第7章 公安の維持 

2 国際テロに対する警察の取組み

(1) 未然防止対策の推進

 〔1〕 情報収集と捜査の徹底等
 テロ対策の要諦は、その未然防止にある。そのためには、とりわけ、幅広い情報収集が不可欠である。また、テロは極めて秘匿性の高い行為であるため、関連情報のほとんどは断片的であることから、情報の蓄積と総合的な分析が求められる。
 警察では、2001年(平成13年)9月の米国における同時多発テロ事件以降、テロ関連情報の収集・分析活動を徹底して行っている。16年4月には、警察庁警備局に外事情報部を設置するとともに、従前外事課に置かれていた国際テロ対策室を国際テロリズム対策課に発展的に改組し、外国治安情報機関等との連携を緊密化するなど、情報収集・分析機能の更なる強化に努めている。
 また、我が国も国際テロリストと無縁ではなく、過去に「アル・カーイダ」関係者が不法に出入国を繰り返していたことが確認されており、警察では徹底した捜査を行っている。

 〔2〕 水際対策の強化
 周囲を海に囲まれた我が国で、テロリストの入国を防ぐためには、国際空港・港湾で、出入国審査、輸出入貨物の検査等の水際対策を的確に推進することが極めて重要であるが、国際空港・港湾では、警察、税関、入国管理局、海上保安庁等の様々な機関が水際対策に携わっており、これらの機関の連携をより緊密なものとすることが課題であった。
 このため、政府は、関係省庁の局長級職員から成る「空港・港湾における水際対策幹事会」を設置し、水際対策の強化方策について検討を重ね、15年12月、現場における関係各機関の連携強化を図り、政府一体となった危機管理を実現するため、内閣官房に関係省庁の課長級職員による「空港・港湾水際危機管理チーム」を設置した。また、国際空港に「空港危機管理官」又は「空港危機管理担当官」を、国際港湾に「港湾危機管理官」又は「港湾危機管理担当官」を置くことのほか、既設の「空港保安委員会」をより積極的に活用するとともに、「港湾保安委員会」を新たに置くことが決定された。
 空港危機管理官及び空港危機管理担当官並びに一部の港湾危機管理担当官には、都道府県警察の警察官を充てることとされており、これらを中心に関係機関が緊密に連携を図りつつ、水際対策の強化に努めている。
 また、テロリスト等の入国を防ぐためには、顔情報、虹彩、指紋等のバイオメトリクス(生体情報)を活用することが有効であることから、16年6月、犯罪対策閣僚会議の幹事会の下にワーキングチームが設置され、バイオメトリクスを活用した出入国管理に関して関係省庁が連携し、その推進を図ることとしている。

 
図7-1 空港・港湾における水際対策・危機管理体制の強化

図7-1 空港・港湾における水際対策・危機管理体制の強化

 〔3〕 重要施設の警戒警備
 警察では、関連情報の収集・分析を行い、情勢に対応した警備計画を立案の上、組織の総合力を発揮して効果的かつ効率的な警戒警備を実施している。
 2001年(13年)9月の米国における同時多発テロ事件以降、厳しい国際テロ情勢を踏まえ、総理大臣官邸等の重要施設や、国内にある米国及びその支援国に関連する施設等の警戒警備を強化している。16年2月の陸上自衛隊本隊のイラク派遣に当たっては、国際テロ等をめぐる諸情勢を踏まえ、重要施設の警戒警備を更に強化するとともに、公共交通機関等多数の人が集まる場所やライフライン施設等の警戒も強化するなど、警戒警備の万全を図った。また、2004年(16年)3月のスペイン・マドリードにおける同時多発列車爆破テロ事件の発生に伴い、鉄道に対する警戒警備の強化を図るなど、情勢に応じた的確な警戒警備を実施している。

 
図7-2 効果的かつ効率的な警戒警備

図7-2 効果的かつ効率的な警戒警備

 
東京駅における警戒状況(東京)

東京駅における警戒状況(東京)

 2 国際テロに対する警察の取組み

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