第1章 組織犯罪との闘い 

(4)新たな捜査手法等についての検討

 近年,犯罪が国際化,多様化したこと,被疑者の権利意識が変化したことなどにより,被疑者の取調べにおいて,犯罪の核心に触れる供述を得ることが困難となっており,その結果,更なる事件捜査の発展や新たな証拠等の発見・入手等が難しくなっている。
 特に外国人の被疑者については,犯罪について供述するとかえって刑が重くなる,共犯者のことをしゃべると後で組織から凄まじい報復を受けるなどの理由から,取調べにおいて黙秘を続けることが多い。
 こうしたことが検挙件数の減少にもつながっており,年々増加する認知件数と相まって,近年の検挙率低下の大きな要因となっている。
 このような状況を克服し,我が国の良好な治安を回復するためには,従来とは異なる手法により捜査情報等を入手し,物証その他の客観的資料を確保する方策を検討しなければならない。
 近年では,麻薬特例法により,コントロールド・デリバリーの手法が導入されたり,通信傍受法により,一定の犯罪について通信の傍受が可能とされたりするなど,新たな捜査手法を可能とする法令の整備が進んでいる。今後も,法整備の必要性等も念頭に置きつつ,組織犯罪の取締りに資する新たな捜査手法の検討を進めることが必要である。
 また,暴力団員の違法行為について,当該暴力団の代表者等に対する責任を追及し,暴力団被害者の救済を充実させるための法制の整備を検討する必要がある。

 

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