第6章 公安の維持 

オウム真理教の動向と対策

(1)依然として危険性を有するオウム真理教

1)地下鉄サリン事件を始めとするテロの実行
 オウム真理教(以下「教団」という。)は,麻原彰晃こと松本智津夫が確立した教義に基づき,松本サリン事件や地下鉄サリン事件を始めとする数々の凶悪なテロを行った団体である。教団が行った無差別テロの実態について,平成14年1月29日に東京高裁が下した判決において,地下鉄サリン事件は,教祖(松本)の命令により教団幹部らが犯行計画を策定し準備を周到に行った組織的・計画的な犯行であり,「我が国の犯罪史上に類例をみない極めて残虐かつ凶悪で非人道的なもの」と認定された。
 また,教団は,7年までロシアにも支部を有しており,14年1月23日には,当時指導を受けていたロシア人信者が,松本の奪還を図るテロを企てたなどとして,ウラジオストックの裁判所から有罪判決を受けている。

2)団体規制法に基づく観察処分の期間更新決定
 教団は,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(以下「団体規制法」という。)(図6-1)に基づき,12年2月から3年間(15年1月まで),公安調査庁長官の観察に付されていたが,同長官は,期間の更新が必要である旨の警察庁長官による意見を聴いた上,14年12月,公安審査委員会に対し期間の更新を請求した。これを受けた同委員会は,15年1月,
・ 教団は,代表者が現在も松本であり,松本を教祖として絶対的な帰依を維持しており,現在も,松本が教団の活動に絶対的ともいえる影響力を有していると認められる
・ 教団については,現在も,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があると認められる
・ 教団は,その組織体質が未だ閉鎖的・欺瞞(まん)的であり,活動状況を把握することが困難な実情にあり,引き続きその活動状況を継続して明らかにする必要がある
などとして,3年間の観察処分の期間を更新する決定を行った。

 
図6-1 無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法律

図6-1 無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法律

3)地方及び海外への進出
 15年4月現在,教団は,全国18都道府県に30か所の拠点施設を有し(図6-2),信者約1,650人を擁しているが,特に,14年11月には札幌及び那覇に,15年2月には岡山に,それぞれ拠点施設を設けるなど,近年,地方への進出が顕著である。
 また,海外においても,ロシアに拠点を設け,ロシア人信者約300人を擁しており,日本から教団幹部を頻繁に派遣し,指導に当たらせている。15年4月には,上祐史浩教団最高幹部が,自らロシアを訪問し,直接指導に当たっている。

 
図6-2 オウム真理教拠点施設~18都道府県30施設

図6-2 オウム真理教拠点施設~18都道府県30施設

教団の構成員
…約1,650人
(出家信者約650人,在家信者約1,000人)

教団の拠点施設
…30か所
(18都道府県に所在)

教団の本部機能
…南烏山施設

信者の居住用施設
…約120か所

(平成15年4月現在)

 

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