薬物犯罪の現状と対策 (1)平成14年の薬物情勢  我が国は,現在,第三次覚せい剤乱用期にあり,深刻な薬物情勢が継続している(第1章第1節4(1)参照)。  平成14年中の薬物情勢は,覚せい剤事犯の検挙人員が1万6,771人で,1,141人(前年比6.4%減)減少したものの,覚せい剤押収量は437.0キログラムと,30.9キログラム(前年比7.6%増)増加し,依然として大量押収事案がみられた。また,覚せい剤以外の薬物についても,大麻樹脂の押収量が過去最高を記録したほか,MDMA等の錠剤型合成麻薬の押収量が13年を上回り,過去最高を更新するなど,乱用薬物が拡大している。 1)覚せい剤事犯  覚せい剤事犯の検挙状況の推移については,第1章第1節4(1)ア参照。 2)大麻事犯  14年中は,大麻事犯の検挙人員に引き続き増加傾向がみられ,また,大麻樹脂の押収量が過去最高を記録した(表2-41)。 表2-41 大麻事犯検挙状況の推移(平成10~14年) 乾燥大麻 大麻樹脂 3)麻薬等事犯 ○ MDMA等の錠剤型合成麻薬  ・14年中のMDMA等の錠剤型合成麻薬(LSDを除く。)の押収量は,過去最高の17万4,248錠(前年比55.1%増)を記録した(図2-34)。  ・これらの錠剤型合成麻薬は,その形状等から使用に対する抵抗感が希薄になることなどから,乱用の拡大が懸念される。 押収されたMDMA 図2-34 MDMA等の錠剤型合成麻薬の押収量の推移(平成10~14年) ○ コカイン  ・14年中のコカイン事犯の検挙件数,検挙人員,押収量は,それぞれ4件(前年比2.7%減),12人(前年比23.1%減),7.0キログラム(前年比29.5%減)減少した(表2-42)。  ・検挙人員の57.5%を来日外国人が占めた。 表2-42 コカイン事犯検挙状況の推移(平成10~14年) ○ ヘロイン  ・14年中のヘロイン事犯の検挙件数,検挙人員,押収量は,それぞれ11件(前年比20.8%増),7人(前年比21.2%増),14.8キログラム(前年比344.2%増)増加した(表2-43)。  ・検挙人員の50.0%を来日外国人が占めた。 表2-43 ヘロイン事犯検挙状況の推移(平成10~14年) ○ 向精神薬  ・向精神薬事犯の検挙件数,検挙人員,押収量は,近年,鎮静剤,興奮剤とも,おおむね横ばいで推移している(表2-44)。 表2-44 向精神薬事犯検挙状況の推移(平成10~14年) ○ あへん  ・14年中のあへん事犯の検挙件数,検挙人員,押収量は,それぞれ80件,43人,5.7キログラムであった(表2-45)。  ・検挙人員の62.8%を来日外国人が占めた。 表2-45 あへん事犯検挙状況の推移(平成10~14年) 4)シンナー等有機溶剤及び脱法ドラッグへの対応 ○ シンナー等有機溶剤  ・14年中のシンナー等有機溶剤の乱用者の検挙人員(シンナー等有機溶剤を摂取し,若しくは吸入し,又はその目的の所持により毒物及び劇物取締法違反で検挙又は補導された者をいう。)は4,423人であった。  ・検挙人員の63.4%を少年が占めた。 表2-46 シンナー等有機溶剤事犯の検挙状況の推移(平成10~14年) ○ 脱法ドラッグ  ・近年,薬物取締法令に触れることなく,多幸感や性的快感等の薬理作用が得られる旨の宣伝をして,いわゆる脱法ドラッグを販売する事案が散見される。  ・警察では,その成分中に規制薬物が含まれるなど,法令に違反する場合には,関係行政機関と連携して厳正な取締りを推進している。  ・なお,いわゆるマジックマッシュルーム(注)は,14年6月に麻薬及び向精神薬取締法における麻薬原料植物として指定され,麻薬として規制されることとなった。14年中,マジックマッシュルームに係る事犯を57件,55人検挙している。 (注)マジックマッシュルームとは,麻薬成分であるサイロシン又はサイロシビンを含有するきのこ類をいう。 マジックマッシュルーム