第1章 組織犯罪との闘い 

(1)捜査力・執行力の充実強化等

ア 捜査体制の整備

 我が国の治安情勢は,これまでに述べた組織犯罪のほか,刑法犯や交通事故等の各種警察事象が増加の一途をたどるとともに,ハイテク犯罪等の新しい治安課題が出現するなど,年々厳しさを増しているため,我が国の治安を速やかに回復し,国民が真に求めている安全と安心を確保するためには,徹底的な合理化を行ってもなお不足する人員について,緊急に増員を図る必要がある。
 警察では,地方警察官の計画的増員を行っており,平成13年度に2,580人,14年度に4,500人,15年度に4,000人の増員を行い,その一部を来日外国人組織犯罪捜査の強化,不法滞在者対策の強化,薬物の密輸密売組織に対する取締りの強化等に割り当てている。また,組織犯罪に対する捜査力の充実強化を図る上では,確保した人材を効果的に活用する体制・制度を整備することが不可欠である。
 国際捜査体制の整備については,都道府県の刑事部門において,昭和63年に全国で初めて国際捜査課が警視庁に設置されて以降,大阪,愛知,千葉,神奈川,埼玉,長野及び石川の各府県警察に設置されている。このほか,茨城,愛知,熊本の各県警察に組織犯罪対策課,三重,山梨の各県警察に国際対策課が設置されるなど,専任捜査体制が拡充されている。さらに,警視庁の国際捜査課は,平成15年4月から,組織犯罪対策部に移行・再編されており,組織化が進む来日外国人犯罪に対して,刑事部門の枠にとらわれずに,より柔軟な対応,効果的な取締りが期待されている(2(3)参照)。
 広域的な組織犯罪,特に複数の都道府県にまたがるような組織犯罪に対しては,8年の警察法の一部改正により,都道府県警察は,広域組織犯罪等を処理するため,その固有の判断と責任の下に管轄区域外においてその権限を行使することができるように,また,警察庁長官が都道府県警察の役割分担等について指示を行うことにより,広域組織犯罪等に対処するための態勢を迅速かつ的確に整備することが可能となった。また,13年に管区警察局の組織改編により広域調整部を設置し,広域犯罪の捜査等の広域的対応を必要とする警察事象その他国の公安に係る警察事象に関する警察活動につき,管轄区域内各府県警察に対して調整を行うこととし,広域調整機能を強化している。

 

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