第9章 公安委員会制度と警察活動のささえ 

(3) 適正な予算執行の確保

 〔1〕 不適正事案の判明
 最近、警察の予算執行をめぐり、正規の手続を経ず、予算を本来の目的以外の目的に執行するなどの不適正な事案が判明している。
 北海道警察では、2警察署で平成12年度まで捜査費の一部を職員の激励経費等に充てていたことが判明したほか(北海道に相当額を返還予定。16年6月、1警察署分について返還)、15年7月の北見方面本部に対する会計検査院の実地検査に際し、警備課で14年度の捜査費の関係書類として、実在しない店舗の名称を記載した領収書を添付していたことなどが判明した。
 また、静岡県警察では、警察本部の総務課で12年度まで旅費の一部を職員の激励経費等に充てていたことが判明した(16年6月、静岡県に相当額を返還。関係者を懲戒処分)。
 さらに、福岡県警察では、警察本部の銃器対策課で11年度まで捜査費の一部を職員の激励経費等に充てていたほか(16年7月、福岡県に相当額を返還)、警察本部の会計課が12年度まで銃器対策課を含む14所属に交付すべき捜査費の一定額を留保し、職員の激励経費等に充てていたことが判明した(福岡県に相当額を返還予定)。
 なお、北海道公安委員会と福岡県公安委員会は、近年の予算執行について特別調査を行うとともに、こうした事案の絶無を期するため、会計経理の手続、会計監査等の諸事項について監察を行い、その結果と改善方策を報告するよう、警察法の規定に基づく監察の指示を発した。そこで、北海道警察と福岡県警察では、16年末までに報告することを目途に所要の調査を行っている。

 〔2〕 国民の信頼回復に向けた取組み
 警察庁では、16年2月、長官官房長を委員長とする「予算執行検討委員会」を設置し、不適正事案の真相解明を図るとともに、会計経理の透明性の確保方策等を検討している。また、国家公安委員会は、16年4月、警察庁による都道府県警察に対する会計監査及び都道府県警察における内部監査の強化等を図るため、会計の監査に関する規則を制定し、会計監査が国家公安委員会及び都道府県公安委員会の管理の下に実施されることを明確にした。このほか、警察庁では、16年7月までに、次のような対策を講じている。

○ これまで、都道府県の監査委員による監査は主として書面により行われていたが、今後、捜査員に対する聞き取り調査の要請が増加することが予想されたため、特段の業務上の支障がない限り、これに応ずることとするよう指示した。
○ これまで、捜査費を受け取った協力者が、警察に協力した事実が明るみになることを恐れるなどして本人名義ではない領収書を作成したときは、やむを得ず受領していたが、16年度からは、これを受領せず、本人名義の領収書の作成を拒否された場合、捜査費を支払ったことを証明する書類を捜査員が作成し、幹部が確認することとするよう指示した。
○ 捜査費の経理の手続を捜査員が理解する一助とするため、分かりやすい解説資料を作成し、配布した。
○ 全国各地の警察で、予算が適正に執行されていることなどを確認するために必要とされる会計に関する文書を紛失し、又は誤って廃棄する事案が判明したことから、再発防止のため、これらの文書の管理について必要な事項を定め、これに則した管理を徹底するよう指示した。

 警察では、このような取組みを通じ、適正な予算執行の確保を図り、国民の信頼回復に努めている。

 11 適正な警察活動の確保

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