第1章 組織犯罪との闘い 

(6)省庁横断的な組織犯罪への取組み

 平成13年7月,政府は,様々な凶悪犯罪の多発により「世界一安全な国,日本」に対する国民の信頼が低下している現状を踏まえ,国民の信頼を取り戻すために,最近,特に国民に不安を与えている国際犯罪等に対して,関係行政機関との緊密な連携の下に,抜本的な対策を講じることを目的として,内閣官房長官を長とする国際組織犯罪等対策推進本部を設置した。
 同本部では,1)不法入国・不法滞在,2)ピッキング用具使用の組織的窃盗,3)自動車の盗難と盗難自動車の不正輸出,4)偽造・変造クレジットカード等の課題に積極的に取り組み,警察からは,国家公安委員会委員長が副本部長としてこれに参画することにより,同本部における検討をリードし,その決定事項の実現に努力した。
 特に,自動車盗難及び盗難自動車の不正輸出防止対策については,警察庁が中心的な役割を果たしており,同年9月,同本部の決定(注)に基づき,関係省庁,関係団体等の参画を得て設置された「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」において,自動車盗難防止対策,自動車盗難事件に対する取締り,盗難自動車の不正輸出防止対策等を推進している。


(注)「国際組織犯罪等対策に係る今後の取組みについて」(13年8月,国際組織犯罪等対策推進本部決定)

 また,捜査現場等でも横断的な組織犯罪への取組みが行われており,例えば,警察及び海上保安庁では14年中に検挙した集団密航事件合計25件のうち,11件の事件で合同捜査を実施したほか,中国,韓国等の関係国取締機関との情報交換や共同摘発を推進している。

事例1
 13年10月,警視庁及び海上保安庁は,神奈川県川崎港から密入国しようとした密航者6人(イラン人3人,バングラデシュ人3人)及び収受者等11人(中国人7人,バングラデシュ人4人)の計17人(以上警察)並びに韓国人船員11人(海上保安庁)を入管法違反で逮捕した。その後,在韓国・釜山の密航請負組織に関する情報をICPOルートで提供し,14年1月,韓国釜山地方警察庁が密航請負組織の韓国人ら7人を韓国の出入国管理に関する法律違反で逮捕した。

事例2
 14年5月31日から6月30日までの間に開催された2002年ワールドカップサッカー大会に際し,警察庁は,フーリガン等(安全対策上問題となる者)の入国を阻止するため,外国治安機関から派遣されたリエゾン・オフィサーを通じて収集した情報等に基づき,フーリガン等の情報を入国管理局に提供した。この結果,入国管理局では,大会に関連して65人の上陸を拒否した。

事例3
 14年12月,税関から「晴海埠(ふ)頭に接岸した貨物船から多数の外国人が上陸し,保冷車に乗り込み逃走した」との通報を受けた結果,都内中央区において,荷台に潜伏していた中国人密航者51人(男41人,女10人)を入管法違反(旅券不携帯等)で検挙,当該車両を運転していた日本人1人,普通乗用車で先導した中国人1人,その後の捜査で判明した中国人2人を同法違反(営利目的の収受・輸送の罪等)で検挙した。さらに,海上保安庁との情報交換により,同庁も本件に関連して中国人船員8人を同法違反(営利目的の輸送・上陸の罪等)で検挙した(警視庁)。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む