第1章 組織犯罪との闘い 

キ 来日外国人犯罪の温床となる不法入国・不法滞在

 14年中の来日外国人の総検挙人員に占める不法滞在者の割合は51.9%である(図1-12)。

 
図1-12 来日外国人検挙人員に占める不法滞在者の推移

図1-12 来日外国人検挙人員に占める不法滞在者の推移
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 来日外国人の刑法犯検挙人員に占める不法滞在者の割合は18.2%であるが,そのうち凶悪犯については39.9%と高い割合となっている。
 また,来日外国人の特別法犯検挙人員に占める不法滞在者の割合は82.3%を占めている。このうち出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反の検挙人員を除いた場合における不法滞在者の割合は34.5%となっている。
 最近では,偽変造旅券等の文書犯罪や偽装結婚等の不法入国・不法滞在を助長する犯罪も多く認められるなど,不法入国・不法滞在に関する犯罪の手口は多様化・巧妙化しているほか,組織化,地方拡散化の傾向を一層強めている。

事例
 14年6月ころから,3府県警察が偽造外国人登録証明書の使用事件をそれぞれに捜査した結果,偽造外国人登録証明書や偽造中国旅券が全国的に拡散していたことが判明したことから,3府県警察で合同捜査本部を設置して捜査を進めた。その結果,14年9月に東京都中野区内,11月に葛飾区内の外国人登録証明書等偽造工場等を摘発し,作成中の偽造外国人登録証明書及び偽造中国旅券のほか,パソコン,スキャナー等約1,200点を押収するとともに,10月までに,有印公文書偽造等により偽造グループ及び関係者の中国人の男7人及び女1人を逮捕した。
 同グループは,20都道府県に居住する就労資格のない中国人らを中心とした15か国の外国人に対し,偽造外国人登録証明書等の偽造した身分証明書を提供し,8,500万円の利益を挙げていた。
 本件は偽変造防止対策を施し新様式となった中国旅券の偽造が摘発された初のケースであり,偽造組織の高い偽造能力が明らかになったほか,口コミで広まった客に対してのみ携帯電話を用いて取引を敢行するなど,悪質性・巧妙性が目立った犯行であった(大阪,山口,愛媛)。

 

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