第2節 適正な警察活動の確保

 警察では、適正な警察活動を確保するため、監察の適切な実施、情報公開の推進等に努めている。また、平成12年11月の警察法改正により、国家公安委員会及び都道府県公安委員会の管理機能の強化に関する規定や、警察署協議会の制度に関する規定の整備等が行われ、警察活動の一層の適正化が図られている。
1 監察
(1) 警察における監察
 警察における監察は、能率的な運営及び規律の保持に資するために行われるものであり、警察庁(管区警察局等を含む。)では、業務運営又は服務の実態を総合的かつ具体的に把握するための監察と特別の事情がある場合における業務上又は服務上の問題点を把握するための監察を行っている。
 警察庁及び都道府県警察が行う監察については、平成12年1月に国家公安委員会が制定した監察に関する規則により、警察庁長官、警視総監及び道府県警察本部長は、年度ごとに監察を実施するための計画を作成し、国家公安委員会又は都道府県公安委員会に報告するとともに、四半期ごとに少なくとも1回その実施状況をそれぞれ国家公安委員会又は都道府県公安委員会に報告することとされている。12年度に警察庁長官が作成した監察実施計画では、不祥事案対策の推進状況、犯罪等による被害の未然防止活動と被害者対策の推進状況等が全国統一の実施項目とされた。
 警察庁では、監察機能を充実・強化するため、13年4月に長官官房に監察官2人を新たに設置するなどとともに、管区警察局においても総務監察部(関東管区警察局にあっては、監察部)の設置等を行い、都道府県警察に対する頻繁な監察を実施することとしている。また、都道府県警察においても体制の強化を図っているところである。
(2) 公安委員会による監察の指示・点検
 平成12年11月の警察法改正により、公安委員会による警察の管理機能を強化させるため、国家公安委員会及び都道府県公安委員会の監察に関する指示等についての規定が設けられた。
 具体的には、国家公安委員会は警察庁に対して、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは、具体的又は個別的な指示をすることができることとされた。さらに、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が監察に関する指示をした場合において必要があると認めるときは、その指名する委員に、指示した事項の履行状況を点検させ、また、警察庁又は都道府県警察の職員に、指名した委員の補助をさせることができることとされた。
 また、警視総監又は道府県警察本部長は、都道府県警察の職員が職務を遂行するに当たって法令に違反した等の疑いがあると認める場合は、速やかに事実を調査し、当該事由があることが明らかとなったときは、その結果を都道府県公安委員会に報告しなければならないこととされた。
[事例] 神奈川県警察では、11年以来、組織を挙げて不祥事案再発防止対策に取り組んできたが、12年末以降、警察官による侵入窃盗事件、同僚刺殺事件及び強制わいせつ事件という重大な不祥事案が相次いだ。そのため、神奈川県公安委員会は、警察法第43条の2第1項に基づき、13年4月、不祥事案の再発防止の一層の徹底を図るため、人事管理、教養、身上把握、組織の士気高揚等の諸事項について監察を行い、その結果を報告するように神奈川県警察に指示した。
2 苦情の適正な処理
 国民と直接に接する第一線における問題点の集約とそれに対する必要な措置の実施及び警察職員の職務執行における責任の明確化のため、平成12年11月の警察法改正により苦情申出制度が創設された。
 具体的には、都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対して文書により苦情の申出をすることができることとされ、都道府県公安委員会では、申出が都道府県警察の事務の適正な遂行を妨げる目的で行われたと認められる場合等を除き、申出を誠実に処理し、処理の結果を文書により申出者に通知することとされた。
 また、警察では、都道府県警察の職員の職務執行についての苦情で警察法の規定する苦情に該当しないものについても、申出を誠実に処理し、申出者の氏名や所在が不明である場合等を除き、その処理の結果を申出者に通知することとしている。
 このほか、警察では、苦情処理体制の整備、苦情申出制度に関する教育、苦情の申出手続等についての広報を行うこととしている。
3 警察署協議会
 平成12年11月の警察法改正では、警察署の業務運営に地域住民の意見を反映させるため、警察署に警察署協議会を設置することが定められた。
 警察署協議会は、警察署の事務の処理に関し、警察署長の諮問に応じるとともに、警察署長に対して意見を述べる機関であり、その委員は、都道府県公安委員会が委嘱する。
 改正警察法の警察署協議会制度についての規定は13年6月に施行され、全国の1,269警察署中、1,265署に警察署協議会が設置され、委員11,065人が委嘱された。
4 情報公開の推進
 国民の信頼を確保するためには、個人情報の保護や警察の任務の達成等との調和を図りながら積極的に情報公開を推進し、警察行政の透明性を高めることが重要である。
 国家公安委員会においては、委員会の詳細な開催状況をホームページに掲載している(第1節1(3)参照)ほか、警察庁においては、平成12年11月に、「警察庁訓令・通達公表基準」を策定し、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に定められた不開示情報を除き、原則として訓令等の内容又は概要をホームページに掲載して公表している。また、国家公安委員会及び警察庁においては、13年3月に、「国家公安委員会・警察庁における情報公開法審査基準」を策定し、4月の情報公開法施行後は、この審査基準に基づき、開示・不開示の決定を行っている。
 都道府県警察においても、12年3月末には警察を実施機関とするための情報公開条例の改正が行われていた都道府県は9県であったが、13年3月末には42都道府県となった。
5 職務執行における責任の明確化
 職務執行における責任の明確化のため、窓口を担当する職員及びその責任者については、平成13年6月から名札を着用している。また、制服警察官に識別章を着装させることとしており、14年度中からの本格的な実施に向け、13年2月から6月までの間、すべての都道府県警察の合計175警察署において試験的に着装した。
 さらに、警察手帳について、写真、氏名等が記載されたページを容易に呈示することができるよう、その形状の抜本的な見直しを14年度中に行うこととしている。


目次