(3) 科学警察研究所の研究  科学警察研究所では、事件・事故の原因や証拠を科学的に解明するための研究を行っているほか、各種社会問題の背景を分析し、これに基づいて政策提言をするなどの活動を行っている。 研究例1 生物剤の検知及び鑑定法に関する研究 炭疽菌等の病原微生物(生物剤)を用いたバイオテロを取り扱う研究室が新設され、病原微生物の固有の表面抗原又は遺伝子を標的とした迅速で精度の高い新たな生物剤の検出法の研究開発に着手した。 研究例2 機械構造物における破壊事故解析の高度化に関する研究 大型トラックのタイヤ脱落事故、ジェットコ-スタ-の脱線事故等、機械構造部材の破壊に起因する大規模事故・事件の原因を究明するため、電子顕微鏡による破断面の観察、金属組織検査、硬さ試験、材料強度試験等の検査を行っているほか、より明確な判断材料を得るため、新たな破壊事故検査手法の確立に向けた研究開発を進めている。 研究例3 毒物・有害物質鑑定法の高度化に関する研究 中毒事件・事故や食品類への毒物混入事件の解決には、原因となった有毒物質を特定し、中毒との因果関係を明らかにしなければならず、各種分析機器を活用した迅速な分析法を研究・開発し、鑑定に役立てている。また、環境犯罪の捜査を支援するため、ダイオキシン等の有害な環境汚染物質の簡易、迅速な分析法の開発にも取り組んでいる。 研究例4 ポリグラフ検査の高度化に関する研究 ポリグラフ検査では、呼吸、皮膚電気反応及び脈波を測定・分析し、被疑者等の犯罪事実に関する認識の有無を調べている。その高度化のため、検査に利用できる自律神経系反応指標として、心臓血管系反応指標の一つである規準化脈波容積(NPV)に関する研究を行っている。NPVは、皮膚交感神経活動の変化を鋭敏に反映し、測定装置も小型で簡便に測定できることから、有効な指標となることが期待される。 研究例5 少年の凶悪・粗暴な非行の背景及び前兆に関する研究 近年、少年による凶悪・粗暴な犯罪が多発していることから、こうした事件の背景及び前兆について調査研究を行った。その結果、暴力的な非行を繰り返す少年の場合、粗暴傾向が小学生段階で発現していることが多く、初期対応の重要性が示唆された。また、単独で暴力的な非行を行う少年は、対人関係において孤立していることが多く、社会性をはぐくむ働きかけが重要な対応方策であることが示された。 研究例6 カーナビゲーション装置の利用実態と運転特性への影響に関する研究 カーナビゲーション装置は、最近、機能の高度化や製品の多様化が進んでいるが、運転者が複雑で華美な画面に気を取られるなどして交通事故につながることも懸念される。そこで、ドライビングシミュレータにより運転への影響を検証した。 実験に用いたカーナビゲーション装置の画面表示