第2節 治安回復に向けた地域社会との協働 1 犯罪による被害を防止するために  本項では、犯罪被害を防止するため地域住民や事業者等を対象に行っている情報提供、防犯相談、防犯教育等の取組みを紹介する。 (1) 犯罪情報や地域安全情報の効果的な提供  犯罪の防止に関する地域住民の意識を高め、また、地域住民が自主的に行う防犯活動がより効果的なものとなるよう、警察では、地域住民に向けて、警察の有する犯罪情報や地域安全情報を様々な媒体を用いて提供している。  提供する情報の内容については、地域ごとの犯罪の発生件数やその増減の状況を伝えるだけではなく、多発している犯罪の種類や犯行手口を分析し、特にどのようなことに気を付けなければならないかを分かりやすく示し、性犯罪、ひったくり、空き巣等から身を守り、又は財産を守るための方法の普及を図るなど、より具体的で有用なものとなるよう配意している。  情報提供の手段についても、巡回連絡で家庭や事業所を訪問するときや自治会の会合に参加するときに警察官が直接説明したり、ウェブサイトやミニ広報誌、新聞の折り込みチラシを活用したりするなど、少しでも多くの者に情報が届くような工夫をしている。また、犯罪の被害を受けやすい業種向けには、業界団体を通じることで、漏れなく情報が行き渡るように努めている。 事例1 埼玉県警察では、平成15年4月から、警察本部のホームページに「事件事故発生マップ」を掲載している。この地図には、ひったくり、路上強盗及び死者又は重傷者を伴う交通事故の情報が表示され、ウェブサイトの閲覧者が事件・事故の種別や発生時間帯を選択すると、過去3ヶ月の(交通死亡事故にあっては16年1月からの)発生状況が図示される。縮尺の調整も可能で、地図を拡大すれば、身近な地域の犯罪情勢をより詳細に知ることができる。 事件事故発生マップ(埼玉県警察ホームページより) 事例2 警視庁では、東京都安全・安心まちづくり条例に基づく犯罪情報の発信を行うため、16年度から、インターネットやGIS(地理情報システム)を活用した「犯罪情報発信システム」の運用を開始し、次のような取組みを進めている。 ○ 電子メールによる犯罪情報の発信  メールアドレスを登録した者に対し、  ・ 子どもへの声かけ事案やひったくり、空き巣等の発生状況に関する情報  ・ どの市区町村で犯罪が多発しているかを知らせる情報  ・ 地域住民や市区町村による防犯対策の取組状況に関する情報  ・ 防犯対策に資するイベントに関する情報  を電子メールで送信している。 ○ ホームページによる犯罪情報の発信  ホームページに犯罪の発生件数の多寡を色分けして表示した地図を掲載し、どの地区がどのくらい危険であるかを一目で読みとれるようにしている。閲覧者は、全刑法犯のほか、侵入盗、ひったくり等の罪種別に犯罪の発生状況を把握することができる。また、防犯対策の情報も提供しており、例えば空き巣については、犯行の手口やそれに対応した錠前、窓ガラス等の対策を紹介している。 ○ パソコンや携帯電話の使用に不慣れな者への情報発信の支援  警察署からの要請に応じて、管内の犯罪の発生状況を示した地図を警視庁本部が作成・送信し、それを警察署が地域住民の目にする回覧板や広報誌に掲載することなどにより、パソコンや携帯電話を使うことに慣れていない高齢者等にも犯罪情報が行き渡るようにしている。 犯罪情報マップ(警察庁ホームページより) 事例3 栃木県警察では、県内でコンビニエンスストアを対象とした強盗事件が多発していたことから、被害に遭った店舗の防犯診断を行い、事件の発生状況、犯人に関する情報、店舗が講ずべき防犯対策を「生活安全ニュース」に取りまとめた。15年3月から、これを県内のコンビニエンスストアに配布して、経営者や従業員の防犯対策に役立てている。 生活安全ニュース(栃木) 事例4 北海道函館西警察署では、函館西防犯協会の協力を得て、16年3月から、「函西セーフティメール・ネットワーク」と称する情報提供サービスを開始した。希望者は、適宜送付される最新の犯罪情報や防犯情報を記した電子メールを、パソコンや携帯電話で受信して手軽に見ることができる。 図1-31 函西セーフティメール・ネットワークの概要