第1章 地域社会との連帯 

(3) 防犯ボランティア団体の意識

 これまでに紹介した防犯ボランティア団体の活動は、地域の治安を良好に保ち、市民生活の安全と平穏を守るためになくてはならないものとなりつつあり、警察では、こうした団体との協力関係を深めるとともに、その活動の支援策を積極的に講じていくこととしている。
 そこで、警察庁は、防犯ボランティア団体の活動状況や参加者の問題意識等を把握するため、平成16年4月、「防犯ボランティア団体に対するアンケート調査」(以下「防犯ボランティア団体調査」という。)(注)を実施した。


注:全国で活動中の防犯ボランティア団体で警察が把握しているもののうち、地域住民を主たる構成員とし、防犯パトロールを活動内容としている1,440団体の代表者に対して、活動を行う上でのニーズや警察・地域の反応等についてアンケートを行い、1,159団体(80.5%)から回答を得た。

 〔1〕 活動を始めたきっかけ
 防犯ボランティア団体調査において、防犯ボランティア団体の代表者が活動を始めたきっかけについて質問したところ、「自分が生活している地域での防犯活動の必要を感じたから」という回答が最も多く(77.1%)、次いで「自治体・警察からの助言を受けて」(54.7%)、「他人の役に立ちたいと思っていたから」(29.7%)という回答が多かった。このことから、国民の間で治安に対する危機感が高まっていることがうかがえる。

 
図1-33 活動を始めたきっかけ(複数回答)

図1-33 活動を始めたきっかけ(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 〔2〕 団体の結成時期
 防犯ボランティア団体の結成時期について質問したところ、15年中に結成された団体は397団体と、回答数全体の約3分の1を占めた。次いで、14年中に75団体が、13年中に45団体が、12年中に41団体が結成されている。このように、15年に団体が急増し、16年も引き続き多くの団体が結成されており、最近、地域住民の間で、自らの手で自らの安全を守ろうとする意識が高まっていることがうかがえる。

 
図1-34 団体の結成時期

図1-34 団体の結成時期
Excel形式のファイルはこちら


 〔3〕 活動に参加するに当たって団体を知った経緯
 防犯ボランティア団体の構成員が、どのようにして団体を知り、その活動に参加することが多いのかについて質問したところ、「団体の防犯パトロール活動を実際に見て」という回答が最も多く(51.8%)、次いで「人づてに話を聞いて」(38.9%)、「団体の活動内容について書かれた団体発行のチラシ、パンフレットを見て」(33.9%)、「団体の活動内容について書かれた行政機関発行のチラシ、パンフレットを見て」(33.9%)という回答が多かった。

 
図1-35 活動に参加するに当たって団体を知った経緯(複数回答)

図1-35 活動に参加するに当たって団体を知った経緯(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 〔4〕 団体の活動に対する地域住民の反応
 防犯ボランティア団体の活動に対する地域住民の反応について質問したところ、団体の活動に地域住民が「好意的である」と考える団体は87.3%となっており、団体の活動が地域住民の理解を得て行われていることがうがかえる。

 
図1-36 団体の活動に対する地域住民の反応

図1-36 団体の活動に対する地域住民の反応
Excel形式のファイルはこちら


 〔5〕 全国での組織化・活性化
 防犯パトロール活動を行う団体が全国でより多く組織され、その活動が活性化するべきだと思うかについて質問したところ、「そう思う」と答えた団体は92.4%であり、「どちらでもいい」(2.8%)、「そうは思わない」(2.3%)という回答は非常に少なかった。

 
図1-37 防犯パトロール活動を行う団体が全国でより多く組織され、活性化するべきだと思うか

図1-37 防犯パトロール活動を行う団体が全国でより多く組織され、活性化するべきだと思うか
Excel形式のファイルはこちら


 〔6〕 団体に対する警察の反応
 防犯ボランティア団体に対する警察の対応について質問したところ、60.6%の団体が「十分である」と答える一方、14.6%の団体が「不十分である」と答えている。

 
図1-38 団体に対する警察の対応

図1-38 団体に対する警察の対応
Excel形式のファイルはこちら


 〔7〕 団体が警察と連携する上での警察への要望
 そこで、警察の対応が「不十分である」と答えた防犯ボランティア団体に対し、警察にどのような対応を望むのか質問したところ、「防犯ボランティア団体に対する支援・協力意識や理解の促進」という回答が最も多く(59.2%)、次いで「地域の犯罪情勢についての情報提供」(52.1%)、「合同パトロールの促進」(50.3%)という回答が多かった。

 
図1-39 連携する上での警察への要望(複数回答)

図1-39 連携する上での警察への要望(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 〔8〕 活動を行う上での不満・不安
 防犯ボランティア団体が活動を行う上での不満や不安の有無について質問したところ、「不満・不安がない」と答えた団体は60.7%と多かったが、他方で、3分の1を超える37.5%の団体が「不満・不安がある」と答えている。

 
図1-40 活動を行う上での不満・不安の有無

図1-40 活動を行う上での不満・不安の有無
Excel形式のファイルはこちら


 そこで、不満・不安があると答えた団体に対し、その内容について質問したところ、「活動中に危害に遭うのではないか(危害に遭っても補償されない)」という回答が最も多く(60.2%)、次いで「活動がマンネリ化してきている」(40.2%)、「活動に参加する時間が十分に持てない」(36.6%)という回答が多かった。

 
図1-41 活動を行う上での不満・不安の内容(複数回答)

図1-41 活動を行う上での不満・不安の内容(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 これに関連して、団体の構成員が活動中に危害に遭った(遭いそうになった)ことがあるかについて質問したところ、91.0%の団体が「危害に遭った(遭いそうになった)ことがない」と答えたのに対し、6.4%の団体が「危害に遭った(遭いそうになった)ことがある」と答えており、実際に身の危険にさらされた例は必ずしも多くはないものの、活動における不安感を裏付ける実例もあることがうかがえた。

 
図1-42 活動中に危害に遭った(遭いそうになった)ことがあるか

図1-42 活動中に危害に遭った(遭いそうになった)ことがあるか
Excel形式のファイルはこちら


 〔9〕 団体の運営上での不安
 防犯ボランティア団体の運営を行う上での不安の有無について質問したところ、「不安がない」と答えた団体は53.1%であるのに対し、半数弱に当たる44.3%の団体が「不安がある」と答えている。

 
図1-43 団体の運営上での不安の有無

図1-43 団体の運営上での不安の有無
Excel形式のファイルはこちら


 そこで、不安があると答えた団体に対し、その内容について質問したところ、「メンバーに若い人が少ない(いない)」が最も多く(62.1%)、次いで「経費が足りない」(40.1%)、「活動に対するメンバーの熱意の維持が難しい」(28.6%)、「団体全体として、活動についてのノウハウの蓄積がない」(26.5%)、「活動内容に比べてメンバーの数が少ない」(19.3%)という回答があった。

 
図1-44 団体の運営上での不安の内容(複数回答)

図1-44 団体の運営上での不安の内容(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 〔10〕 行政が行うべきこと
 防犯ボランティア団体の組織化や活動の活性化のために行政が行うべきだと思われることについて質問したところ、「団体の活動成果についての積極的な広報」が最も多く(54.1%)、次いで「防犯パトロール活動に利用できる道具の貸出・支給」(53.6%)、「防犯活動に関する経費の補助」(45.0%)という回答が多かった。

 
図1-45 防犯ボランティア団体の組織化や活動の活発化のために行政が行うべきだと思われること(複数回答)

図1-45 防犯ボランティア団体の組織化や活動の活発化のために行政が行うべきだと思われること(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 また、行政が行うべきこととして「防犯パトロール活動に利用できる道具の貸出・支給」と答えた団体に対し、貸出・支給してほしい道具について質問したところ、「帽子、ジャンパー、腕章等の服装類」という回答が最も多く(76.1%)、次いで「停止灯、懐中電灯」(53.3%)、「防犯ブザー」(24.0%)という回答が多かった。

 
図1-46 貸出・支給してほしい道具(複数回答)

図1-46 貸出・支給してほしい道具(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 さらに、行政が行うべきこととして「防犯活動に関する経費の補助」と答えた団体に対し、必要とする経費補助の内容について質問したところ、「ボランティア保険代」という回答が最も多く(55.4%)、次いで「安全・安心マップや広報チラシ等の印刷費」(46.1%)、「用紙、文房具費等の事務経費」(28.0%)という回答が多かった。

 
図1-47 必要とする経費補助の内容(複数回答)

図1-47 必要とする経費補助の内容(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 〔11〕 防犯ボランティアの声
 防犯ボランティア団体調査には、自由回答欄が設けられた設問があり、そこには防犯ボランティア活動に従事する者の様々な感想や意見が記されていた。
 その一部を紹介すると、「いろいろな人から感謝とねぎらいの言葉をかけられ、活動のはげみになっている」、「地域の住民に期待されていることが分かり、これからも継続していくことが大事だと思った」などのように、周囲からの感謝や期待がやりがいにつながっているとする回答が多くみられた。
 また、「活動を通じて、町内の人たちが話し合う機会ができた」などのように、防犯ボランティア活動が住民同士の人間関係づくりのきっかけになっていることを指摘する回答もあった。
 さらに、「よく知っているつもりでいる自分の生活地域でも、普段気付かない危険な場所や死角になっている場所が意外に多いことが分かった」などのように、防犯パトロール活動を通じて地域の実情に関する理解が深まったとする回答もあった。
 その一方で、「地域住民は自分で自分を守る意識がまだ低い。他人に依存する気持が大である」、「防犯意識の強い人と全く人ごとのようにしている人と、人によって温度差がある」、「隣接町会と連帯しての活動が必要であるというと賛同が得られるが、具体的な活動の話になると、協力を得られない」などのように、住民の防犯意識を一層向上させる必要性を訴える回答がみられた。
 このほか、防犯ボランティア活動の成果について、「地域住民の防犯に対する意識が高まってきたように思う」、「夜間パトロールをした結果、違法駐車をする車が見当たらなくなった」、「少年の深夜はいかいがなくなった」、「暴走族が極端に減少し、近所の人たちから喜ばれている」、「隣接地区で窃盗事件が発生している中、活動開始以降、自分たちの自治会の地区では窃盗事件が1件も発生しておらず、活動の効果に驚いている」などのように、地域社会の安全と安心に貢献できたことを実感していることがうかがえる回答が目立った。

 第2節 治安回復に向けた地域社会との協働

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む