第3節 良好な風俗環境の保持

風俗営業の健全化と風俗環境の浄化
(1)風俗営業の状況
 警察では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
 また、平成13年には、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業(いわゆるテレホンクラブ)が新たに規制の対象とされることなどを内容とする風営適正化法の改正がなされ、14年4月に施行されたところであり、同法の適正な運用に努めている。
(2)風俗営業の健全化に向けた施策の推進
①風俗営業からの暴力団排除
 ぱちんこ営業等の風俗営業に対する暴力団の関与は、その営業の健全化を阻害する大きな要因となっているが、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の施行後、風俗営業者の間でも暴力団排除気運が盛り上がりを見せている。しかし、依然として、暴力団と関係を有する営業者がみられるほか、暴力団が関与する風俗関係事犯も後を絶たない。このため、警察では、暴力団が関与する事件の取締りを強化するとともに、風俗営業者の管理者講習や各種会合における暴力団排除講習等を行うなど、風俗営業者の自主的な暴力団排除活動を支援している。
②ぱちんこ営業の健全化
 ぱちんこ営業は、国民の身近で手軽な大衆娯楽となっているが、パソコンにより出玉を調整する遠隔操作事犯が大幅に増加しているほか、遊技機製造・流通業者が関与する遊技機の不正改造事案が多くみられるなど、依然として、健全化を阻害する要因は少なくない。このため、警察では、遊技機の不正改造事犯等の取締りを強化するとともに、関係団体による自主的な健全化のための活動を支援するなど、ぱちんこ営業の健全化を図っている。
(2)性風俗特殊営業等の状況
①性風俗特殊営業の状況
 平成13年中の性風俗特殊営業の状況をみると、11年から風営適正化法の規制対象になった無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗特殊営業は、13年中も大幅に増加し、11年末に比べて約3倍となっており、無店舗型ファッションヘルスは店舗型ファッションヘルスの約9倍となっている(表3-20)。
②深夜飲食店営業の状況
 13年中の深夜飲食店営業の状況をみると、12年と比べ、大幅な変化はなく、最近5年間をみてもほぼ横ばいで推移している(表3-21)。
(3)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
 平成13年の売春事犯の検挙人員に占める暴力団員の割合は25.1%(296人)であり、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。
 最近では、公衆電話ボックス等にいわゆるピンクビラをはり付けて売春を誘引する事犯や、客等との連絡に携帯電話、転送電話等を利用して売春をあっせんする派遣型売春事犯が目立っている。
[事例] 13年6月、公衆電話ボックス等にいわゆるピンクビラをはり付け、売春のあっせんをしていたデートクラブ経営者の女性(46)を売春防止法(周旋)違反で検挙した。その後の突き上げ捜査から暴力団組織がデートクラブ業者を管理して組合費、みかじめ料、ビラはり代金を徴収して資金源としていることが判明したため、暴力団員等3人を組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第11条(犯罪収益等収受)違反で検挙した(鹿児島)。
 わいせつ事犯について、最近では、インターネットを利用してわいせつな映像を公然と閲覧させる形態や、わいせつな画像情報を記憶させたCD-ROM等を販売するなどの形態の事犯が多発している(表3-23)。
 また、ゲーム機等を利用した賭博事犯では、トランプゲームやルーレット用の設備を設けて遊技をさせる「カジノバー」といわれる営業における賭博事犯が依然として多い(表3-24)。
(4)風俗環境の浄化活動
①風俗環境浄化協会の活動
 風俗環境浄化協会は、民間における環境浄化の気運を一層促進するため、
・ 風俗環境に関する苦情の処理
・ 風営適正化法に違反する行為を防止するための啓発活動
・ 少年指導委員の活動に対する援助等
・ 都道府県公安委員会の委託を受けての管理者講習(注)
等を行っている。
(注) 管理者講習とは、風俗営業の営業所ごとに選任された管理者を対象に、風営適正化法に規定する遵守事項や暴力団からみかじめ料等を要求された場合の対応要領等について指導を行う講習である。
②地域住民と連携した風俗環境浄化活動
 警察では、売春やわいせつビデオテープの販売等を目的として一般家庭にまで大量に配布されているいわゆるピンクビラの作成・配布に関与した者を取り締まるなど、悪質な風俗関係事犯の積極的な取締りを推進するとともに、地域住民や関係団体と協力して風俗環境の浄化に努めている。
[事例] 大国地区安全安心町づくりの会、少年を守る母の会等の地域住民により構成される民間団体と連携し、「大国地区環境クリーン総合対策本部」を発足させ、違法な店舗型性風俗特殊営業の乱立により、風俗環境が悪化している大阪府浪速区大国地区の環境浄化を推進した。
 同対策本部においては、賃貸マンションの居室を利用した店舗型性風俗特殊営業、いわゆるピンクビラのはり付け等を積極的に取り締まるとともに、違法風俗営業店排除キャンペーンを行った(大阪)。

環境犯罪への対応
(1)環境犯罪対策の推進
 警察では、環境を破壊する犯罪である「環境犯罪」の取締りを強化している。
 特に、産業廃棄物の不法投棄事犯、ダイオキシン等の有害廃棄物事犯、野焼きを伴う廃棄物事犯等を重点取締り対象として、組織的・計画的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導・命令を無視した事犯等を中心に、排出事業者の責任追及や原状回復を念頭に置いた取締りを推進している(図3-24)。
(2)最近の産業廃棄物不法投棄事犯の特徴
・ 車両ナンバーの隠ぺいや見張りを立てるなど悪質な工作
・ 「自社処分」、「保管」と称して廃棄物を大量に受け入れての不法投棄
・ 深夜、早朝にかけてのゲリラ的な山林部への不法投棄
[事例] 産業廃棄物業者(47歳)らは、平成13年5月から6月までの間、東北一円において、深夜、ゲリラ的に油圧ショベル等の重機を用いて多数の穴を地面に開け、大量の産業廃棄物を不法投棄した。9月までに、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で、同業者ら12人を検挙した(福島)。
(3)絶滅種等の野生動物に係る事犯の取締り
 警察では、生態系の破壊を防ぎ、動物を保護するための取締りを行っている。
[事例] 元ペットショップ経営者(36)は、インドネシアから、ワシントン条約で商取引が禁止されているシロビタイムジオウム8羽を密輸入しようとした。平成13年11月、関税法違反で同人を検挙した(大阪)。

危険物対策の推進
(1)高圧ガス、消防危険物、核物質等による事故等の状況
 平成13年には、事業所や一般家庭において、高圧ガス、消防危険物による事故が318件発生し、死傷者は、225人に上った。
 警察では、高圧ガス、消防危険物等による事故を防止するため、関係行政機関との連携を図り、取締りを行っている(表3-25)。
(2)放射性物質、特定物質等の安全対策の推進
 放射性物質、放射性同位元素及び化学兵器の原料となるような特定物質等の運搬に当たっては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律及び化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。平成13年中の届出件数は、核燃料物質等関係が783件、放射性同位元素等関係が1,129件であった。警察では、これらの物質の運搬の安全確保のため、使用者等に対して事前指導や必要な指示等を行っている。
[事例] 13年12月、国立病院において放射線発生装置の調整作業中、誤って作業員の身体に放射線を照射して被ばくさせた事件で、14年4月までに、同病院院長(62)等を放射線障害防止のために必要な事項の掲示、作業員に対する教育・訓練、帳簿の記載等業務上必要な注意を怠ったとして、放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律違反で検挙した(警視庁)。

正常な経済活動等の確保
(1)悪質商法による消費者被害対策の推進
 警察では、悪質商法による消費者被害の未然・拡大防止を図るため、都道府県警察に「悪質商法110番」等の相談窓口を設けて相談を受け付けている。
 また、最近の悪質商法の手口、発生状況、被害防止対策等について、各種の会合やインターネットのホームページ等あらゆる媒体を用いた広報啓発活動を推進している。
(2)悪質商法の現況と取締り
①資産形成事犯
 資産形成事犯の検挙では、景気の低迷や低金利を背景として、抵当証券業者による金融商品販売名下の大型詐欺事件等、国民の利殖願望につけ込んだ大規模かつ組織的な事件の検挙が目立った。平成13年中の資産形成事犯の検挙事件数は24件、検挙人員は119人で、被害規模は、約21万人、約1,400億円であった(図3-25)。
②訪問販売等に係る事犯
 訪問販売等に係る事犯については、インターネット・オークション等を悪用した詐欺事件の検挙が急増した。また、高齢者等の社会的弱者を対象とした事犯(危険商法(注)等)や若者、主婦を対象として巧妙に品物を売り付ける悪質な事件の検挙が目立った。13年中の訪問販売等に係る事犯の検挙事件数は116件、検挙人員は282人であった(図3-26)。
(注) 危険商法とは、換気扇や水道点検と言って家庭を訪問し、「換気扇が古くなっている。このままでは火事になる。」「水道の水が汚染されていて病気になる。」等と危険であることを告げ、不安感を起こさせるなどして商品を売りつける商法をいう。
[事例1] 会社員(36)は、11年10月から12年8月までの間、電子メールに1番から4番の順位を付した氏名・口座番号リストを掲げ、「この4人の口座に1,000円ずつ振り込むだけ。あとはリストの1番を削って順番を一つずつ繰り上げ、自分の氏名と口座番号を4番とした新しいリストを多くの人にメールで送れば、大金を手にできる。」等と付記して、不特定多数人に送付し、約1,000人から合計で約107万円を入金させた。13年1月、無限連鎖講の防止に関する法律違反で会社員ら5人を検挙した(北海道、秋田、宮城)。
[事例2] 会社役員(52)らは、12年12月から13年4月までの間、いわゆる名簿屋から購入した名簿をもとに、不特定の者に対し、ツーショットダイヤル利用料金の未払いがあるかのように装って、架空の請求金額及び「入金がない場合は、高い遅延損害金も併せて、自宅に回収に伺います」などの文言を記載したはがきを送り付け、約3,300人から合計で約8,800万円をだまし取った。13年5月、詐欺罪で役員ら7人を検挙した(福島、栃木、愛知)。
(3)金融関係事犯の現況
 平成13年中の金融関係事犯の検挙は、検挙事件数・検挙人員ともに過去10年間で最多となった。特徴としては、高金利事犯の検挙が増加し、また、いわゆる紹介屋(注)による詐欺事犯の検挙が11事件、108人と急増した(図3-27)。
(注) 紹介屋とは、融資を申し込んできた客に対し、他の金融会社を仲介すると偽り、仲介料等をだまし取るものをいう。
[事例1] 貸金業を仮装した業者の代表者(35)らは、12年1月から11月までの間、中小企業経営者等に「低金利で無担保、無保証」などと記載したダイレクトメールを送付し、申込者に対して「保証金を支払えば、次回から高額の融資をする」などと偽り、融資保証金の名目で全国の約5,100人から小切手等約62億円をだまし取った。13年1月、詐欺罪で代表者ら40人を検挙した(京都)。
[事例2] 暴力団組員(38)らが、12年11月から13年2月までの間、零細企業経営者等に法定金利の約24倍の高金利貸付けを行い、その債権を占有屋(注)に譲渡した。占有屋は、返済が滞ったことから、債務者不在中の居宅に上がり込み、玄関ドアの施錠を取り替えるなどして居座り続け、不動産を侵奪した。13年10月、出資法違反(高金利)等で組員ら6人を検挙、不動産侵奪で占有屋1人を検挙した(群馬)。
(注) 占有屋とは、債権の担保となっている不動産物件等に居座り、法外な立ち退き料金を要求したり、極端に安い価格で落札することで利益をあげるものをいう。
(4)その他の経済事犯の現況と取締り
①不動産取引をめぐる事犯
 平成13年中の不動産取引をめぐる事犯の検挙件数は68件、検挙人員は98人であり、検挙した事件の主な適用法令は、建設業法、宅地建物取引業法及び建築基準法であった。
[事例] 土木建築業者(55)らは、12年10月から13年3月までの間、他人の山林等約3万平方メートルを伐採し、同所に建設残土を搬入して埋め立て工事を行い、無許可で宅地造成を行った。13年12月、宅地造成等規制法違反等で業者ら3人を検挙した(警視庁)。
②国際経済関係事犯
 13年中の国際経済関係事犯の検挙件数は57件、検挙人員は40人であり、検挙した事件の主な適用法令は、関税法、外国為替及び外国貿易法であった。
[事例] 輸入業者(41)らは、13年5月、輸入規制されているフロンガス約2万1,600缶を潤滑油であると虚偽申告して輸入しようとした。7月、関税法違反で業者ら2人を検挙した(千葉)。

知的財産権侵害事犯・保健衛生事犯等の取締り
(1)知的財産権侵害事犯の現況と取締り
 平成13年中の知的財産権侵害事犯の検挙では、海賊版コンピュータ・ソフト、偽ブランド品等の販売や音楽、コンピュータ・ソフト等をインターネットを用いて無断配信した事件が増加したほか、外国人が偽ブランド品を輸入・販売した商標法違反事件が目立った(表3-26)。
[事例1] イスラエル人(25)らは、12年9月から13年10月までの間、中国人(35)らが国内の工場で密造した偽ブランド時計等を販売していた。10月までに、商標法違反及び関税法違反等で24人を検挙し、偽造品約188万点を押収した(愛媛、愛知、山口、大分)。
[事例2] 専門学校生(20)らは、13年10月、ファイル交換ソフトを利用して、権利者に無断で、有名ビジネスソフトや音楽データを自動公衆送信可能な状態に設定していた。11月、著作権法違反(公衆送信権侵害)で2人を検挙した(京都)。
(2)知的財産権保護のための広報啓発活動
 警察では、検挙した知的財産権侵害事犯の広報や偽ブランド品・海賊版コンピュータ・ソフトの展示等、積極的な広報啓発活動を実施している。
 また、平成13年中は、次の活動に対して積極的な協力を行った。
 「アジア知的所有権シンポジウム2001」
 (不正商品対策協議会主催、2月、東京)
 「不正商品防止フェア」
 (不正商品対策協議会主催、5月、兵庫)
 全国生涯学習フェスティバル「まなびピア山形2001」
 (文部科学省等主催、10月、山形)
(3)保健衛生事犯の現況と取締り
 平成13年中の保健衛生事犯の検挙では、インターネットを悪用した無承認医薬品の広告・販売等に係る薬事法違反が増加した。
 また、大手乳製品製造会社による食品衛生法違反事件を検挙した(表3-27)。
[事例] 医師免許を有しない女性(53)らは、共謀の上、10年11月から約2年間にわたり、この女性が「東洋医学の名医」であると触れ込んで患者を集め、来院した患者に対し、この女性が患部に注射するなどの医療行為を行い、1回の診察で1万5,000円から2万5,000円の治療費を取っていた。13年5月、医師法違反で2人を検挙した(埼玉)。
(4)諸法令違反の取締り
 警察では、無線局の不法開設に係る電波法違反や、密漁に係る漁業法違反及び水産資源保護法違反等について、積極的な取締りを行っている(表3-28)。
 また、いわゆる迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反など、国民に身近な軽微な犯罪についても、適切な取締りに努めている(表3-29)。


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