第2章 日本警察50年の軌跡と新たなる展開 

(2) 犯罪の質的変化と知能犯捜査・科学捜査の推進

 経済が安定成長期に入り、社会が成熟化・複雑化するにつれて、従来とは質的に異なる形態の犯罪が出現した。消費社会の巨大化と経済の不況を反映して、保険制度やクレジットカードを悪用した詐欺事件、消費者金融、訪問販売が絡む消費者トラブル等が多発したほか、ロッキード事件(51年)を始め大規模な贈収賄事件や多額の背任事件が続発し、国民の間で構造的な不正事犯に対する不満が強まった。また、科学技術の発展に伴い、コンピュータ犯罪が重大な社会問題となり始めたほか、高性能複写機を使用した通貨・文書偽造事件が多発した。
 そこで、警察は、55年に刑事警察強化総合対策要綱を策定し、重要知能犯捜査力、科学捜査力等の強化を目指した。これにより、大都市圏警察で企業犯罪特捜班が新設されるなど、重要知能犯捜査体制を強化するとともに、科学警察研究所における法科学研修所の創設、指紋自動識別システムの導入(57年)等、鑑定の高度化や現場鑑識体制の強化が図られた。

 
指紋自動識別システムによる遺留指紋照会業務

指紋自動識別システムによる遺留指紋照会業務

 第2節 日本警察50年史

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