第3節 事件捜査と市民の保護

 警察では、教団による数々の残虐かつ悪質極まる事件に対して地道な捜査を積み重ね、その結果、教団代表以下400人以上の教団信者を逮捕し、事案の解明に努めてきたところである。
 他方、地下鉄サリン事件にみられるように、駅構内等の不特定多数の人が集まる場所で殺傷能力が強い毒物が使用されたことにかんがみ、警察では警戒警ら活動を強化するとともに、地下街の管理者等と緊密な連携をとることにより同種事案の再発防止を図った。
 また、教団施設周辺住民の不安をやわらげるためにパトロール活動を行うなど、地域の安全と平穏の確保のための措置をとるとともに、オウム真理教関連事件の被害者に対する支援、教団信者の社会復帰のための支援を行っている。

1 事件捜査

(1) 地下鉄サリン事件までの捜査
ア 坂本弁護士事件の捜査
(ア) 届出に至る経緯
 平成元年11月3日午後7時ころ、坂本弁護士の妻から親戚に対し、電話がかけられたが、これを最後に、翌11月4日以降は同弁護士の両親等が何度電話をしても応答がなく、また連休明けの11月6日以降も同弁護士が所属法律事務所に出勤しなかった。同弁護士の実父が心配になり、6日午後9時ころ、同弁護士宅を訪れたところ、室内は、炊飯器に保温状態の御飯が残され、食器が並べられており、財布等も残されたまま家族全員が所在不明となっていた。坂本弁護士の両親は、所属法律事務所の弁護士等と相談し、11月7日になって、神奈川県磯子警察署に同弁護士一家の失踪を届け出た。
(イ) 初期捜査
 届出を受けた警察においては、届出人等関係者からの事情聴取、坂本弁護士宅周辺における聞込み捜査及び同弁護士宅の見分、鑑識活動等の捜査を推進した。これらの捜査からは坂本弁護士一家が犯罪に遭遇したことを直接に認め得る証拠や資料等を発見することはできなかったが、同弁護士一家が乳児を抱えて家族で家出をする理由がない上、同弁護士が担当していた被害者の会に関連する活動では教団側とのトラブルも見られるなど、これらの活動をめぐって何らかの犯罪に巻き込まれた可能性も否定しきれなかった。そこで、所在不明者の両親の同意を得て、元年11月15日付をもって公開捜査に踏み切り、民間情報の収集に努めた。
(ウ) 捜査本部の設置
 公開捜査を行ったものの有力情報が少ない上、坂本弁護士一家が何らかの被害に遭っている可能性が高く、更に広範囲にわたる捜査を強力に推進する必要があることから、元年11月17日、神奈川県磯子警察署に刑事部長を長とする捜査本部を設置し、広範にわたる捜査を開始した。
 坂本弁護士は当時、被害者の会の救援活動に従事し、教団との間に激しい対立があったこと、同弁護士宅にプルシャ(教団のバッジ)が残されていたことなどから、警察では早い段階から、数回にわたり複数の教団幹部から事情聴取を行うなど、教団の関与を視野に入れた捜査を行っていたが、事件現場において物証が乏しかったこと、教団の閉鎖性が強く内部情報がほとんど得られなかったことなどから、捜査は非常な困難を伴った。
 坂本弁護士一家失踪後1箇月が経過しようとしている中、警察庁では、元年12月2日、全都道府県警察に対し、坂本弁護士一家失踪事案に関する情報収集の強化を指示し、事案の解明に努めていた。2年2月、「長野県大町市の山林に坂本弁護士の長男が眠っている」旨の文書と図面入りの封書が捜査本部に配達され、2年2月と4月の2回にわたり、図面の現場を発掘するなどの捜索を行ったが、場所の特定が困難であり、手がかりの発見には至らなかった。
 警察では、その後も引き続き教団幹部等から事情聴取を行い、再度チラシを配付するなど、全国的な捜査を継続した。
イ 国土利用計画法違反事件の捜査
 教団が波野村所在の山林等を取得する際に、県知事に必要な届出をしなかった国土利用計画法違反事件について、2年8月16日、熊本県が教団と土地売却者を国土利用計画法及び森林法違反で熊本県警察に告発した。これを受けて熊本県警察が本格的な捜査を開始した結果、新たに、土地売却者及び教団幹部数人が売買事実を隠し、2年5月28日及び29日、熊本地方法務局阿蘇支部において、贈与を理由とする所有権移転登記申請をし、登記官をして土地登記原簿に不実の記載をさせ、同所に備え付けさせて行使した事実(公正証書原本不実記載・同行使)が判明した。警察では、国土利用計画法違反及び公正証書原本不実記載、同行使罪に対する捜査を重点的に進め、2年9月17日、熊本県一宮警察署に防犯部長を長とする「オウム真理教に係る国土利用計画法違反等事件捜査本部」を設置した。教団は、組織ぐるみで捜査を牽制・妨害し、証拠隠滅工作を行っており、任意捜査では事実の真相解明は困難であったため、熊本県警察は、関係都道府県警察の協力を得て、2年10月22日、教団関連施設17箇所を強制捜査し、教団幹部数人を逮捕した。
ウ 宮崎県における旅館経営者被害に係る営利略取事件の捜査
 平成6年4月10日、被害者の娘から、父親が所在不明になっている旨の届出があり、警察で基礎捜査を行ったが、この時点では事件性を裏付けるまでには至らなかった。その後、8月21日、被害者が突然帰宅したので事情を聴取したところ、事件性が強いと思われたことから、9月8日、捜査本部を設置して、事件当日の被疑者らの行動等の捜査を行った。
エ 松本サリン事件の捜査
 平成6年6月27日に発生した松本サリン事件については、翌日、長野県松本警察署に刑事部長を長とする捜査本部を設置し、捜査を開始した。鑑定の結果、毒物についてはサリンであることが判明した。一方、6年7月、上九一色村所在の教団施設付近で異臭事案が発生したことから、その後同所付近の土を採取し、科学警察研究所で鑑定した結果、6年11月、サリンが分解した際にもできる化学物質を検出した。さらに、そのころまでの捜査によって、警察は教団がダミー会社等を通じてサリンの原材料を大量に購入している事実を把握しており、これらのことから、松本サリン事件は教団による犯行ではないかとの疑いを持つに至ったが、強制捜査に着手するまでの捜査資料の入手には至らなかった。
オ 公証役場事務長逮捕・監禁致死事件の捜査
 平成7年2月28日の事件発生後、警察は目撃のあったレンタカーの捜査等から教団信者を被疑者として割り出し、本件犯行が教団による組織的な犯行であると判断した。
 このため、7年3月22日、警視庁、山梨県警察、静岡県警察等による教団に対する大規模な強制捜査を実施した。
(2) 地下鉄サリン事件発生以後の捜査
ア 地下鉄サリン事件の捜査
 平成7年3月20日午前8時ころ、地下鉄サリン事件が発生し、警察では、午前9時、警察庁に、刑事局、警備局合同の「都内地下鉄における毒ガス発生事案対策室」、警視庁築地警察署に刑事部長を長とする捜査本部を設置し、被害者の救出、目撃者の確保等の初動捜査を行った。  犯行に使用された毒物については、地下鉄電車内に遺留されたビニール袋入り液体を押収し、ガスクロマトグラフ質量分析検査を行った結果、サリンであると判明した。
 7年3月22日、公証役場事務長逮捕・監禁事件で、上九一色村の教団施設等25箇所の一斉捜索を行った。捜索は、警視庁を中心とする約2,500人による史上空前の態勢をもって行われ、捜査員は、三塩化リン等の有毒化学物質が山積みされるなど危険な環境の中で、化学防護服等を着用

するなどして、証拠品等の発見、押収に努めた。その結果、サリン製造に必要な多量の化学薬品類とサリン製造が可能と思われる化学プラントが発見されたことなどから、地下鉄サリン事件は、教団の組織ぐるみの犯行である疑いが強まった。
 教団信者らが、様々な犯罪の証拠を隠匿し全国各地に逃亡したと認められたことから、全国警察を挙げて、関係被疑者の追跡、発見に努めた

ところ、逮捕・監禁、犯人隠避等で多数の教団幹部を逮捕し、証拠物件を押収した。その取調べから、教団によるサリンの製造、地下鉄サリン事件の実行の事実が判明し、教団代表以下多数の被疑者を特定した。7



年5月15日、教団代表以下37人の逮捕状を得て、翌16日早朝から全国の教団施設の捜索を行った。上九一色村の第6サティアンの捜索を行った捜査員は、サティアン内の天井の状態が以前の捜索時とは異なることに

気付き、その部分の板をはずし中を調べたところ、その中に潜んでいた教団代表を発見し、逮捕した。この日以降教団代表以下41人を殺人及び殺人予備で逮捕したほか、4人を警察庁指定特別手配被疑者(注)に指定し、警察庁刑事局に「追跡捜査対策室」、各都道府県警察に「追跡捜査推進本部」を設置し、全国にポスター、ちらし等約160万枚を配付するなどして、現在もその発見に全力を挙げている。
 また、勾留中の被疑者が、「サリン原料等を栃木県下に隠している」旨を供述したことから、同人に案内させ確認したところ、栃木県日光市の山中からサリンの原料、青酸ガスの原料となる薬品類を発見したので、これを押収した。
(注) なお、公証役場事務長逮捕・監禁致死事件で1人、地下鉄丸ノ内線新宿駅便所内毒物使用殺人未遂事件で2人の教団信者を特別手配しており、8年6月現在、警察庁指定特別手配被疑者は7人となっている。
イ 松本サリン事件の捜査
 長野県警察が入手していた松本サリン事件に関する捜査資料に加え、地下鉄サリン事件で警視庁に勾留中の被疑者が、松本サリン事件に関与したことを自供したことなどから、7年6月12日、「オウム真理教に係る『松本サリン事件』警視庁、長野県警察合同特別捜査本部」を設置し事案の全容解明に当たった。現在までに、15人を逮捕している。
ウ リンチ殺人事件の捜査
 地下鉄サリン事件で逮捕した被疑者等の取調べから、6年1月の第2サティアンにおける元信者リンチ殺人事件の事実が判明し、7年6月13日以降、殺害を命じた教団代表以下11人を逮捕している。
 元年2月上旬の静岡県富士宮市における信者リンチ殺人事件については、殺害を命じた教団代表以下4人を逮捕し、6年7月中旬の第2サティアンにおける信者リンチ殺人事件においても、教団代表以下5人を逮捕している。
エ 逮捕監禁事件、営利略取事件の捜査
 宮崎県における旅館経営者被害に係る営利略取事件については、関係者からの事情聴取等の結果、教団が組織的、計画的に敢行した営利略取等の事実が判明したことから、7年4月11日以降、被疑者11人(本件に絡む誣(ぶ)告等を含む。)を逮捕した。
 6年7月28日発生の元看護婦監禁事件の被害者から被害届を受理した山梨県警察は、事件の裏付けをとり、被疑者の逮捕状を得て追跡捜査中であったが、7年4月12日、警視庁が職務質問により被疑者の1人を発見したので、逮捕して身柄を山梨県警察に護送した。共犯者2人についても、4月26日逮捕している。
 6年11月21日に発生した元女優の長女監禁事件については、被害者の供述等から当該事件の事実関係が明らかになり、7年4月29日、被疑者の1人を逮捕し、その後共犯者6人を逮捕した。
 7年3月22日の一斉捜索で第10サティアンにおいて名古屋市在住の老女を保護したが、この老女の供述等から、老女被害に係る営利略取、住居侵入、窃盗、及び有印私文書偽造・同行使、詐欺の事実が判明したので、被疑者を割り出し、5月4日以降教団信者13人を逮捕した。
オ 坂本弁護士事件の捜査
 神奈川県警察が行ってきた捜査の結果に加え、地下鉄サリン事件等で逮捕した教団信者等が、坂本弁護士事件について犯行をほのめかしたことなどから、7年8月23日、警察庁において警視庁、神奈川県警察の合同捜査会議を開催し、7年9月1日、警視庁刑事部長を長とする「警視庁・神奈川県警察合同捜査本部」を設置し、事案の全容解明に当たった。捜査本部では、教団信者の供述等から、坂本弁護士一家の死体が埋まっている場所を特定し、管轄県警察の応援を得て、7年9月6日から捜索



を実施した。その結果、新潟県の山林内から坂本弁護士の遺体が、富山県の山林内から同弁護士の妻の遺体が、長野県の山林内から同弁護士の長男の遺体がそれぞれ発掘され、教団代表以下6人を殺人容疑で逮捕した。
カ 大阪におけるVX使用殺人事件の捜査
 6年12月12日、大阪市淀川区の路上において会社員の男性(28)が突然倒れて死亡した事件についても、勾留中の被疑者の供述等から、教団信者がVXを使用して殺害した疑いが強まり、7年11月24日、警視庁と大阪府警察の合同捜査本部を設置し、12月2日以降教団代表以下7人を逮捕した。
キ 銃器製造事件の捜査
 7年4月6日、建造物侵入により現行犯逮捕した教団信者の車両内から銃器の部品と認められる物品が多数発見され、これらは、鑑定の結果、ロシア製小銃(AK-74)の部品と極めて類似していることが分かった。このため、7年4月8日以降、武器等製造法違反容疑で山梨県下の教団関連施設等を捜索したところ、金属加工用の大型工作機械、小銃の部品、設計図のほか、完成品と見られる小銃2丁を発見・押収した。このうち1丁には発射能力があることが確認されたことから、小銃の不法所持の容疑で7年5月に信者3人を逮捕、11月に信者1人を追送致した。また、7年7月には、武器等製造法違反で教団信者27人を逮捕したほか、7年11月には、教団代表を同法違反で逮捕、教団信者1人を追送致した。
ク 薬物密造事件の捜査
 教団施設に対する捜索により、覚せい剤、LSD、メスカリン等を押収し、教団幹部27人を覚せい剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法違反等で検挙している。

2 有毒ガス事案への対応

 地下鉄駅構内において、サリンを使用して多数の人が殺傷されたことにかんがみ、警察では、駅、ターミナル、デパート、地下街、公共交通機関等不特定多数の人が集まる場所を中心に、機動隊員、地域警察官、自動車警ら隊員、鉄道警察隊員等による警戒警ら活動を大幅に強化するとともに、全国的に検問を強化し、不審者への職務質問に努めた。
 また、鉄道、地下鉄等の事業者、地下街の管理者等との連絡協議会を開催し、自動販売機、ごみ箱の撤去等をはじめとする環境整備、関連事業者職員による巡回、点検等自主警備体制の強化、防犯カメラの増設等を働き掛けるとともに、不審物件等発見時における警察への迅速な通報連絡、車内、館内放送等による利用者への広報措置、利用者の避難誘導方法の徹底等を図った。
 さらに、警察では、駅、地下街等を中心に、交番速報やミニ広報紙等を活用し、有毒ガスの特性や避難要領等の情報を積極的に提供し、国民の不安感の解消を図るとともに、防犯協会等への情報提供についての促進を呼び掛けた。また、交番等の地域警察官は、巡回連絡、住民による各種会合への参加、交番・駐在所連絡協議会の開催等を通じて、異臭等の住民が不安に感じる問題を把握した場合には、関係機関とも協力の上で、その解決を図った。

3 教団の現状と対策等

(1) 教団の現状
 平成7年5月16日に教団代表が逮捕されて以降、教団緊急対策本部が設置され、教団の組織運営は教団緊急対策本部長を中心に行われることとなり、組織温存のため、「省庁制」の廃止、捜査への協力表明等ソフト路線が前面に打ち出されたが、10月7日に同緊急対策本部長が逮捕されて以降は、幹部らによる集団指導体制により行われている。しかし、教団にとって教団代表は絶対的な存在であることから、教団代表の意向に反して重要事項が決定されることはないものとみられている。
 信者については、地下鉄サリン事件等重大凶悪事件に関与した疑いがある指名手配被疑者がなおも逃走中であり、警察では、全力を挙げてその発見検挙に努めている。また、依然としてかなりの信者が教団代表に対する絶対的帰依を表明しており、さらに、脱会したという信者についても、一度自宅に戻ってから再び教団に復帰する者や脱会したと言いながら指名手配被疑者の逃走を支援していた者がいるなど、真に脱会したかどうかは明らかではない状況である。
 警察では、教団による組織的違法事案の再発防止を図るため、全国警察を挙げて、教団関係指名手配被疑者の早期発見、検挙に努めるとともに、教団の動向の把握に取り組んでいるところである。
 なお、6月30日に東京都知事及び東京地方検察庁検察官は東京地方裁判所に対し、教団に対する宗教法人法に基づく解散命令の請求を行い、10月30日に東京地方裁判所は解散命令の決定を行った。これに対し、教団は、11月2日に東京高等裁判所に対する即時抗告を行ったが、12月19日に東京高等裁判所はこれを棄却する決定を行い、教団に対する解散命令の決定は確定し、清算手続が開始された。8年1月30日、最高裁判所は教団の特別抗告を棄却している。
 また、地下鉄サリン事件の被害者及び遺族や国は、賠償請求等による教団の債務超過が予想されたことから、東京地方裁判所に対し、教団の破産と資産仮差押え等の財産保全を請求していたが、12月12日、東京地方裁判所は破産法に基づき教団の全財産を凍結する保全処分を決定し、14日以降、教団財産の仮差押え等を行った。8年3月28日、東京地方裁判所は、教団に対する破産宣告の決定を行った。
 さらに、公安調査庁は、教団に対する破壊活動防止法に定める解散指定を請求するための弁明手続を開始すべきと判断し、そのための弁明の手続が8年1月18日から6月28日にかけて6回行われた。
 警察では、破壊活動防止法所定の手続が進められる過程において、法務当局との間で情報又は資料の交換等必要な協力を行うとともに、関係者の安全確保に万全を期すこととしている。
(2) 教団施設周辺住民の安全の確保と被害者対策の推進
 教団が関係する様々な事件が明るみになってからは、教団の施設周辺の住民の不安感は増しており、警察にも様々な相談が寄せられるようになった。そのため、警察では、施設の存在する地域の安全と平穏を確保するため、徒歩やパトカーによるパトロールを強化するなど様々な措置を講じている。
 特に、教団施設が多数存在する上九一色村富士ケ嶺地区では、住民からの要望に応じて、平成7年7月に「臨時地域安全センター」を開設し、警戒活動、各種困りごと相談活動を行うなどして、地域の安全と平穏の確保に努めたほか、7年10月には同センターを発展解消させる形で、「富士ケ嶺総合警察センター」を開設し、体制を強化した。これらの施設内に開設された「困り事相談所」には、住民等から相談が寄せられており、8年6月末までに、合計175件を受理し、適切に処理を行っている。
 また、教団富士山総本部が存在する静岡県富士宮市人穴地区でも、付近の住民の不安感を解消し、地域の安全と平穏を確保するため、7年7月、教団施設前の空き地に「人穴臨時警備派出所」を開設し、警戒活動、各種困りごと相談活動等を実施している。
 今後とも、警察では、施設の存在する地域の安全と平穏の確保のために、それぞれの地域の実情に応じた様々な措置を講じていくこととしている。
 また、松本サリン事件、地下鉄サリン事件等により死亡し又は重障害を受けた被害者の遺族や被害者本人に対して犯罪被害者等給付金を支給するとともに、各種相談業務を行うなど、オウム真理教関連事件の被害者に対する施策も講じているところである。
(3) 教団信者の社会復帰に対する支援
 教団を脱会した者あるいは脱会する意思のある者については、社会復帰を円滑に行い、一刻も早く通常の生活ができるようにする必要がある。そのため、警察では、信者(元信者も含む。)やその家族から寄せられる相談について、親身に対応し、最善の解決策が見いだせるよう助言を行うなど必要な措置を講じて信者の社会復帰を支援している。
 また、信者で、両親や親戚(せき)に引き取られるなどした少年については、少年相談として助言、指導を行うほか、児童相談所、学校等と連携して、健全育成の観点からその社会復帰を支援している。
 さらに、総合的な社会復帰対策を進展させるために、平成7年12月には、警察庁に「オウム真理教信者等社会復帰対策調整担当官」(注)を置き、今後とも警察全体としてこの問題に取り組むこととしている。
(注) 「オウム真理教信者等社会復帰対策調整担当官」は、7年12月の「オウム真理教問題関連対策関係省庁連絡会議」の申合せにより設置が決まったもので、警察庁のほか、各関係省庁に置かれている。


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