第6章 公安の維持 

(2)ロシア・中国による対日諸工作

 ロシアでは,治安・情報機関の組織や権限を強化する傾向がみられ,我が国にも様々な肩書き(カバー)を持つ情報機関員を相当数配置しているとみられる。

 オーストリア内務省は,2002年(平成14年)9月発行の,「2001年憲法擁護白書」において,「低調になっていたロシア情報機関の活動が,旧KGB出身のプーチン大統領の就任後全世界で復活しつつある」と警戒を呼び掛け,大使館員や通商代表部員,ジャーナリストの肩書き(カバー)を持ったスパイのほか,国際機関にも多数の要員を送り込んでいると指摘している。

事例
 14年3月,元航空自衛官の防衛関連会社社長に,我が国の「防衛秘密」である中距離空対空レーダー誘導ミサイル(通称「スパロー」)等のマニュアルを要求した軍参謀本部情報総局(GRU)の機関員とみられる元在日ロシア連邦通商代表部の職員を,日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反(防衛秘密の探知収集の教唆)で摘発している。

 中国は,社会主義現代化建設という国家目標達成のため,先端科学技術の移転や経済援助・投資を獲得するため,多数の技術・研究者等を我が国に派遣しているほか,在日公館員,人民解放軍・国防科学技術関連企業や代表団員等による各種の働き掛けを行っている。

 2001年(13年)3月に採択された「国民経済と社会発展に関する第10次5か年計画」において,「国防科学研究の強化・国防科学技術工業改革を推進し,新型武器装備を発展させる」,「現代技術,特にハイテク条件下での防衛作戦能力を増強する」との方針が示された。
 中国政府発行「2002年の中国の国防」において,「国防科学技術工業は国の戦略的産業」と位置付け,特に「ハイテク兵器・装備を優先的に発展させ,現代化水準の向上に努めている」とするなど,ハイテク導入による国防科学技術工業の現代化を強調している。

 警察は,ロシア・中国の違法事案に対し,厳正な取締りを行うこととしている。

 

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