第3章 生活安全の確保と警察活動 

(1) サイバー犯罪の検挙状況

 平成15年中のサイバー犯罪の検挙件数は過去最高の1,849件で、243件(前年比15.1%増)増加した。検挙件数の89.2%がネットワーク利用犯罪であった。

 
図3-23 サイバー犯罪の検挙件数の推移

図3-23 サイバー犯罪の検挙件数の推移
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 〔1〕 不正アクセス行為
 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下「不正アクセス禁止法」という。)違反の検挙件数は年々増加しており、15年中は145件を検挙した。そのうち77件が、利用権者の設定・管理の甘さにつけこんでIDやパスワードを入手し、不正アクセス行為を行ったものであった。

 
図3-24 不正アクセス禁止法違反の検挙状況

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事例1
無職者(35)らが、インターネットカフェのパソコンにキーロガー(注)を仕組み、そのパソコンを利用した者の銀行口座のID・パスワードを盗み取った上、それを使用して、インターネットでの銀行取引に用いられる認証サーバに不正アクセスし、他人の口座から自己が他の銀行に架空名義で開設していた口座に対して約1,600万円の送金操作を行った。15年3月、不正アクセス禁止法違反、電子計算機使用詐欺罪、窃盗罪等で検挙した(警視庁)。


注:インストールしたパソコン端末において、キーボードでどの文字を打鍵したかを記録するプログラム。

事例2
会社員(45)は、商社のメールサーバに不正アクセスして電子メールの内容を盗み見た上、インターネットの掲示板に、商社の事業に関する虚偽の内容の文言を投稿・掲示した。15年1月、不正アクセス禁止法違反、名誉毀損罪で検挙した(奈良)。

 〔2〕 ネットワーク利用犯罪
 ネットワーク利用犯罪では、いわゆる出会い系サイトを利用した児童買春や青少年保護育成条例違反、インターネット・オークションを利用した詐欺やわいせつ物頒布、著作権法違反、電子掲示板を利用した名誉毀損や脅迫が多く発生している。

事例3
無職者(27)が、インターネットのポルノサイトに未払いの料金があるとの虚偽の内容の電子メール約235万通を不特定多数の者に送信して支払いを請求し、指定した架空名義の銀行口座に約300人から合計約1,000万円を振り込ませてだまし取った。15年6月、詐欺罪で検挙した(茨城)。

事例4
無職者(24)が、インターネット・オークションにおいて高級ブランドの鞄を売ると偽り、落札者から代金約80万円を銀行口座に振り込ませてだまし取った。15年1月、詐欺罪で検挙した(兵庫)。

事例5
いわゆる風俗店の従業員(41)が、ファイル共有ソフトWinnyを利用して、著作権者の許諾を受けずに映画のデータ等をインターネット上で公開し、不特定多数の者が自由にダウンロードできる状態にした。15年11月、著作権法違反で検挙した。また、このソフトを開発、提供した大学助教授(33)を同風俗店従業員等の行為を幇助したとして、16年5月、著作権法違反で検挙した(京都)。

 第5節 高度情報通信ネットワークの安全確保

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