第8章 災害、事故と警察活動

各種災害への対応
(1)広域緊急援助隊の活動
 警察では、大規模な自然災害、事故災害等の事案に対して、被災者の救出救助活動等を迅速かつ効果的に行うため、都道府県警察に広域緊急援助隊を設置している。
 平成13年中は、芸予地震を始め、台風等による風水害現場等に出動し、現地における警察部隊の中核として、情報収集、救出活動、避難誘導及び交通規制等の活動を行った。
 同部隊は、平素から、救出救助活動等の災害警備活動の練度の向上を図っているほか、広域的な派遣訓練等を実施するなど、災害発生時の緊急出動等に備えている。
(2)各種災害の発生状況と警察活動
①平成13年(2001年)芸予地震と警察活動
 平成13年3月24日午後3時27分、安芸灘の深さ46キロメートルの地点でマグニチュード6.7の地震が発生し、広島県の河内町、大崎町、熊野町で震度6弱を観測したほか、広島県、愛媛県、山口県の一部、島根県、高知県、大分県の一部で震度5強から5弱を観測した。
 震源地に近い広島県警察、愛媛県警察等では、地震発生後、直ちに災害警備本部を設置し、管内の被害情報の収集、避難誘導、交通規制等所要の災害警備活動を実施した。
 警察庁においても、災害警備本部を設置するとともに、関係管区警察局、関係都府県警察及び関係機関等との連絡体制を確立し、現場に広域緊急援助隊の派遣を指示するなどした。
②自然災害の発生状況と警察活動
 警察では、平素から災害危険箇所の点検等を行うとともに、災害の発生に際して、災害警備本部を設置して所要の体制を確立し、関係機関との情報交換に努めるとともに、現場に広域緊急援助隊を始めとする警察部隊、ヘリコプター等を派遣して情報の収集、救出救助・行方不明者の捜索、住民の避難誘導、交通規制等所要の災害警備活動を実施した。

各種事故と警察活動
(1)水難
 警察では、水難の発生しやすい危険な場所について
・ 遊泳者等への広報による注意喚起
・ 管理者等に対する施設の整備等の働き掛け
を行っている。
 特に人出の多い海水浴場では、臨時詰所の設置、海浜パトロール等を行うほか、船舶やヘリコプターによる監視等を通じて、海水浴客に対する広報、遭難者の早期発見、救出、救護に努めるとともに、関係機関・団体と協力して、救急法講習会や各種の救助訓練を実施している。
(2)山岳遭難
 警察では、遭難者の迅速な捜索、救助活動を行うため、
・ 山岳警備隊の編成
・ 各種訓練の実施
・ 救助用装備資機材の整備拡充
を行うなど、救助体制の強化に努めている。
 また、山岳遭難を防止するため、遭難の発生場所、原因等を分析し、関係機関等との遭難対策検討会を開催するとともに、各種広報媒体を活用して登山の安全に関する国民の意識の向上に努めている。
 特に、主要山岳(系)を管轄する都道府県警察においては、関係機関等と連携して、
・ ツアー登山関係企業等に対するツアー登山事故防止の申入れ
・ 登山道等の実地踏査、道標及び危険箇所の点検
・ 登山者への山岳情報の提供
等を行っている。
 また、登山口等に臨時詰所を開設し、
・ 登山計画書の提出の奨励
・ 装備の点検
等を行っているほか、山岳パトロール等の活動を通じて登山の安全に関する指導を行っている。
(3)レジャースポーツに伴う事故
 平成13年中の水上オートバイ、サーフィン等のレジャースポーツに伴う事故の発生件数は515件(前年比8件(1.5%)減)であった(表8-12)。
 レジャースポーツに係る事故の原因の主なものは、技術不足、不注意等であり、無謀操縦等を原因とするものも多いことから、警察では、
・ 事故の防止を呼び掛けるパンフレットの配布等による安全広報
・ レジャースポーツ現場におけるパトロール等を通じての指導取締り
・ 関係機関・団体に対する事故防止指導
等を推進している。
(4)雑踏警備
①一般雑踏警備活動
 警察では、行事の主催者、施設の管理者等に対して、
・ 事前連絡の徹底
・ 自主警備体制の強化
・ 危険予防の措置
・ 施設の改善
等を要請するとともに、警察部隊の投入が必要と判断される場合には、雑踏警備計画を作成し、混雑する場所等に警察官を配置して、雑踏事故の未然防止に努めている。
 13年7月、兵庫県明石市において多数の死傷者を伴う雑踏事故(注)が発生したことから、改めて雑踏事故の絶無を期すため、雑踏事故防止に関する基本の再徹底を図るとともに、
・ 雑踏警備実施指導官(警察本部)
・ 雑踏警備実施主任者(警察署)
を置き、雑踏事故防止に関する体制の確立に努めている。
(注) 13年7月21日、兵庫県明石市において明石市民夏まつり花火大会が開催された際、最寄り駅から会場への通路となった歩道橋南端付近において、会場に向かう観衆と帰宅しようとする観衆が極度に集中し、強度の群集圧力が生じて多数の人が折り重なって転倒し、死者11人、負傷者229人を伴う雑踏事故が発生した。
②公営競技場の警備活動
 13年中の公営競技をめぐる紛争事案の発生件数は29件で、その内容はレース結果及び競技運営についての抗議形態のものであった。
 警察では、関係機関・団体に対し、
・ 自主警備体制の確立
・ 施設・設備の改善
・ 酒類の販売等の自粛
を要請しているほか、競技開催の都度、警察官の派遣等により雑踏事故及び紛争事案の未然防止に努めている。


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