第1章 組織犯罪との闘い 

(2)暴力団対策法の制定と警察庁暴力団対策部の設置

 他方,平成元年頃から,我が国最大の犯罪組織である暴力団が急速に寡占化し,これによって増大した暴力団組織の威力を背景とした民事介入暴力が横行し,また,頻繁に暴力団による対立抗争が発生したため,暴力団が市民に与える脅威は,日増しに増大し,抜本的な暴力団対策立法を望む声が大きくなった。
 このような状況を背景として,3年5月,暴力団対策法が制定され,4年3月から施行された。
 暴力団対策法は,その構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい団体を,都道府県公安委員会が,指定暴力団として指定することとし,指定暴力団の構成員が,民事介入暴力の典型的な形態として法に定める行為を行うことを規制するとともに,指定暴力団相互間の対立抗争に際しては,その事務所の使用を制限する行政的な仕組みを構築することなどを柱とする法律で,施行後の運用により,民事介入暴力事犯の防止や対立抗争の抑止等の成果をあげた。
 また,警察庁では,暴力団犯罪の取締り,暴力団対策法の運用,暴力団排除運動の推進を三本柱とする暴力団総合対策を強力かつ有機的に推進するための体制を整備するため,4年,刑事局に暴力団対策部を設置した。
 警察庁暴力団対策部では,暴力団の壊滅に向けた諸対策を強力に推進するとともに,暴力団情勢に応じて,暴力団対策法の改正を検討し,5年及び9年にそれぞれ暴力団対策法が改正された。
 5年の改正では,暴力団からの離脱を阻害する不当な行為を規制し,暴力団への加入の強要等の行為に関する規制を強化するとともに,暴力団員の暴力団からの離脱と社会復帰を促進するために公安委員会が行う措置についての規定等が整備された。
 9年の改正では,指定暴力団の業務等に関し行われる暴力的要求行為の防止,準暴力的要求行為の規制,指定暴力団員の集団相互間の対立抗争時における事務所の使用制限等に関する規定等が整備された。

 

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