第2節 適切な職務執行の確保

適正な警察活動の確保
(1)監察
①警察における監察
 警察における監察は、能率的な運営及び規律の保持に資するために行われるものであり、警察庁及び都道府県警察が行う監察については、平成12年に国家公安委員会が制定した監察に関する規則により、警察庁長官、警視総監及び道府県警察本部長は、年度ごとに監察を実施するための計画を作成し、国家公安委員会又は都道府県公安委員会に報告するとともに、四半期ごとに少なくとも1回、その実施の状況をそれぞれ国家公安委員会又は都道府県公安委員会に報告することとされている。
 警察庁長官が作成した平成13年度監察実施計画では、全国統一の監察実施項目として、
・ 不祥事案対策の推進状況
・ 少年事件の適正捜査の推進状況
・ 改正警察法の施行状況(苦情処理及び警察署協議会について)
・ 告訴・告発事件に対する取組状況
・ 不祥事案対策の推進状況に関する監察における指摘事項の改善状況 等
を、管区警察局においても、管区警察局独自の監察実施項目として、
・ 職務倫理教養の推進と身上把握の徹底状況
・ 受傷事故防止対策の推進状況等
を定めている。
②公安委員会による監察の指示等
 平成12年の警察法改正により、公安委員会による警察の管理機能を強化させるため、国家公安委員会及び都道府県公安委員会の監察に関する指示等についての規定が設けられた。
 具体的には、国家公安委員会は警察庁に対して、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは、具体的又は個別的な指示をすること等ができることとされた。
[事例]平成13年7月、奈良県公安委員会は、奈良県警察において幹部職員を含む複数の警察職員が長期間にわたり私企業の関係者との間で違法・不当な関係を続けていたという不祥事が発生したため、本事案の問題点を踏まえ、人事管理、業務管理、身上把握及び倫理教養の諸事項について監察を行い、その結果を報告するよう奈良県警察に指示した。
(2)苦情の適正な処理
 国民と直接に接する第一線における問題点の集約とそれに対する必要な措置の実施及び警察職員の職務執行における責任の明確化のため、平成12年の警察法改正により苦情申出制度が創設され、13年6月1日から施行された。警察法に規定する苦情以外の苦情についても、本制度に準じた処理がなされている。

国民に開かれた警察を目指して
(1)情報公開
 国民の信頼を確保するためには、個人情報の保護や警察の任務の達成等との調和を図りながら積極的に情報公開を推進し、警察行政の透明性を高めることが重要である。
 国家公安委員会においては、委員会の詳細な開催状況をホームページに掲載しているほか、警察庁においては、平成12年11月に、「警察庁訓令・通達公表基準」を策定し、訓令及び施策を示す通達を原則公表することとし、これらをホームページに掲載している。また、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づく開示請求を行う場所に文書閲覧窓口を設置し、警察白書や各種統計、報道発表資料等の文書を一般の閲覧に供している。
 国家公安委員会及び警察庁においては、情報公開法に基づく開示請求に係る行政文書の開示・不開示の判断を適正に行うために、13年3月に、「国家公安委員会・警察庁における情報公開法審査基準」を策定し、4月の情報公開法施行後は、この審査基準に基づき、開示・不開示の決定を行っている。情報公開法施行から14年3月末までの1年間において、国家公安委員会及び警察庁(附属機関及び地方機関を含む。)に対し、それぞれ16件及び428件の開示請求が行われている。
 また、13年10月までにすべての都道府県において、警察を実施機関とするための情報公開条例の改正が行われ、14年4月までに43都道府県において施行されており、14年10月にはすべての都道府県において施行される予定である。
(2)政策評価
 平成13年1月の中央省庁等改革に伴い政策評価制度が導入されたことを受け、国家公安委員会及び警察庁は、13年3月、警察に関する政策を対象とした政策評価を体系的に継続して実施するための基本的事項を定めた国家公安委員会・警察庁における政策評価実施要領(以下「実施要領」という。)を策定した。この実施要領は、13年1月に新府省の下で新たに発足した政策評価各府省連絡会議において了承された政策評価に関する標準的ガイドラインを指針としつつ、国家公安委員会と警察庁の組織の特性や、警察に関する政策の特性を踏まえた内容となっている。また、この実施要領を踏まえ、警察庁は、13年4月、13年に実施する政策評価の概要を記載した平成13年政策評価運営方針を策定・公表し、これらに基づき政策評価を実施することとした。国家公安委員会及び警察庁における政策評価に関する情報については、インターネットの警察庁ホームページ(http://www.npa.go.jp)参照。
[平成13年中の政策評価実施状況]
○ 実績評価
・ 13年4月 実績評価計画書で8の基本目標と24の業績目標を設定し、同計画書を公表。
・ 14年3月 実績評価結果報告書で各業績目標の実現状況を公表。
○ 事業評価
・ 13年8月 警察庁予算の概算要求の重点事項とする政策について事前の事業評価を実施。
・ 13年10月 事業評価結果報告書でその結果を公表。
○ 総合評価
・ 13年12月 14年から評価の対象とする2の行政課題を選定。
○ その他
・ 13年10月、12月学識経験者等で構成される警察庁政策評価研究会を開催。
(3)警察署協議会
○ 平成12年11月の警察法改正により設置することが定められ、警察署協議会制度についての規定は13年6月に施行された。
○ 警察署協議会は、警察の事務処理に関し、警察署長の諮問に応じるとともに、警察署長に対して意見を述べる機関である。
○ 警察では、警察署長が警察署の業務運営の在り方について住民等の意見を聞いてこれを反映させるとともに、その実情等を住民等に説明しその理解と協力を得るという双方向性の運営、住民との間で率直に意見を交換する実質本意の運営を重視した警察署協議会の活動を促進している。
[事例] 群馬県大胡警察署協議会において「大胡駅前広場に少年が集まり、駅利用客や付近の人が迷惑しているが、少年の問題を解決するには、警察のみならず地域ぐるみの対策が必要である」との意見が提出され、大胡警察署は、大胡町に大胡駅前広場における少年問題対策等について対応を要請した。これを受けた大胡町は、警備会社やボランティア等により構成される「大胡町安全パトロール隊」を発足させた。この後、大胡駅周辺が少年のたまり場となることはなくなり、夕方に発生していた痴漢の減少にも効果が現れている。
(4)職務執行における責任の明確化
警察刷新に関する緊急提言
警察活動における「匿名性」を排除し、職責への個々人の自覚を促す方策
○ 識別章 日常的に住民と接する制服警察官は、職務執行に当たって著しい支障がある場合を除き、識別章を着ける。
○ 警察手帳 氏名や階級などが記載されたページを見せるよう徹底する。
警察改革要綱
○ 制服警察官の識別章の着装
○ 警察手帳の抜本的な形状変更
識別章(階級章一体型)
警察手帳(縦開き・バッジ型)
・ 階級、氏名等を記載した紙面をカード型の証票に変更
・ 記章(バッジ)を新たに作成
 氏名や階級が記載された証票が確実に呈示される形状に変更


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