第3節 警察活動のささえ

我が国の警察組織
(1)国の警察組織
(2)都道府県の警察組織
(3)国の警察機関と都道府県の警察機関の関係
○ 都道府県警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、犯罪捜査や交通取締り等を行う。
○ 警察庁は、警察制度に係る企画立案、国の公安に係る警察運営、警察教養、警察通信、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項、警察行政に関する調整等を行う。
○ 警察庁長官は、警察庁の所掌事務について、国家公安委員会の管理の下に、都道府県警察を指揮監督する。
○ 大規模災害等に際して内閣総理大臣から緊急事態の布告が発せられたときは、警察庁長官は、警視総監及び道府県警察本部長に対し、必要な命令、指揮を行う。

管区警察局の活動状況
(1)管区警察局の役割
○ 管区警察局は、警察庁の事務を地域を分けて分掌する。
○ 東北管区警察局から、九州管区警察局まで7管区が設置されている(ただし、北海道及び東京都は、管区警察局の管轄区域外である。)。
○ 管区警察局は、広域的対応を必要とする警察事象その他の国の公安に係る警察事象に関する警察事象についての調整、情報通信基盤の高度化、サイバーテロへの対応、監察や教育訓練等の業務について、主体的な役割を果たしている。
○ 13年4月、監察体制の強化及び広域調整機能の強化のため、総務監察部(関東管区警察局にあっては監察部)及び広域調整部が設置された。
(2)具体的活動状況
[事例1] 平成13年11月、東北管区警察局及び管区内各県警察本部(外事・生活安全部門)は、仙台市において、法務省(仙台地方検察庁、仙台入国管理局)及び東北6県内の厚生労働省(労働局等)の実務担当者による「第10回不法就労等外国人労働者問題東北地区協議会」を開催した。同会議では、各機関から不法就労等外国人労働問題に関する事例発表、意見交換が行われるとともに、関係機関相互の継続的な連携を図ることを確認した。
[事例2] 13年中、関東管区警察局は、警察用航空機の広域運用に係る実務上の諸問題について実務担当者による協議を行い、円滑な支援に資するとともに、航空機運航上の情報交換を行うことを目的とした連絡会議を2回開催した。
・ 第1回目
13年2月に新潟県において、関東・東北・中部管区の6県参加
・ 第2回目
13年6月に山梨県において、関東管区内5県参加
[事例3] 13年中、中部管区警察局は、首席監察官以下3人の監察官及び監察課長以下17人の体制で、管区内各県警察及び局内に対する監察を、延べ117回実施した。
監察項目は、全国統一項目の他に管区独自項目として、
・ 地域警察官の執行力強化方策の推進状況
・ 殉職・受傷事故防止対策の推進状況
・ 発生事案に対する再発防止方策の徹底状況
等を設定し、総合監察は計画的に、また、随時監察はタイミング良く実施することにより、不祥事案の未然防止と業務の合理化・適正化を推進した。
[事例4] 近畿管区警察局は、管区内における交通事故死者の抑止目標を1,119人に設定し、
・ 管区内交通部長会議の開催
・ 管区内交通死亡事故抑止対策会議の開催
・ 管区内一斉交通指導取締りの実施
・ 各府県警察本部への督励巡視の実施
等により、各府県の共通認識の醸成と交通死亡事故抑止対策を推進した結果、抑止目標の達成には至らなかったものの、交通事故死者を1,159人までに抑止することができ、管区内では、昭和35年の道路交通法施行以降最少を記録した。
[事例5] 中国管区警察局では、「サイバーセキュリティマネジメント実践研究会」に講師又はオブザーバーとして出席して、管区内の重要インフラ企業等に対し、セキュリティ対策、サイバーテロ対策等について説明した。また、官民一体となった取組みの必要性等を訴え、ウイルス等の被害拡大防止等のための情報提供ネットワークを構築した。
[事例6] 四国管区警察局は、管区内最大の覚せい剤密売組織である指定暴力団三代目侠道会傘下I組を壊滅させるため、四国4県警察の捜査担当者を集めて合同捜査会議を開催し、捜査体制、捜査方針、具体的な捜査要領について指導調整に努め、13年10月、4県警察が合同して一斉摘発に乗り出し、同組幹部ら多数を検挙し、同密売組織を壊滅させた。
[事例7] 九州管区警察局は、5月24日に開催された佐賀県総合防災訓練に福岡県警察広域緊急援助隊を、また5月25日に開催された福岡県総合防災訓練に佐賀県警察広域緊急援助隊を派遣。他管区に対しては、9月1日「防災の日」における国の総合防災訓練(神奈川県下)に福岡県警察広域緊急援助隊を、9月13日の四国管区広域緊急援助隊合同訓練に福岡県警察広域緊急援助隊をそれぞれ派遣した。

警察の体制
(1)定員
 平成14年度の警察職員の定員は、総数27万4,317人で、その内訳は、次のとおりである。
(2)採用への総合的取組み
○ 平成13年度の警察官採用試験の受験者数 …… 約15万9,300人
合格者数 …… 約1万3,200人(うち大卒者数 約9,300人)
競争倍率 …… 約12倍
○ インターネットの活用、採用説明会の実施、学校訪問等の募集活動
○ 福利・厚生の充実等による魅力ある職場づくり
○ 人物重視の採用方法
○ 国際組織犯罪、サイバーテロ等の新たな治安事象に対応するための専門知識、技能を有する者の中途採用
(3)女性警察職員
 女性警察職員の採用については、男女共同参画社会の基本理念や男女雇用機会均等法の趣旨等を踏まえ、従来から積極的な取組みを行ってきたところであり、平成14年4月1日現在、全国の都道府県警察には、警察官約9,400人、一般職員約1万2,200人の女性が勤務している。
女性警察官の活躍
○ 職域の拡大
 情報分析、ヘリコプター操縦、犯罪捜査、暴力団対策、警衛・警護、レスキュー等幅広い分野で活躍
○ 上位階級への登用
 個人の能力と適性に基づく公平な昇任制度により、警視・警部等の上位幹部への登用を推進
○ 女性の能力や特性の効果的な活用
・ ストーカー事案、家庭内暴力、児童虐待等の新たな治安上の課題への取組み
・ 性犯罪等に係る被害者対策の充実
職場環境の整備
○ 女性警察職員の働きやすい職場環境づくり
・ 更衣室や休憩室等の施設面の整備
・「ベビーシッター制度」等の導入の促進
(4)勤務形態
 警察では、その責務を果たすため、24時間警戒態勢を確保している。そこで、交番勤務等を行う地域警察官を始め、全警察官のおおむね4割は、交替制勤務で3日ないし4日に1度の夜間勤務を行っている。交替制勤務以外でも、警察署に勤務する警察官の多くは、1週間に1度程度の割合で夜間勤務に従事している。また、近年の複雑、多様化する警察事象の中、犯罪捜査を始め、事件、事故及び災害への対応等のため、勤務時間外に長時間にわたり困難な業務に当たることが多い。
 このような警察職員の勤務の特殊性にかんがみ、これまで、駐在所勤務員の複数化、交番等の勤務環境の改善、階級別定数の見直し、巡査長制度の見直し、完全週休二日制導入に伴う勤務制度の改善、年次休暇の計画的取得の促進、超過勤務手当等の給与の改善等を図ってきたが、今後とも職員の待遇改善を積極的に推進することとしている。

教育訓練と職務執行
(1)教育訓練
 警察官には、逮捕、武器使用等の実力行使の権限が与えられており、また、自らの判断と責任で緊急に事案を処理しなければならない場合も多いことから、適正に職務を執行するための良識と高度な実務能力が必要とされる。このため、警察では、警察学校と職場において、あらゆる機会を通じて、「職務倫理の基本」を中心とする職務倫理に関する教育を最重点として実施しているほか、プロとしての実務能力と資質の向上に努めている。また、柔道、剣道、逮捕術、けん銃等の術科訓練においては、凶悪犯罪の増加、不法滞在外国人等による組織犯罪の多発など、悪化する最近の犯罪情勢にかんがみ、現場に即した制圧訓練、実戦的なけん銃訓練の充実強化を図っている。
◇警察学校における教育訓練~教育対象者の階級及び職に応じた教育訓練の実施
○ 採用時の教育訓練…………新たに採用された警察職員に対し、人間性をかん養し、警察官として必要な基礎的知識や技能を習得させるための教育訓練
○ 昇任時の教育訓練…………各階級に昇任した警察職員に対し、幹部としてそれぞれの階級及び職に必要な知識と技能を習得させるための教育訓練
○ 専門分野に関する教育訓練…特定の分野に関して高度の専門的な知識と技能を習得させるための各種の教育訓練
 これら教育訓練の効果を高めるため、ゼミ方式授業や部外講師による講義等の充実を図るとともに、各警察学校が連携するなどして、教授内容、教授方法等に関して必要な調査・研究を推進している。
◇職場における教育訓練~警察職員個々の能力、職務内容に応じた教育訓練の実施
 職場においては、警察職員の能力開発の基本的な手法として、上司等による日常の勤務を通じての個人指導を始め、各種の研修会・講習会の開催、小集団活動(グループ討議等)の推進等の教育訓練を積極的に行うとともに、各種資格取得奨励制度等の自己啓発を支援するシステムの拡充に努めている。特に、大量退職・大量採用時代の到来に備え、極めて卓越した専門的技能や知識を有する職員を「警察庁指定広域技能指導官」に指定し、職員に対する専門的な実務指導に当たらせるなどして、伝承教育に力を入れている。また、国際化に的確に対応するため、職員を外国の語学学校や警察機関等に派遣し、語学力と実務能力の向上を図っている。
 このほか、市民の立場に立ち親切に職務を行うため、民間企業への派遣研修、部外講師による応接マナー講習会、応接指導者研修等を行っている。
(2)警察の殉職・受傷等
 警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして職に殉じることや受傷する場合がある。平成13年においては、刃物を所持した不審者を制圧しようとした警察官が、刺されて殉職する事案、高速道路での事故処理中に、事故現場の発見が遅れ飛び込んできた車にはねられ、警察官1人が殉職し、2人が受傷する事案等が発生した。
 このように、殉職した警察官や受傷した警察官又はその家族に対しては、公務災害補償制度による公的補償のほか、警察関係厚生団体による子弟に対する奨学金の支給等、各種の措置がとられている。また、危険な状況下での警察官の果敢な職務執行をたたえるものとして賞じゅつ金の支給等の措置がとられている。
 なお、市民が警察官の協力要請に応じて警察官の職務遂行に協力援助したり、社会公共のため、現行犯人の逮捕や人命救助を行うなど、警察官の職務に協力援助して、負傷し、疾病にかかり、障害を負い、又は死亡した場合にも、本人やその家族の生活の安定を図るため、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律に基づき、国又は都道府県が救済を行っている。
(3)けん銃の適正かつ的確な使用
けん銃使用の在り方について
【社会的背景】
● 国民の生命、身体に危害を及ぼす凶悪犯罪の増加
● 職務執行を行う警察官の殉職・受傷の危険性増大
【課題】けん銃は最後の手段との意識が強い
過度に抑制的な意識を払しょくする必要性
【対策】
● けん銃規範の見直し
・ 警棒等の使用をけん銃の使用に対して一律に優先する規定を削除
・ けん銃の使用の判断基準等の明確化等
● けん銃の使用に係る訓練の充実強化
けん銃を使用すべき場合に適正かつ的確に使用
【効果】
● 凶悪化する犯罪への的確な対処
● 国民の生命、身体等の防護
● 警察官の殉職及び受傷事故防止
● 凶悪犯罪の抑止

警察装備
(1)機動装備隊の活動
 機動装備隊は、事件、事故及び災害が発生したときに、現場における装備面からの支援を充実・強化する目的で各都道府県警察において編成されている警察装備に関する特別部隊である。
 日常的には、装備品を維持・管理し、その操作方法の指導、各種装備品に関する部門間の調整等を任務としている。
 また、事件、事故等に際しては、必要な装備品を現場に搬送して操作するなどの各種支援活動に取り組んでいる。
(2)車両、船舶、航空機
①車両
 警察用車両は、パトカー、白バイ等の各種活動用車両が全国に約3万5,000台整備されている。
 平成13年度は、薬物犯罪対策、ワールドカップ対策、テロ対策のための車両及び交通安全対策用等の車両を増強した。
 今後も、警察事象の広域化、複雑化等に的確に対応して、国民の負託にこたえていくため、警察機動力のかなめである警察用車両の整備・充実を一層図っていく必要がある。
②船舶
 警察用船舶は、全長5メートルから23メートル級のものが全国に約200隻あり、港湾、離島、湖沼等に配備され、多様化する水上レジャーの安全指導、水難救助、けん銃、覚せい剤等の密輸事犯の取締り等の水上警察活動に活用されている。(第3章第1節「事件、事故等に即応するための諸活動」参照。)
 今後の警察用船舶の整備に当たっては、水上警察事象の広域化、高速化に対応するため、大型化、高速化、高性能化を更に図っていく必要がある。
③航空機
 警察用航空機は、すべてヘリコプターで、昭和35年より配備を始め、全国で約80機運航している。(第3章第1節「事件、事故等に即応するための諸活動」参照。)
 警察用航空機は、空からのパトロール、犯人の捜索や追跡等の捜査活動、交通指導取締り、災害時等の救難救助や情報収集等警察活動全般にわたる幅広い分野で活動している。
 今後とも、災害対策を含む警察活動全般をより効果的に遂行するため、引き続き警察用航空機の整備・充実を図っていく必要がある。
(3)警察装備の開発改善・整備
 警察では、警察活動の基盤となる装備品について、最先端科学技術の導入などによる開発改善を進め、警察業務の効率化と高度化を図っている。
 平成13年度は、けん銃や刃物を使用した凶悪事件に対処するための装備品等の開発改善に努めた。また、ワールドカップ対策用装備品及びコンピュータネットワークを利用したハイテク犯罪に対応するための装備品を整備したほか、米国内同時多発テロ事件の発生に伴い、テロ対策用装備品を整備した。

警察活動と情報通信
(1)危機管理を支える警察情報通信
 警察では、事件、事故及び災害がどこでどのような形態で発生したとしても、即座に対応できるように、警察の神経系統である各種情報通信システムを独自に開発し、全国的整備を行うとともに、システムの高度化に努めている(主要な警察の情報通信システムは、表10-4参照)。
 また、各都道府県単位に国の機関である通信部を設置し、各種情報通信システムの間断ない管理・運営を行っている。管区警察局には情報通信部を設置して、広域・重大事案発生時の通信施設の運用等に関する指導調整等の業務を行っている。
 警察の情報通信基盤は、自営の無線多重回線、衛星通信回線及び電気通信事業者から借り上げた専用回線等により構成されており、これらを活用して、警察庁から警察本部はもちろん、第一線の警察署や交番に及ぶ全国的な各種ネットワークを構築し、警察業務を遂行する上で不可欠な情報伝達を行っている。
(2)大規模災害に対して強じんな警察情報通信
 警察では、大規模災害発生時等には、警察業務のための通信需要が急増する箇所に必要となる通信回線を割り当て、被災地付近の無線不感地帯に対する臨時の無線中継所を設置し、警察用航空機(ヘリコプター)等からの被災地の映像を指揮担当部署へ伝送するなど、警察独自の情報通信システムを適宜柔軟に活用している。
 また、全国に警察通信職員を配置し、迅速な災害対応のための体制を確立している。
(3)機動警察通信隊の活動
 大規模な災害、事故、事件等が発生した際に、現場の警察官と警察本部との間における連絡や指揮命令が円滑に行われるように、各都道府県の通信部に設置された機動警察通信隊が出動して、応急通信回線を確保している。
 機動警察通信隊は、平成14年2月の米国大統領来日に伴う警護警備の際、13年9月に発生した米国同時多発テロ事件を受け、イスラム過激派によるテロ等が予想されたことから、臨時の無線中継所の開設や臨時電話の設置、警護警備実施状況を把握するための映像回線の設置等を行った。
 また、どのような事案においても臨機応変に対応ができるようにするため、悪条件や実際の事案を想定した実践的訓練を行っている。
(4)広域事件捜査における警察情報通信
 被疑者が頻繁に移動するような広域事件の場合は、捜査活動の範囲も広域にわたることとなる。
 このため、警察では、WIDE通信システムや自動車ナンバー自動読取システム(第1章第3節1(2)ア(ア)参照)を導入し、広域事件捜査の効率化に努めている。
(5)市民生活を守る警察情報通信
 市民生活を守る警察活動を迅速かつ的確に行うためには、市民からの通報をいち早く正確に第一線の警察官へ伝達し、また、警察官相互間の情報交換が円滑に行われることが必要である。このため、警察では、通信指令システムやその支援システムの高度化を図っているほか、第一線の警察官が使用する無線機等の整備拡充に努めている。

警察事務の情報化
 警察においては、警察事務の情報化を総合的・計画的に推進しているところであり、平成10年5月には、10年度を初年度とした五箇年計画として「警察行政情報化推進計画」を策定し、警察内部における各種情報の共有化を一層推進することとしている。この計画に基づき、業務の効率化、合理化及び市民サービスの向上に努めているほか、ホームページ等による行政情報の電子的提供を推進している。
(1)コンピュータ・ネットワークによる情報共有化の推進
 警察においては、犯罪捜査、運転者管理等多方面にわたる各種業務の効率的遂行を支えるため、全国的なコンピュータ・ネットワークを構築し情報の共有化を推進している。
(2)犯罪捜査のための照会業務の効率化
 各都道府県警察から手配されたデータを警察庁のコンピュータで管理し、第一線の警察官からの照会に対して回答する業務を24時間体制で運用している。
 各都道府県警察が被疑者写真、犯罪手口原紙等の画像情報を警察庁のコンピュータに登録し、各都道府県警察から検索できるようにしている。
 被疑者の指紋や掌紋を登録することにより、犯罪現場に残された遺留指紋や遺留掌紋と照合等を行うことができる。
(3)運転免許等に関する業務の効率化
 運転免許証の迅速な交付、運転免許証の二重取得の防止等を図るため、運転免許保有者に関するデータ及び交通違反に関するデータを警察庁のコンピュータで管理することにより、運転免許の取消し、停止等の行政処分の業務の効率化を図っている。平成13年度末現在、日本での運転免許保有者数は、約7,600万人である。
 警察署においても遺失・拾得物の受理、遺失者への返還等の窓口業務や自転車防犯登録業務等に必要な範囲でコンピュータを活用し、市民の利便性の向上を図っている。
(4)行政情報の電子的提供
 警察では、「国家公安委員会及び警察庁における行政情報の電子的提供の推進に関する実施方針」を策定し、ホームページ等により行政情報を提供している。
 国家公安委員会ホームページ:http://www.npsc.go.jp
 警察庁ホームページ:http://www.npa.go.jp
(5)行政手続等の電子化
 警察機関が行う行政手続等について、従来からの書面による手続に加えてインターネット等を用いたオンラインによる手続も可能とするため、「国の警察機関が行う行政手続等の電子化推進に関するアクション・プラン」及び「都道府県の警察機関が行う行政手続等の電子化推進に関するアクション・プラン」に基づき、オンライン化を推進している。
(6)情報セキュリティ対策の推進
 警察では、昨今の情報通信技術の急速な進歩に伴いインターネット等外部のネットワークとの接続を始めとするネットワーク化が進み、情報セキュリティの重要性が高まっている。そこで、「情報セキュリティポリシー」を策定するなど、警察における情報セキュリティ対策を推進している。
コラム
ハイテク犯罪捜査支援
 警察庁技術センターでは、次のような資機材を用いて犯罪捜査を技術的に支援している。
疑似インターネット設備
 様々な種類のコンピュータ、OSを有しており、ハイテク犯罪の被害サイトと同様のネットワークを構築することが可能である。本設備により、ハイテク犯罪に用いられた手口の解析、進入経路の特定等を行っている。
クリーンルーム
 ハードディスクが破損している場合でも、部品を移植すれば、データの一部を読み出すことが可能となる。部品の移植作業に必要な極めて清浄な環境(1立方フィート中0.5μm以上の塵埃が100個以下)を持つクリーンルームを技術センターに備えている。
コンピュータ・ウイルス検証環境
 近年頻発しているコンピュータ・ウイルスの動作を把握するため、各種OSを揃えたネットワークを構成し、ウイルスによる被害、感染経路、OS等の差違による感染状況の差違等を検証し、ウイルスに対する注意喚起を行っている。

シンクタンクの活動
(1)警察政策研究センターにおける活動
 警察政策研究センターでは、警察が現在直面する課題や将来生じ得る治安かく乱要因に関する調査研究を進めるとともに、警察と研究者等有識者との交流の窓口として活動している。
 平成13年には、(財)公共政策調査会及び(財)全国防犯協会連合会との共催による米国の少年犯罪対策に関するフォーラムや、中央大学総合政策学部及び全国暴力追放運動推進センター等との共催による米国の組織犯罪対策に関するフォーラムなど、各種テーマに関するフォーラムの開催等を行った。
[活動例1] 13年4月、米国の実務家(判事)及び国内の学者を招き、米国の少年犯罪対策をテーマにフォーラムを開催した。同フォーラムでは、まず、米国の実務家から、同国における少年犯罪の現状、歴史、原因、及び各種施策や将来の課題について講演が行われ、次に、国内の研究者から、日米の少年犯罪情勢及び少年司法制度を対比しつつ、我が国における改正少年法の運用上の課題について講演が行われた。
[活動例2] 13年9月、米国の実務家(捜査官及び検察官)及び国内の研究者を招き、米国の組織犯罪対策をテーマにフォーラムを開催した。同フォーラムでは、まず、米国における組織犯罪に対する捜査手法や司法制度等について、同国の捜査官と検察官の異なる立場から講演が行われ、次に、国内の研究者から、我が国の組織犯罪の現状及び対策、今後の課題等について講演が行われた。
(2)警察情報通信研究センターにおける活動
 警察情報通信研究センターでは、情報通信システムに関する技術、暗号技術等、警察活動にかかわる情報通信技術について研究し、これらを応用した新しい警察通信機器等の開発や捜査活動等の支援を行っている。さらに、急速に進展する高度情報通信社会に対応するため、ハイテク犯罪の技術的な研究を行うなど、研究活動の充実に努めている。
[研究例1] パトカー等に搭載している無線機の通信品質の向上を図るため、基地局アンテナの偏波面に対する特性の検討を行い、偏波ダイバーシチアンテナの開発及びセラミックを用いた小型アンテナの開発に関する研究を行った。
[研究例2] 捜査活動上必要とされる情報を高速かつ効率的に得るための電磁的記録解析ソフトウェアの開発を行った。
(3)科学警察研究所の活動
 科学警察研究所では、事件・事故の原因や証拠を科学的に解明するための研究及びこれを用いた捜査支援、さらに各種社会問題の背景を分析して、これに基づいて政策提言を行うなどの活動を行っている(このほか科学警察研究所の活動については、第1章第3節1(2)参照)。
[研究例1] 血液型判定用抗血清であるヒト由来ポリクローナル抗体が製造中止となり、新たに、市販のマウスモノクローナル抗体を用いた血痕や体液斑からの血液型検出法の開発が必要とされた。そこで、血痕や体液斑から血液型判定可能なモノクローナル抗体の選別並びに解離試験及び混合凝集反応(MCAR)等の検査法の改良について、都道府県警察の科学警察研究所と共同研究を行い、同時に「モノクローナル抗体の法医血液型鑑定への導入-その問題点と対応策-」についてシンポジウムを開催し、研究成果の普及に努めた。
[研究例2] 犯罪の立証や映像編集の有無の検出等を目的として、カメラに搭載されている撮像素子の電気特性のばらつきを利用することにより、録画された映像と撮影を行ったビデオカメラの個体照合法を開発した。また、デジタルカメラについても同様な手法の可能性を見いだし、実際の映像について実験を試みている。撮影条件と識別精度の関連についても研究を行なっている。
[研究例3] 化学兵器、生物兵器を用いたテロ事件への対処における、原因物質の検知・特定化に関して研究を行っている。これまでに、ガスクロマトグラフィー-質量分析計を用いた、化学兵器用剤及び分解物の迅速・高感度な検出・特定化法を確立した。また、化学剤現場探知資機材である検知紙、検知管、化学剤検知器について、サリン、VX、マスタードガス、青酸ガス等に対する検出性能、誤作動の可能性、操作性を評価し、現場探知の有用性を検証した。さらに、生物剤の現場探知資機材の評価、簡易検査法の開発、機器分析を用いた生物剤の特定化法の開発に取り組んでいる。
[研究例4] 犯罪の地理的分布とそれに影響する都市環境に関するデータとを地理情報システム(GIS)上で統合し、犯罪多発地点を検出するとともに犯罪発生に影響する地区特性を明らかにするための研究を行っている。東京23区内で過去5年間に発生した刑法犯の分析の結果、ひったくりや車上ねらいなどが、近年、都心部から東部・南部の周縁地域へと拡散してきたこと、暴行・傷害は一貫して鉄道の駅周辺に強く集中していることなどが明らかになった。本研究をさらに進めることにより、犯罪多発地区で重点的な防犯活動を実施するなど、客観的なデータに基づく効果的で効率的な防犯対策の推進に貢献することが期待されている。
[研究例5] 運転者の視覚機能と加齢との関係や、運転者の危険認知と運転経験との関係について研究を行っている。運転免許の更新時講習参加者(一般運転者)と免許停止処分者講習参加者(事故・違反運転者)の静止視力と動体視力を調べた結果、両視力は加齢に伴って低下すること、交通標識等を見落としたことによる事故・違反者は無事故・無違反者と比べて両視力が劣ることが示された。また、加齢の影響は、コントラスト視力やコントラスト感度にも現われていた。ビデオ映像を用いた危険認知に関する実験の結果、危険場面の再認成績には運転経験の差はみられなかったが、危険感受性に差が見られた。これらの研究成果は、高齢者講習等の運転者教育に活用されている。

警察の予算
(1)警察予算
・国の予算に計上される警察庁予算(国庫が支弁する都道府県警察に要する経費及び都道府県警察への補助金が含まれる。)
・各都道府県の予算に計上される都道府県警察予算
・ 平成13年度の国民一人当たりの警察予算額(警察庁予算と都道府県警察予算の合計額から重複する補助金額を控除し、国の人口で除した額)は、約2万9,000円
(2)警察庁予算(図10-9)
○ 平成13年度当初予算
・ 総額2,742億8,815万円で、国の一般歳出総額の0.6%を占め、前年度に比べて121億4,849万円(4.2%)減少
・ 重点措置内容
 情報セキュリティ政策の推進、安心して暮らせる空間確保策、重大テロ対策の強化、安全な交通環境実現のための交通安全対策の強化等
○ 13年度補正予算
・ 措置内容
第1号補正予算…緊急テロ対策、改革先行プログラム
第2号補正予算…改革推進公共投資特別措置
・ 第2号補正予算においては、この他、財務省所管産業投資特別会計社会資本整備勘定に、都道府県警察施設整備資金の貸付けに必要な経費を措置
(3)都道府県警察予算(図10-10)
○ 平成13年度最終補正後
・ 総額3兆4,463億6,400万円で、都道府県の予算総額の6.3%を占め、前年度に比べて106億8,600万円(0.3%)減少
・ 財政事情、犯罪情勢等を勘案しながら各都道府県において編成

留置業務の管理運営
 平成13年末現在、全国の留置場の設置数は1,290か所で、年間延べ約444万人(1日平均約1万2,000人)の被逮捕者、被勾留者等が留置されている。なお、年間延べ人員は、4年に比べ約2.1倍となっている。
 警察では、これまでも捜査と留置の分離の徹底を図りつつ、被留置者の人権に配慮した処遇及び施設の改善を推進してきたところであるが、11年6月、我が国が拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約)へ加盟したことを踏まえ、下記のような国際的にも評価される適正な留置業務の運営を更に徹底している。
○ 人権に配慮した処遇
・ 健康診断の実施(月2回)
・ ラジオ、日刊新聞紙の備付け、食事内容の改善
○ 外国人被留置者の処遇の適正
・ 洋式トイレやシャワー装置の設置
・ 母国語の音声と文字によって留置場における処遇等を教示できる機器の整備
○ 女性被留置者の処遇の適正
・ 女性の特性に十分配慮した処遇
・ 女性専用留置場の設置(処遇全般を女性警察官が実施)
○ 留置場施設の改善、整備
・ 留置室を横一列の「くし型」に配置し、前面にしゃへい板を設置
・ 留置室内トイレの構造の改善、留置場内の冷暖房化
 警察庁では、以上のような、留置業務の運用面、施設面での適正を確保しつつ、被留置者の処遇の全国的斉一を図るため、全国の留置場について計画的に巡回視察を実施している。


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