はじめに

 2001年(平成13年)9月11日に発生した米国における同時多発テロ事件は、3,000人を超える犠牲者を出し、その国籍も我が国を含め約80か国に上るなど、過去最悪の無差別テロ事件となった。
 冷戦終結後、欧米諸国への反発、とりわけサウジアラビアへの米軍駐留に対する反発を契機としてイスラム過激派が台頭するなど、宗教思想に基づく対立や、東西イデオロギー対立の下で押さえ込まれていた民族独立運動を背景とした対立が次第に表面化しており、政治的イデオロギーに代わって、これらが近年のテロの主要な原因となってきている。
 米国における同時多発テロ事件を機に、世界のテロ対策は大きく変化した。イスラム諸国を含む多くの国がイスラム過激派によるテロへの対策の必要性を改めて認識し、このようなテロを二度と起こさせないため、テロの根絶に向けた対策が世界的規模で進められることとなった。
 近年のテロは大規模化、無差別化の傾向が著しく、また、テロは一度実行に移されれば途中で阻止することは困難であり、その発生を許せば多くの犠牲を生むことから、テロ対策の要諦はその未然防止にある。警察においては、各国治安機関と緊密に連携して積極的な情報交換を行い、専門的な分析を行うほか、収集した情報について、テロの危険性が認められないと判断されるに至るまで、全国警察の総力を挙げ、徹底して不審点の解明を行うとともに、諸法令を積極的に活用した捜査活動を推進するなど、情報活動、捜査活動を格段に強化している。また、国内関係機関との情報交換やテロ資金対策等のテロ組織根絶に向けた諸対策を推進し、テロの未然防止を図っている。


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