第1章 地域社会との連帯 

(2) 今後の展望

 国民意識調査において、現在住んでいる地域で犯罪の被害に遭うのではないかという不安を感じるかと質問したところ、「非常に不安である」、「少し不安である」と答えた者が63.0%であり、「ほとんど不安はない」、「まったく不安はない」と答えた者(36.8%)を大きく上回っている。

 
図1-28 現在住んでいる地域で犯罪の被害に遭うのではないかという不安を感じるか

図1-28 現在住んでいる地域で犯罪の被害に遭うのではないかという不安を感じるか
Excel形式のファイルはこちら


 一方、地域警察官意識調査において、地域住民の防犯に対する意識が高まってきていると感じるかと質問したところ、「とても感じる」、「ある程度感じる」と答えた者が43.6%、「全く感じない」、「あまり感じない」と答えた者が24.6%であり、犯罪の被害に遭うのではないかという不安感の高まりとともに防犯に対する意識も高まりつつある一方、依然として防犯に関心の低い者も少なからずいることがうかがわれる。

 
図1-29 地域住民の防犯に対する意識が高まってきていると感じるか

図1-29 地域住民の防犯に対する意識が高まってきていると感じるか
Excel形式のファイルはこちら


 このような状況の中で、地域警察官意識調査において、地域住民と警察は今後どのような活動で連携していく必要があると思うかと質問したところ、「犯罪情報、地域安全情報の提供」と答えた者が67.1%で最も多く、交番の地域警察官が、犯罪の発生状況等を地域住民に積極的に知らせることにより、その防犯に対する意識を高めることが重要であると考えていることがうかがわれる。
 また、これに次いで多いのは「合同パトロール、地域における危険箇所の点検等の共同した防犯活動」(52.9%)、「地域住民等の行う防犯活動へのノウハウ提供等の助言」(39.1%)であり、地域住民と警察との協働の必要性も感じていることが分かる。

 
図1-30 地域住民と警察は今後どのような活動で連携していく必要があると思うか(複数回答)

図1-30 地域住民と警察は今後どのような活動で連携していく必要があると思うか(複数回答)
Excel形式のファイルはこちら


 警察では、交番機能の強化、パトロールの強化等を通じ、交番・駐在所の地域警察官が地域住民等からの期待にこたえる活動を行うための基盤づくりを進めるとともに、交番・駐在所の地域警察官と地域住民との連携を一層強め、地域住民とともに地域の安全の確保に努めていくこととしている。
 また、交番・駐在所の会議室で地域住民との情報・意見の交換を行ったり、防犯ボランティアの活動のための活用を進めたりすることにより、地域住民との連携の拠点としての交番・駐在所の役割を強化していくこととしている。

事例
警察署で管轄地域の犯罪発生状況を分析したところ、1年間に発生する刑法犯の約3割がオートバイ盗であり、盗まれるオートバイの約7割が管内の大学に通う大学生のものであることが判明した。そこで、警察署の各交番・駐在所の地域警察官を中心に、オートバイ盗の多発地域の検問、交番・駐在所連絡協議会の開催、大学におけるオートバイ盗防止対策の呼び掛け、ミニ広報紙の配布を行うとともに、市役所等の協力を得て、市の広報紙を通じた呼び掛けやオートバイ盗防止の看板の作成を行った。その結果、当該地域におけるオートバイ盗の発生件数は、前年の222件の半分以下である101件となった(千葉)。

コラム7 地域住民との連携を重視した交番・駐在所の整備
 警察では、交番・駐在所の整備に当たっては、警察と地域住民との連携が確保されやすくなるように配意している。このため、地域住民が交番・駐在所に集まって、警察への防犯相談を行ったり、防犯ボランティア活動に関する会議を開催したりすることができるよう、コミュニティールーム等と呼ばれる会議室を設置するよう努めている。また、交番・駐在所の設置場所についても、地域住民が訪問しやすく、利用しやすいところとするよう努めている。
 このような観点から、都市部の住宅地であっても、夜間の事件・事故の少ない地域には、交番ではなく駐在所を設置することがあり、勤務員は、地域内の施設に居住して活動するという駐在所勤務の特性を生かしながら、地域住民や地域社会との連携を深めている。また、新たに集合住宅が建築される機会を捉えて、敷地内や建物内に交番・駐在所を整備している例もある。

 
マンションの1階部分に整備された都市部の駐在所(警視庁中野警察署)
マンションの1階部分に整備された都市部の駐在所(警視庁中野警察署)

 第1節 地域社会と交番・駐在所

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む