第4章 犯罪情勢と捜査活動 

3 金融・不良債権関連事犯と企業犯罪

(1) 金融・不良債権関連事犯

 我が国の経済情勢は、景気回復の兆しがみられるもののいまだ厳しく、平成15年中は、産業再生機構の設立、金融機関の実質国有化等の金融政策が進められた。こうした中、数多くの企業が経営破綻(たん)に至ったが、破綻(たん)に至る過程又は破綻(たん)処理の過程で、企業経営陣による経済取引の健全性・公正性を大きく害する不正事犯が顕在化している。
 15年中の金融・不良債権関連事犯の検挙事件数は167件で、6件(前年比3.5%減)減少した。
 そのうち、融資過程における背任・詐欺事件等が29件で、破綻(たん)した金融機関の代表者らによる背任事件等、社会的反響の大きい事件を検挙した。また、金融機関の債権回収過程で民事執行を妨害するなどした競売入札妨害事件や強制執行妨害事件、民事再生法違反事件等を75件検挙した。そのほか、金融機関役職員による詐欺、業務上横領等を63件検挙した。

 
図4-12 金融・不良債権関連事犯の検挙事件数の推移(平成6~15年)

図4-12 金融・不良債権関連事犯の検挙事件数の推移(平成6~15年)
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事例1
第二地方銀行代表取締役頭取(67)らは、自己ら及びゴルフ場経営会社等の利益を図り、同銀行に損害を加える目的をもって、その任務に背き、同社に融資を実行しても、その回収が著しく困難であることを熟知しながら、十分な担保を徴求するなど債権を回収するための適切な措置を講ずることなく、12年9月、同社に対して57億円の融資を実行した。15年3月、商法違反(特別背任罪)で検挙した(石川)。

事例2
大手電機製品販売会社代表取締役(55)は、15年4月下旬、大阪地方裁判所に対し、会社とともに自己の民事再生手続開始の申立てを行い、15年6月、同手続の開始決定が確定したが、15年4月下旬ころから6月上旬ころにかけて、前後数回にわたり、自己の利益を図り、債権者を害する目的をもって、同人所有の現金約4,200万円及び株式約4万8,000株を隠匿した。15年6月、民事再生法違反(詐欺再生罪)で検挙した(大阪)。

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