第1章 組織犯罪との闘い 

1 主要な組織犯罪の概要と対策の推進状況

(1)米国

 米国では19世紀の終わりころから,イタリア系移民を中心として犯罪組織が形成され始めた。これら組織は,時代の移り変わりとともに活動内容や組織形態を変化させつつ,ニューヨークやシカゴ等大都市を中心に規模を拡大させ,マフィアと呼ばれるようになった。代表的な組織には,ラ・コーザ・ノストラ(La Cosa Nostra)があり,多種多様の非合法活動(殺人,恐喝,薬物密輸,汚職,賭(と)博,正当な企業活動への浸透,高利貸し,売春,税に関する詐欺,株価操縦等)に関与している。
 一方,近年の情報通信技術等の発達によって,犯罪や犯罪組織のグローバル化がもたらされており,例えば,米国以外の国を拠点として行われる金融市場での詐欺や薬物密輸等の犯罪は米国の経済・社会に強い影響を与えるようになっている。また,ロシア・東欧系やアジア系の国際的な犯罪組織が,従来から米国内で形成されていたラ・コーザ・ノストラや薬物密輸組織と連携を強めつつあることや,犯罪組織がプリペイド型の移動通信の活用及び頻繁な通信手段の変更等を行うことにより捜査当局の監視を逃れつつ犯罪を敢行していることなどの実態から,将来,国際的な犯罪組織が米国社会に深刻な脅威となることが懸念されている。
 このような組織犯罪に対しては,米国では,連邦捜査局(FBI)の犯罪捜査局のなかに組織犯罪対策を所管するインテリジェンス部門を設けて,他国の警察機関等と連携して情報の収集・分析を行っているほか,捜査の初期段階から,検察と緊密に協調しながら,通信傍受,いわゆる覆面捜査(法執行機関の者が犯罪者の振りをしたり,犯罪者が利用するビジネスを営んだりすること),匿名の情報協力者の利用等の高度な手法を用いた捜査を進めている。

 

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