第2章 生活安全の確保と警察活動 

街頭犯罪及び侵入犯罪の発生を抑止するための検挙活動

(1)非行集団に対する取締りの強化,解体補導及び立直り対策の推進強化

 ひったくり,路上強盗等の街頭犯罪は,その検挙人員の約7割が少年によって占められており,暴走族や非行少年グループ等の非行集団によって敢行される各種の犯罪は,我が国の治安にとって無視できないものとなっている。
 非行集団は,暴走行為,集団的暴行事件等の集団的な違法行為に限らず,遊興資金や背後にある暴力団等への上納金等の獲得を目的として各種の街頭犯罪を敢行することが多く,また,暴力団等が非行集団を裏から支え,これを資金源としていることも少なくない。
 警察では,非行集団に対する取組みを街頭犯罪抑止対策の重要な柱と位置付け,少年部門,交通部門,刑事部門の連携を強化して,非行集団やその予備軍となる非行少年,更には非行集団の背後にある暴力団等による犯罪を徹底的に取り締まり,非行集団の弱体化,解体を図っている。

 
い集する非行集団

い集する非行集団

事例
 広島県警察では,平成14年4月,暴走族対策について部門を超えた取組みを行うため,これまで交通部が行っていた暴走族対策と生活安全部が行っていた少年犯罪対策とを統合して,少年対策本部参事官の下に暴走族・少年犯罪対策課を新設するとともに,従来,少年事件を扱っていた少年課を少年育成課と改称して少年の非行防止,立直り対策に当たらせることとした。暴走族・少年犯罪対策課は,暴力団対策部門と連携をとりながら,少年非行集団に対する取締りを多角的に行うとともに,少年育成課は,「暴走族離脱サポートセンター」を中心に,暴走族からの離脱支援や離脱後の就労・社会奉仕の促進を行っている。

コラム1 地域住民の暴走族追放気運の高揚と条例の制定
 暴走族の根絶には,警察による取締りのみではなく,地方公共団体等の関係機関・団体,地元住民等が連携し,地域ぐるみで暴走族追放気運の高揚を図っていく必要がある。
 暴走族追放条例は,10年9月,宮城県亘理町で初めて制定されて以来,地域における暴走族追放気運の盛り上がりとともに,14年度末現在,18府県46市144町23村において制定されており,警察は暴走族の実態等について情報を発信するなどして,これに協力しているところである。
 これらの条例においては,地方公共団体,住民,関係事業者等の責務や役割が規定されるとともに,地域の実情に応じて,暴走行為等に対する罰則規定が盛り込まれている。

 また,このような取締りを強化する一方で,学校等の関係機関との連携や少年警察ボランティアとの協力により,少年が非行集団に加入することを阻止するとともに,少年の非行集団からの離脱を促し,更には検挙された少年が非行集団へ戻ることを防止するための「居場所づくり」等,少年の立直りのための取組みを進めている。

 
少年の立直り支援(ロックバンド塾)

少年の立直り支援(ロックバンド塾)

 
少年の立直り支援(パソコン教室)

少年の立直り支援(パソコン教室)

コラム2 非行集団の切り崩し作戦「この時代,暴走族やってて恥ずかしくない?」
 非行集団の弱体化,解体を図るためには,取締りの推進のみならず,加入阻止,離脱促進により切り崩しを進めるとともに,以後において非行集団へ舞い戻らせないためにも,少年の立直りを支援することが必要である。
 大阪府警察では,暴走族の取締りに際し,ひったくり,路上強盗,オートバイ盗や大阪府安全なまちづくり条例に基づく鉄パイプ等の携帯禁止違反を積極的に取り締まる一方で,「この時代,暴走族やってて恥ずかしくない?」と書いたパンフレットを配布して「暴走族ダサイ作戦」を展開した結果,高校生の意識に暴走族離れがみられるなどの効果が現れつつある。
 また,組織的かつ総合的な解体対策を推進する必要があると認められる非行集団を「要対策非行少年グループ」に指定し,検挙・解体対策班が,少年に対する捜査に着手する段階から,事件の捜査を担当する捜査担当官と少年の立直り支援等を行う補導担当官を同時に派遣する取組みを進めている。
 このような取組みにより,少年が犯罪を敢行するに至った原因や動機の解明とそれに応じた再非行の防止等,きめ細やかな立直り支援に努めている。

 
暴走族ダサイ作戦のパンフレット

暴走族ダサイ作戦のパンフレット

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む