第1章 地域社会との連帯 

3 地域社会との連携の強化

(1) 交番・駐在所と地域社会との連携活動の現状

 〔1〕 地域社会との連携についての交番の地域警察官の意識
 地域警察官意識調査において、地域の安全は警察だけで確保できると思うかと質問したところ、「確保できない」と答えた者が94.9%であった。

 
図1-23 地域の安全は警察だけで確保できると思うか

図1-23 地域の安全は警察だけで確保できると思うか
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 「確保できない」と答えた者に対し、警察の活動以外に何が必要だと思うかと質問したところ、「地域住民一人一人の自衛方策」と答えた者が78.3%、「地域住民、ボランティア等の防犯活動」と答えた者が51.6%、「他の行政機関による防犯施策の推進」と答えた者が47.7%であり、警察、地域住民、行政機関等の連携した活動が必要であると考えている者が多いことがうかがわれる。

 
図1-24 地域の安全を確保するために必要だと思う活動(複数回答)

図1-24 地域の安全を確保するために必要だと思う活動(複数回答)
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 また、現在、自分の勤務する交番と地域住民が地域の安全を確保するために連携して行っている活動は十分であると思うかと質問したところ、「十分である」、「ある程度十分である」と答えた者が32.6%、「どちらともいえない」と答えた者が33.1%、「あまり十分でない」、「全く十分でない」と答えた者が32.1%であった。

 
図1-25 現在、自分の勤務する交番と地域住民が地域の安全を確保するために連携して行っている活動は十分であるか

図1-25 現在、自分の勤務する交番と地域住民が地域の安全を確保するために連携して行っている活動は十分であるか
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 「あまり十分でない」、「全く十分でない」と答えた者に対し、何が原因で十分な連携がとれないと思うかと質問したところ、「警察側が事件事故に追われ地域住民と連携する時間が不足しているため」と答えた者が75.7%と最も多く、地域住民側の防犯や警察との連携に関する意識の不足を指摘する回答を大きく上回った。

 
図1-26 何が原因で十分な連携がとれないと思うか(複数回答)

図1-26 何が原因で十分な連携がとれないと思うか(複数回答)
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 〔2〕 交番・駐在所連絡協議会
 交番・駐在所の地域警察官と地域住民が地域の治安に関する問題について相互に検討・協議したり、交番・駐在所の地域警察官が地域住民の警察に対する意見、要望等を把握したりすることにより、両者が協力して犯罪の抑止、交通事故の防止、災害対策等を図るため、交番・駐在所ごとに「交番・駐在所連絡協議会」が設置されており、平成15年末現在の設置数は1万3,450である。
 交番・駐在所連絡協議会の委員は、幅広い意見・要望等を聴取することができるよう、地域の実情に精通している地域住民の中から、職業、年齢、性別等を考慮して選定、依頼している。また、運営担当者には、交番・駐在所の地域警察官全員をもって充てている。
 交番・駐在所連絡協議会は、定期会議を開催するほか、地域で犯罪や事件・事故が連続して発生し、地域住民に不安が生じている場合等に随時会議を開催している。
 交番・駐在所の地域警察官は、これらの会議を開催することにより、地域住民と協力して解決できるような問題を把握し、その解決を図るよう努めている。

事例1
15年10月、交番の管轄する地域に女子大学及び女子短期大学があり、学生に対する痴漢やのぞき等が問題になっていたため、交番連絡協議会で大学、学生、周辺の地域住民と話し合い、同交番の女性警察官が窓口となって積極的に関連情報の交換を行っている(長崎)。

 
交番・駐在所連絡協議会(長崎)

交番・駐在所連絡協議会(長崎)

 〔3〕 情報発信活動
 交番・駐在所の地域警察官は、様々な活動を通じて、地域住民に管轄地域の事件・事故の発生状況やその防止策等の身近な話題を伝えている。
 例えば、ひったくりの発生が多発している場所や不審者の出没する通学路といった、地域住民が知ることによって被害の増加を防ぐことにつながる情報や、地域住民からの情報提供により解決につながる可能性のある事件を記した「交番速報」を、あらかじめ登録した送信先にファックスで送信したり、自治会の掲示板のような地域住民の目に触れやすい場所へ貼付したりしている。
 また、地域の身近な出来事や事件・事故の発生状況を記した「ミニ広報紙」や「交番新聞」を作成し、地域住民への直接配布や、自治会等を通じた回覧等を行っている。
 このほか、地域警察官が地元のテレビ番組やラジオ番組に出演して犯罪情報や防犯情報を説明したり、インターネットのホームページを活用して情報発信したりしている例もある。

 
ミニ広報紙(警視庁)

ミニ広報紙(警視庁)

事例2
管轄地域で空き巣等の犯罪が発生しているにもかかわらず、地域住民の間に「まさかこんな田舎まで泥棒は来ないだろう。」との声が聞かれたことから、交番の地域警察官が地域住民の注意を喚起するため、ケーブルテレビの地方公共団体(市)のチャンネルを通じ、犯罪の発生状況や実施すべき防犯対策を広報したところ、地域住民から大きな反響があった(福岡)。

 
ケーブルテレビの放送画面(福岡)

ケーブルテレビの放送画面

コラム6 パトロールカード
 交番・駐在所の地域警察官は、パトロール中に気付いた防犯上の注意事項を伝えたり、空き巣等の被害者にパトロールを行っていることを知らせて安心してもらったりすることなどを目的として、管内の地域住民にパトロールカードを配布している。
 パトロールカードには、交番名やパトロールを行った日時等が記載されている。

 
パトロールカード(島根)

パトロールカード(島根)

 〔4〕 その他の活動
 地域警察官意識調査において、自分の勤務する交番において地域の安全を確保するために地域住民と連携してどのような活動を行っているかと質問したところ、「交番連絡協議会、防犯座談会等の開催」(60.5%)や、「交番速報等による情報発信活動」(57.0%)のほか、「地域住民等との合同パトロール」(29.7%)、「通学路における警戒等の子供の保護、誘導活動」(27.4%)、「放置自転車の撤去や自転車の利用者に対する防犯指導」(23.3%)等を挙げている。


事例3 地域住民との合同パトロール
16年3月、地域住民が防犯のために結成したパトロール隊(5人)と駐在所の地域警察官が夕方に合同パトロールを行っていたところ、別荘荒しが発生している地域で、所有者が訪れていないはずの別荘の部屋に明かりがついているのを発見したため、駐在所の地域警察官が別荘内を確認し、所有者に無断で別荘に入り込んでいた男2人を建造物侵入罪で逮捕した(千葉)。

 
合同パトロール(千葉)

合同パトロール(千葉)

 
図1-27 自分の勤務する交番において地域の安全を確保するために地域住民と連携してどのような活動を行っているか(複数回答)

図1-27 自分の勤務する交番において地域の安全を確保するために地域住民と連携してどのような活動を行っているか(複数回答)
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事例4
15年11月、登下校中の小学生に対する公然わいせつ事案が発生していたことから、交番の地域警察官が交番速報等により地域住民に注意を呼び掛けるとともに、学校、保護者と協力して小学校の通学時間帯の警戒活動を強化していたところ、学校近くで公然わいせつ事案が発生し、警戒中の交番の地域警察官が直ちに現場に駆けつけ、犯人を検挙した(大阪)。


 第1節 地域社会と交番・駐在所

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