第4章 犯罪情勢と捜査活動 

8 捜査力の充実強化

(1) 捜査体制の整備

 〔1〕 組織・人員の効率的な運用と捜査員の増強
 犯罪情勢の悪化に伴い、捜査すべき事件の数は増加し、その内容も複雑化・高度化している。これに対し、警察では、業務の合理化を徹底しているほか、刑事部門と他の部門が連携した横断的なプロジェクトチームを設けたり、機動捜査隊等警察本部の執行隊を情勢に応じて集中配置したりするなど、限られた組織・人員の効率的な運用に努めている。
 他方、こうした取組みにもかかわらず、多発する事件に捜査と検挙が追いつかないのが現状で、それが検挙率の低迷となって現れていることから、効率的運用や合理化を進めてもなお不足する捜査員の増強を行い、捜査体制を強化している。

 〔2〕 初動捜査体制の整備
 事件発生時に迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、又は現場の証拠物や目撃者の証言等を確保することが、犯罪の広域化・スピード化が進む中、より重要になっている。
 このため、平素から自動車の機動力を活用した捜査活動を実施し、事件発生時には現場や関係箇所に急行して犯人確保その他の捜査活動を行う機動捜査隊や、現場鑑識活動が特に重視される事件について、高度な鑑識活動を行うため現場に臨場する機動鑑識隊(班)を編成し、24時間体制で事件の発生に備えている。

 
機動捜査隊の活動

機動捜査隊の活動

 〔3〕 鑑識活動の強化・鑑定技術の高度化
 犯罪の現場等から採取した資料は、捜査段階では犯人の絞り込みや特定のために活用され、その後の公判でも犯罪の立証上極めて重要な役割を担う。
 これを実現するための鑑識及び鑑定について、警察では、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等の設置運用により、現場鑑識活動を強化しているほか、科学技術の発達に即応した、最新の知見を生かした関連技術の研究開発や資機材の開発・整備を推進し、その高度化や効果的活用を図っている。

 
現場鑑識活動

現場鑑識活動

 〔4〕 広域捜査体制の整備
 通信手段や交通手段の発達等を背景に、多くの犯罪では複数の都道府県にまたがる捜査が必要となっており、また、犯行後に素早く他の都道府県に逃亡する例や、同一犯人が広域にわたって連続的に犯罪を敢行する例も後を絶たない。我が国の警察組織は都道府県を単位としているため、こうした事象に対応するためには、都道府県警察が相互に緊密に連携して捜査を行うことが重要となる。
 このため、都府県境をまたがって連続的に市街地が形成されている区域等において、事件発生時の初動措置を迅速かつ的確なものとするため、都道府県警察の単位を超えて広域的に捜査やそれに必要な訓練を行う広域捜査隊の編成が進められており、平成16年4月現在、11地域を対象に都道府県警察間の協定が締結されている。
 また、広域にわたる重要事件が発生した場合には、指揮系統を一元化し、関係都道府県警察が一体となって捜査を行う「合同捜査」や、指揮系統の一元化までは行わないものの、捜査事項の分担その他捜査方針の調整を行う「共同捜査」を積極的に推進している。15年には、コンビニエンスストアを対象とした連続強盗事件、来日外国人や暴力団関係者による組織窃盗事件等を始め、数多くの事件を合同捜査や共同捜査により検挙した。

 〔5〕 専門捜査員制度の運用
 専門捜査員制度とは、航空機事故や列車事故のように、捜査に特別の専門的知識等を必要とする一方で、発生が稀であるなどの事情により、専門的知識等を有する警察職員が少ない事案に対処するため、あらかじめそうした職員を「専門捜査員」として登録し、他の都道府県で発生した事件であっても活用することができるようにする制度である。16年4月には、専門捜査員の派遣をより円滑にするため、犯罪捜査共助規則を改正した。

 8 捜査力の充実強化

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