第8章 公安委員会と警察活動のささえ

第1節 50年の歩み

1 警察組織の変遷

(1) 旧警察法下の警察組織
 旧警察法は、昭和23年に施行され、警察の民主的管理と地方分権を図るため、公安委員会制度を取り入れるとともに、警察機構を国家地方警察と自治体警察の二本立てとしていた。
ア 国家地方警察
 内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会及び国家地方警察隊が置かれ、国家地方警察隊は、国家地方警察本部、警察管区本部及び都道府県国家地方警察から成っていた。
 国家地方警察本部は、国家公安委員会の事務部局であり、その事務を分掌させるため、全国を六警察管区に分かち、警察管区ごとに、国家地方警察の地方事務部局として警察管区本部が置かれた。
 都道府県国家地方警察は、都道府県知事の所轄の下に置かれた都道府県公安委員会の運営管理(注1)及び警察管区本部の行政管理(注2)の下、自治体警察の管轄に属する区域を除くその都道府県の区域内において、治安維持の任に当たった。
(注1) 公共の秩序の維持、生命及び財産の保護、犯罪の予防及び鎮圧、犯罪の捜査及び被疑者の逮捕、交通の取締り等の事項に係るものをいう。
(注2) 警察職員の人事及び警察の組織並びに予算に関する一切の事項に係るものをいう。
イ 自治体警察
 市及び人口5,000人以上の市街的町村は、「その区域内において警察を維持し、法律及び秩序の執行の責に任ずる」こととされ、市町村長の所轄の下に置かれた市町村公安委員会に警察を運営管理及び行政管理させていた。
 また、自治体警察は、国家地方警察の運営管理及び行政管理に服さないものとされた。
(2) 現行警察法下の警察組織
 旧警察法は、警察の民主化を図るものとして画期的な意義を有するものであった。しかし、
○ 本来、国家的性格と地方的性格とを併有する警察事務を、地域によって国家地方警察又は自治体警察といういずれかの性格に偏した二つの警察組織に担当させたことは、警 察事務の運営の合理性の観点から問題があった。
○ 市町村自治体警察制度による警察単位の地域的細分化が、広域的な犯罪等に対処するについて警察の効率的運営を阻害していた。
○ 国家地方警察と自治体警察は、原則として独立対等の関係にあり、また、国家公安委員会の内閣からの独立性が強いため、国ないし政府の治安に対する責任が不明確であった。
○ 国家地方警察と多数の自治体警察とが併存し、施設及び人員が重複しているため、財政面で不経済であった。
 といった制度的欠陥を有していた。
ア 現行警察法の制定
 旧警察法の優れた点を受け継ぎつつ、その制度上の欠陥を是正するものとして、現行警察法は、昭和29年、その全面改正により制定された。
 現行警察法においては、
○ 警察の管理と運営の民主的保障及び政治的中立性を確保するため、旧警察法の採用した公安委員会制度を維持すること
○ 警察の能率的運営の確保、財政負担の軽減、警察事務の国家的性格及び地方的性格への対応並びに国の治安責任の明確化を図るため、国家地方警察と市町村自治体警察の二本立てを廃し、執行事務を行う警察組織を都道府県警察に一本化するとともに、国の警察機関による都道府県警察の指揮監督(第3節1参照)等国の一定の関与を認めること
○ 政府の治安責任の明確化を図るため国家公安委員会の委員長に国務大臣を充てること
等とされた。
イ 警察庁の内部部局の当時の組織と現在の組織
 発足当時の警察庁には、1官房4部17課が置かれた。当時の組織と現在の組織(平成11年4月1日現在)は、図8-1のとおりである。

図8-1 警察庁の内部部局



2 警察官の定員の推移

 警察官の定員は、その時々の社会情勢や治安情勢を反映して表8-1のとおり推移してきたところである。

表8-1 都道府県警察官数の推移と社会・治安情勢


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