第3章 生活安全の確保と警察活動 

(3) 児童虐待事案への取組み

 〔1〕 児童虐待事案の早期発見と事件化
 警察では、街頭補導、少年相談、110番通報の取扱い等様々な活動の機会をとらえて、児童虐待事案の早期発見に努めている。また、被害児童を発見したときは、児童を保護するため、速やかに児童相談所に通告しているほか、犯罪に当たる事案については厳正に捜査を行い、刑事事件として検挙している。

 〔2〕 都道府県知事・児童相談所長に対する援助
 児童虐待の防止等に関する法律により、都道府県知事・児童相談所長は、児童の安全確認、一時保護、立入り調査等の職務執行に際し、警察官の援助を求めることができることとされている。警察では、援助の要請を受けた場合には、児童相談所長等と事前協議を行い、対応の方法、役割分担等を速やかに検討し、事案に即した適切な援助を行うように努めている。

 〔3〕 被害児童の支援
 警察では、少年サポートセンターを中心に、少年相談専門職員、少年補導職員による虐待を受けた児童のカウンセリング、保護者に対する助言・指導、訪問活動による家庭環境の改善等の支援を実施している。

 〔4〕 関係機関との連携強化
 警察では、学校、児童相談所、保健医療機関等との会合に積極的に参画し、児童虐待事案の現況について情報交換を行っているほか、被害児童の早期発見、早期通告、支援の方策について共同で検討するなどして、総合的な被害児童の支援対策が講じられるよう努めている。

コラム1 児童虐待の防止等に関する法律の改正
 深刻化する児童虐待に対応するため、第159回国会において児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律が成立し、16年10月に施行される。改正の要点は、次のとおりである。

〔1〕 目的規定の拡充
 児童虐待は児童の人権侵害であることなどが明記された。

〔2〕 「児童虐待」の定義の拡充
 保護者以外の同居人による虐待行為の放置が「保護者としての監護を著しく怠ること」に該当することが明確化された。また、配偶者の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものやこれに準ずる言動が「児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」に該当することが明確化された。

〔3〕 児童虐待に係る児童相談所・福祉事務所への通告対象の拡大
 通告の対象児童が「児童虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」まで拡大された。

〔4〕 警察署長に対する援助要請に係る規定の整備
 都道府県知事・児童相談所長による警察署長に対する援助要請について、必要に応じ適切に行われなければならないこととされた。また、警察署長は、援助要請を受けた場合において必要と認めるときは、所属の警察官に警察官職務執行法その他の法令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならないこととされた。

 第3節 少年の非行防止と健全育成

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