第1章 新しい組織犯罪への対応

~オウム真理教関連事件を回顧して~

 宗教団体として発足したオウム真理教(以下「教団」という。)は、その後テロ集団化し、数々の違法事案を引き起こすに至った。特に、平成6年の松本市内における毒物使用多数殺人事件(いわゆる松本サリン事件)、7年の地下鉄駅構内毒物使用多数殺人事件(いわゆる地下鉄サリン事件)は、サリンという有毒ガスを用いた無差別大量殺人事件であり、我が国ばかりか国際的にも犯罪史上例をみない残虐極まりないものであった。
 警視庁をはじめとする全国警察挙げての捜査により、教団代表等の幹部らが逮捕され、また、教団代表についての公判も開始されるなど、事件の処理・解明は新たな段階を迎えるに至っている。しかし、これらの事件は、従来にない新たな態様の組織犯罪であり、今後警察が取り組むべき組織犯罪対策を考える上で重要な反省教訓を残したことも事実である。
 一方、世界に目を向けてみると、一般市民を巻き込むテロが増加するなど、テロの凶悪化、先鋭化の傾向は顕著であり、テロ犯罪対策は、国際的にも最重要課題の一つとなっている。
 このようなことから、警察においては、オウム真理教関連事件の経緯や諸外国のテロ犯罪の実情等を踏まえながら、新たな組織犯罪対策について取り組んでいる(なお、本章における記述は、平成8年6月末日までの事実に基づいている。)。


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