第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

7 振り込め詐欺・恐喝

 平成16年中の振り込め詐欺(いわゆるオレオレ詐欺、架空請求詐欺及び融資保証金詐欺をいう。)及び振り込め恐喝(振り込め詐欺と同様の手口による恐喝をいう。)の認知件数は2万5,667件(うち未遂が5,473件)、被害総額は約283億8,000万円であった。
 警察庁では、ウェブサイトやポスター、パンフレット等で犯行手口や被害実態、被害に遭わないための注意事項を紹介するなど、被害防止のための広報啓発活動に取り組んでいる。
 また、各都道府県警察では、専従捜査員を置くなど捜査体制を強化しており、複数の都道府県をまたがる事案については、警察庁の指導・調整の下、合同捜査や共同捜査を推進している。16年中の検挙件数は1,305件、検挙人員は548人であった。

(1) オレオレ詐欺・恐喝
 オレオレ詐欺・恐喝(注)とは、親族を装うなどして電話をかけ、交通事故の示談金等様々な名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した被害者に、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口により詐欺又は恐喝を行うものである。


注:電話口で突然、「ばあちゃん、オレ、オレ、助けてくれ。金が必要なんだ」などと申し立てる手口から、一般に「オレオレ詐欺」と呼ばれるようになった。

 平成15年5月以降、その発生が目立ってきており、16年中の認知件数は1万4,874件(前年比8,239件増)、被害総額は約191億3,000万円(前年比約147億3,000万円増)であった。また、検挙件数は954件(前年比768件(412.9%)増)、検挙人員は305人(前年比227人(291.0%)増)であった。
 このうちオレオレ詐欺の名目は、交通事故の示談金が8,832件と最も多く、次いで消費者金融等の借金返済が3,430件であった。また、被害者の77%を女性が占め、中でも40歳代、50歳代の女性の割合が高い。

事例
 15年7月ころから12月ころにかけて、無職の男(22)ら10人は、共謀して、電話連絡、口座開設、現金引き出し等の役割を分担した上、複数の被害者に電話をかけ、孫になりすまし、「先月、通信販売の代金を払い損ない、48万円を1回で払わなければならなくなった。立て替えてくれなければサラ金で借りるしかない」などと嘘を言い、電話の相手が孫本人であり、緊急に金の融通を依頼してきたものと誤信させて、現金を銀行口座に振り込ませた。
 また、15年4月ころから16年2月ころにかけて、同人らは、第三者に譲渡する目的で約300の預貯金口座を開設し、インターネット上で1口座当たり数万円で約200口座を売却していた。16年4月までに、詐欺罪で逮捕した(長崎、京都、警視庁)。

 
(2) 架空請求詐欺・恐喝
 架空請求詐欺・恐喝とは、架空の事実を口実に金品を請求する文書を送付して現金を指定した預貯金口座に振り込ませるなどの手口により、詐欺又は恐喝を行うものである。
 平成16年中の認知件数は5,101件(うち未遂が90件)、被害総額は約54億円、検挙件数は294件、検挙人員は207人であった。名目は、インターネットの有料サイトの料金回収が2,646件で最も多く、次いで消費者金融等の借金返済や債権の回収が1,966件であった。両者で認知件数全体の9割以上を占める。被害者は、20歳代以下の男性の割合が24%と最も高い。

事例
 16年1月ころ、無職の男(26)ら10人は、複数の被害者に電話をかけ、有料出会い系サイトの架空の料金回収業者になりすまし、「あなたが出会い系サイトを使った記録が残っている。うちの会社が債権回収の委託を受けたサイトの料金と延滞料、合わせて37万8,500円を振り込んでください。払ってもらえなければ裁判をします。債権回収にあなたの家へ行きます」などと嘘を言い、現金を預貯金口座に振り込ませてだまし取った。同年7月までに、詐欺罪で逮捕した。
 また、この架空請求詐欺の被疑者らは、犯行に使用した預貯金通帳等をインターネットを通じて購入していた。そこで同年2月までに、預貯金口座を不正に開設し、当該被疑者らに預貯金通帳等を販売した無職の男(32)ら5人を詐欺罪で逮捕した(埼玉、奈良、宮崎)。

 
(3) 融資保証金詐欺
 融資保証金詐欺とは、融資を受けるための保証金の名目で、現金を指定した預貯金口座に振り込ませるなどの手口による詐欺事案をいい、平成16年中の認知件数は5,692件(うち未遂は24件)、被害総額は約38億4,000万円、検挙件数は57件、検挙人員は36人であった。

事例
 15年6月ころ、金融業者(27)ら2人は、共謀して、融資を申し込んだ被害者に対し、「融資を受けるのに信用を得る必要があるので、消費者金融会社の無人機でカードを作り、利用限度額いっぱいのお金を借りてください。確認のため、借りた現金と使用したカードを全部こちらに預けてください」などと嘘を言い、被害者から現金と消費者金融カードをだまし取った。16年1月、詐欺罪で逮捕した(栃木)。

コラム1 警察官をかたる手口
 振り込め詐欺・恐喝の手口として、警察官をかたるものが増加している。例えば、「A警察署交通課の者だが、息子さんが車で人をひいてしまい、死亡させてしまった」などと話した後、弁護士、保険会社の社員をかたる人物を登場させ、「このままでは業務上過失致死罪で勾留される。釈放するには示談金が必要である」などと言って現金を振り込ませる手口である。警察では、警察庁のウェブサイトで電話のやり取りを公開するなどして注意を呼び掛けているほか、相手が警察官をかたる際は、所属する警察署を聞き、いったん電話を切ってからかけ直すよう呼び掛けている。

コラム2 金融機関等本人確認法の改正と携帯電話不正利用防止法の制定
 近年、他人名義や架空名義の預貯金口座と携帯電話が振り込め詐欺等の犯罪に悪用されることが多いことから、16年12月、金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(金融機関等本人確認法)が改正され、預貯金通帳等の売買やその勧誘・誘引行為等が処罰されることとなり、題名が金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律に改められた。
 また、17年4月、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(携帯電話不正利用防止法)が成立し、同年5月に、犯罪に利用された携帯電話等について、警察署長から事業者に対し、契約者の確認を求めることができる規定や不正な貸与行為を処罰する規定が施行された。

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む