、自己の公設第二秘書として採用する意思もなく、採用した事実もない者について、衆議院事務局に対し、公設第二秘書に採用した旨の虚偽の申請を行い、平成12年7月ころから15年4月ころにかけて、43回にわたり、衆議院から同人の給与の名目で合計約1,700万円を詐取した。16年3月、詐欺罪で逮捕した(愛知)。

 
(5) 特定の寄附の禁止違反事件
事例
 松浦市議会議員(71)は、平成15年4月ころ、市議会議員選挙に関し、同市と請負契約関係にある建設会社から数十万円の寄附を受けた。16年8月、公職選挙法違反(特定の寄附の禁止)で逮捕した(長崎)。

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

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