第5章 組織犯罪対策の推進 

(4) 資金獲得犯罪の検挙状況

 〔1〕 伝統的資金獲得犯罪
 古くからある暴力団の資金獲得犯罪として、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及び公営競技関係4法違反(ノミ行為等)が挙げられる。平成15年中の暴力団構成員及び準構成員の全検挙人員のうち、これらの罪種に係る検挙人員が33.2%を占めている。

 
表5-3 伝統的資金獲得犯罪に係る暴力団構成員及び準構成員の検挙人員の推移(平成11~15年)

表5-3 伝統的資金獲得犯罪に係る暴力団構成員及び準構成員の検挙人員の推移(平成11~15年)
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事例1
五代目会津小鉄会傘下組織幹部(56)、山口組傘下組織幹部(54)らは、15年4月、滋賀県彦根市内のアパートにおいて、賭客を集め、いわゆる野球賭博を開張し、手数料名目に金銭を徴収するなどして利益を図った。15年5月、8人を賭博開張図利罪で検挙した(滋賀)。

 〔2〕 金融・不良債権関連事犯
 15年中の暴力団等に係る金融・不良債権関連事犯の検挙状況をみると、競売入札妨害事件、強制執行妨害事件等の債権回収過程におけるものが63件(82.9%)を占めている。

 
表5-4 暴力団等に係る金融・不良債権関連事犯検挙件数の推移(平成11~15年)

表5-4 暴力団等に係る金融・不良債権関連事犯検挙件数の推移(平成11~15年)
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事例2
政治活動標ぼうゴロ役員(51)らは、15年4月から5月にかけて、競落物件のマンション等のドアの錠を無断で取り替え、ドアに政治団体名を記載したステッカーを貼るなどして、正当な占有権限を有するかのように装い、落札者から立退料名目に合計約100万円をだまし取ろうとした。15年7月、詐欺未遂罪等で6人を検挙した(埼玉)。

 〔3〕 企業活動を利用した資金獲得犯罪
 暴力団は、自らが経営に関与する企業等を通じ、又は企業等と結託して、いわゆる表の経済社会へ進出し、一般の経済取引を装うなどして様々な犯罪を引き起こし、資金を獲得している。

事例3
山口組傘下組織関係企業役員(41)らは、愛知県刈谷市内の営業所でのたばこ販売について財務大臣の許可を受けていたところ、14年3月、営業所移転の許可を受けることなく別の市内で、たばこ約102万円分を販売した。15年2月、同役員ら2人をたばこ事業法違反で検挙した(愛知)。

 〔4〕 企業対象暴力事犯
 暴力団、総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロが、企業に対して違法な行為を行うことにより、不正な利益を得ている状況がうかがわれる。また、総会屋の検挙件数、検挙人員は7件、14人であり、依然として一部企業と総会屋との関係が続いている状況がうかがわれる。警察では、企業からの暴力団、総会屋等に係る各種相談に対応するとともに、企業対象暴力を常習とする総会屋、社会運動等標ぼうゴロ等の取締りを推進している。

 
表5-5 暴力団、総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロに係る企業対象暴力の検挙件数(平成12~15年)

表5-5 暴力団、総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロに係る企業対象暴力の検挙件数(平成12~15年)
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事例4
政治活動標ぼうゴロ代表(41)、山口組傘下組織幹部(51)らは、14年5月以降9月までの間、暴力団事務所等において、長崎市から公共工事を受注した建設会社の従業員や同市の職員に対し、工事の騒音に執ように因縁を付け、工事を停止させた。15年1月、6人を威力業務妨害罪で検挙した(長崎)。

 〔5〕 その他の資金獲得犯罪
 暴力団は、時代の変化に応じた様々な資金獲得活動を行っており、ヤミ金融に係る犯罪、廃棄物処理に係る犯罪、国際犯罪組織(注)等と連携した偽造通貨輸入事件や窃盗事件等の犯罪を敢行するなど、その活動を多様化させている。


注:本白書では、国際犯罪を行う多数人の集合体のことをいい、外国に本拠を置く犯罪組織や不法滞在外国人によって構成された外国人犯罪グループ等がこれに当たる。

事例5
山口組傘下組織幹部(62)らは、中国人犯罪グループ構成員と共謀し、14年12月及び15年1月、中国において偽造された500円硬貨を約3,200枚密輸入し、配下組員らに対し、同硬貨が偽造通貨であることを告げた上で交付した。15年5月、偽造通貨輸入罪等で7人を検挙した(和歌山)。

 第2節 暴力団総合対策の推進

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