第1章 組織犯罪との闘い 

(5)総括

 多くの事件で,来日外国人側の首謀者が国外逃亡中であること,また,暴力団員と来日外国人が共犯関係を構築するに至る経緯については,裏付けのとれない供述が大半であることなどから,暴力団員と来日外国人がどのような経緯で共犯関係を構築したか,またその前提としてどのような接点を有しているのかは,解明されていない部分があり,今後は,この点の解明が望まれるが,全体として,暴力団員と来日外国人との犯罪における関係は,かなりの程度密接になっていることがうかがわれる。
 その形態として,次のようなものに大別できる。
 1)犯行の背後には,蛇頭,ロシア人犯罪組織等の外国に本拠をおく大規模な国際犯罪組織の組織的な関与が認められ,これに我が国の暴力団員が従たる役割で加功している形態
 2)犯行の背後には,暴力団の二次組織,三次組織等の組織的な関与がみられ,複数の来日外国人が集団的にこれに加功している形態
 3)暴力団員が犯行を計画・主導し,複数の外国人がこれに加功しているものの,その背後には暴力団又は国際犯罪組織の組織的な関与は認められないもの
 今後は,1)の形態の犯罪において,暴力団が組織的に関与するようになり,また,2)の形態の犯罪において,来日外国人グループの組織化が一層進展するなどにより,この種の犯罪の組織化が一層進展することが懸念され,一部では,既にその傾向が見受けられる。また,暴力団と国際犯罪組織の関係がより緊密になり,組織化が進展すれば,必然的に両者に対立が生じることも懸念される。暴力団と国際犯罪組織が,連携を強める一方で,対立が激化すれば,我が国の治安に多大な悪影響が生じることが懸念される。

 

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