第4章 暴力団総合対策の推進

 警察による暴力団犯罪の取締りの徹底、国民の暴力団排除気運の高揚等により、暴力団は、社会的、経済的に追い詰められつつある中で、企業幹部等に対する襲撃事件や無差別連続発砲事件を引き起こすなど新たな動向もみせており、依然として市民生活に重大な脅威を及ぼしている。
 このような情勢の下、警察では、この種の事件を防圧、検挙するとともに暴力団組織の解散、壊滅を図るため、暴力団犯罪の取締りの強化、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という。)の効果的な運用及び暴力団排除活動の推進を3本の柱とした暴力団総合対策を強力に推進している。

1 暴力団情勢

(1) 暴力団勢力の状況
 暴力団勢力(注)は、平成6年末現在約8万1,000人で、5年に比べ約5,700人(6.6%)減少し、うち構成員は約4万8,000人で、5年に比べ約4,900人(9.3%)減少した。また、山口組、稲川会及び住吉会の3団体の構成員は約3万1,100人(前年比約3,500人(10.1%)減)であり、全構成員の64.8%を占めている。
(注) 暴力団勢力とは、暴力団の構成員及び準構成員(構成員ではないが、暴力団と関係をもちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者、又は暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力若しくは関与する者)をいう。
(2) 組織の解散、壊滅の状況
 平成6年中に解散又は壊滅した組織は211組織(構成員数1,940人)であり、5年に比べ組織数で11組織(5.0%)、構成員数で664人(25.5%)減少したが、山口組、稲川会及び住吉会の3団体の傘下組織の解散は168組織(構成員数1,487人)であり、5年に比べ、組織数で32組織(23.5%)増加し、6年中に解散又は壊滅した組織の79.6%(構成員の76.6%)を占めた。
 なお、暴力団組織の解散、壊滅数の推移は2年が80組織(構成員数1,131人)、3年が131組織(構成員数1,430人)、4年が158組織(構成員数2,051人)、5年が222組織(構成員数2,604人)となっている。

2 暴力団犯罪の検挙状況

 近年、暴力団勢力の減少や暴力団組織の解散、壊滅数の増加は顕著であり、暴力団対策法の施行を契機とした全国警察を挙げての暴力団総合対策は着実な成果をみせているといえる。
 しかし、平成6年は、企業幹部等に対する襲撃事件が多発し、また、北九州地区における連続発砲事件等けん銃を使用した凶悪な事件が相次いだ。
 さらに、暴力団が自ら支配する企業の活動を通じて多額の資金を獲得している実態が明らかとなっているが、6年も暴力団フロント企業(注)に係る犯罪の検挙が大幅に増加した。
 なお、暴力団の対立抗争及び暴力団に対する銃器の取締りについては第1章第2節参照。
(注) 暴力団フロント企業とは、暴力団が設立し、現にその経営に関与している企業又は暴力団準構成員等暴力団と親交のある者が経営する企業で、暴力団に資金提供を行うなど、暴力団組織の維持、運営に積極的に協力し、若しくは関与するものをいう。
(1) 企業対象暴力に対する取締り
ア 企業幹部等に対する襲撃事件の取締り
 近年、企業やその幹部等に対するけん銃や刃物を使用した襲撃事件が多発している。平成6年中は5件を検挙したが、そのすべてに山口組関係者がかかわっており、同組の悪質性、凶悪性を改めてみせつけた。
〔事例1〕 山口組傘下組織幹部でもある総会屋グループ代表(56)らは、昭和62年6月、京都市内の路上において、出勤途中の大手衣料メーカー幹部社員に対して、バイクで追い抜きざまに所携の刃物で切り付け、11日間の入院加療を要する傷害を負わせた。平成6年5月検挙(京都)
〔事例2〕 砂子川組傘下組織幹部(28)と山口組傘下組織組員(24)らは、2月、都内の大手フィルム会社専務宅前の路上において、同専務をインターホンで呼び出し、所携の刃物で顔面、大腿(たい)部等を突き刺すなどして殺害した。10月検挙(警視庁、大阪)
イ 企業に対する恐喝事案等の取締り
 6年に入って、総会屋、とりわけグループ総会屋は、暴力団との結び付きを一層強め、企業に対する揺さぶりをねらった質問状を多数送付したほか、情報誌の購読や寄附金の供与を求めるなど、その動きを活発化させた。
 6年中における総会屋、政治活動標ぼうゴロ等の検挙件数は597件、検挙人員は862人で、5年に比べ検挙件数が40件(7.2%)、検挙人員が54人(6.7%)それぞれ増加している(表4-1)。
〔事例1〕 総会屋で政治結社幹部でもある山口組傘下組織幹部(63)らは、大手建設会社がゴルフ場開発許可の権利に絡んで取り交わした内金1億円の返還をめぐって、これに関係した会社社長から依頼を

表4-1 総会屋等及び政治運動標ぼぅゴロの罪種別検挙状況(平成5、6年)

受け、5月、同大手建設会社工事事務所に押し掛け、応対に出た同社幹部社員に対して「街宣車を走らせる」などと脅迫し、金員を喝取しようとした。6月検挙(和歌山)
〔事例2〕 元総会屋で元山口組傘下組織幹部(51)は、元弁護士(46)らと共謀し、入手した資料を利用して大手建設会社から金員を喝取しようと企て、3年12月ころから4年1月ころまでの間、同社幹部社員に対し、同資料が談合の状況を示すものだとして「使い方によっては高いものになるぞ」と申し向け、更に同社社長あてに、「知り得た事実の全容をマスコミに披露する」などと記載した文書を郵送するなどして脅迫した。11月検挙(警視庁)
(2) 暴力団の資金獲得活動に対する取締り
ア 企業活動を利用した犯罪の取締り
 暴力団は、暴力団フロント企業等を通じて表の経済社会へ進出し、また、企業の倒産等に巧みに介入するなど、企業活動を利用して多額の資金を獲得している。
 平成6年中には、暴力団フロント企業に係る犯罪の検挙は257事件と5年に比べ47事件(22.4%)増加し、これらの事件に関与した企業は279企業に上った。このうち山口組系の暴力団フロント企業に係る犯罪の検挙は152事件、関与企業数は162企業で、それぞれ全体の約6割を占めている。  検挙した257事件の適用罪種別状況は、恐喝が34事件と最も多く、次いで詐欺25事件、貸金業規制法違反20事件、労働者派遣事業法違反18事件となっている(表4-2)。また、事件に関与していた279企業の業種別状況は、建設業が65企業と最も多く、次いで金融・保険業54企業、飲食店28企業の順となっている(表4-3)。
 また、昨年に引き続き、企業の倒産等に絡む債権取立て、不動産乗っ取り、民事執行妨害等の不況を背景とした犯罪が目立っている。
〔事例1〕 暴力団フロント企業経営者(52)らは、熊本市内のビジネスホテルを所有する女性が振り出した小切手を入手し、同女に対して厳しい取立てを行っていたところ、同女が死亡したことを奇貨として、平成4年2月ころ、ホテルに合鍵を使って入り込み、勝手にホテルを経営するなど建物及び宅地を侵奪し、さらに、同女の遺族から立ち退きを求められると、同女との間の土地建物賃貸借契約書を偽造し、これを遺族が提起した不動産明渡し訴訟に提出して行使し

表4-2 暴力団フロント企業に係る犯罪検挙件数の適用罪種別内訳(平成6年)

表4-3 検挙に係る業種別暴力団フロント企業数(平成6年)

た。6月検挙(熊本)
〔事例2〕 山口組傘下組織幹部(42)らは、広島市内の自動車販売会社社長が多額の債務を抱え、債務者から厳しい取立てを受けていることを知るや、この取立てを回避するとの名目で介入し、5年3月、同社長に対し、「家族がどうなってもええんやな」等と脅迫し、不動産の所有権移転登記に関する委任状等を作成させた上、組の関係企業名義に所有権移転登記をさせ、マンション等不動産につき時価合計3億円相当の財産上不法な利益を得た。5月検挙(広島)
イ 賭(と)博、覚せい剤事犯等伝統的資金源犯罪の取締り
 平成6年中に検挙した暴力団勢力3万3,436人(構成員1万2,922人)のうち、伝統的な資金源犯罪である覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及び公営競技関係4法違反(ノミ行為等)の4罪種に係る検挙人員は1万5,595人で、全体の46.6%を占め、そのうち、構成員検挙人員は5,085人と、全構成員検挙人員の39.4%を占めている。
 6年中は、山口組直系組長らによる大掛かりな賭博事件や薬物の大量押収事件の検挙が相次いだ。
〔事例1〕 山口組直系組長(55)らは3年7月中旬ころ、熊本市内の組事務所において、同傘下組織組長ら10数人の賭(と)客を集めて、サイコロを使用した俗に「タブ」と称する賭博をした。4月検挙(熊本、大分)
〔事例2〕 5月、稲川会傘下組織組長(43)は、栃木県内の実家等に、覚せい剤約8キログラム(末端価格13億6,000万円相当)、大麻約13キログラム(末端価格6,500万円相当)、自動小銃11丁、けん銃4丁等を隠匿所持していた。同月検挙(群馬)
ウ 外国人をめぐる暴力団犯罪
 近年、暴力団は、活動領域を海外に広げ、外国人の不法入国を手引きするブローカーとして暗躍し、外国人女性を売春婦としてあっせんするなどして資金を獲得している。
 5年に引き続き、6年中は、暴力団が介在した中国人の大量密入国事件、来日外国人と共謀して敢行した凶悪事件、外国人女性を使った売春事件等外国人をめぐる犯罪の検挙が相次いだ。また、暴力団が介在した白米、鯨肉の密輸入事件を検挙している。
〔事例1〕 5月、福博会傘下組織組長(48)らは、博多港に集団密入国した中国人約140人の逮捕を免れさせるため、密入国ブローカーと事前に打ち合わせ、食料品の購入、密入国者の倉庫への搬送等を行って、同中国人を隠匿した。同月検挙(福岡)
〔事例2〕 4月、石川一家傘下組織幹部(32)らは、税関長の許可を受けないで、長崎市内の漁港岸壁において、韓国から船で運搬してき た白米約20トンを陸揚げして売りさばき、5月、更に、同所に同様に運搬されてきた冷凍鯨肉約11トンを輸入しようとした。5月検挙(長崎)
(3) 暴力団員の大量反復検挙
 警察は、暴力団組織の中枢にあって、その運営を支配している首領、幹部をはじめとする暴力団員の大量反復検挙を徹底するとともに、犯行の組織性を解明し、その常習性、悪質性を立証することなどにより、検挙した暴力団員について適正な科刑がなされ、社会から長期にわたって隔離されるように努めている。
ア 暴力団員の検挙状況
 平成6年における暴力団勢力の検挙人員は3万3,436人(前年比534人(1.6

図4-1 暴力団勢力の検挙人員(昭和60~平成6年)

%)減)であり、このうち、構成員の検挙人員は1万2,922人(前年比1,726人(11.8%)減)である(図4-1、図4-2)。
 山口組については、6年中に検挙した企業の幹部等に対する襲撃事件

図4-2 暴力団構成員の検挙人員(昭和60~平成6年)

のすべてにかかわっているほか、現金輸送車襲撃事件、直系組長らによる公共工事受注に絡む恐喝事件の検挙にみられるようにその悪質性が際立っている。6年中の山口組の勢力の検挙人員は1万4,046人、うち構成員の検挙人員は5,425人といずれも総検挙人員の4割を超えている。また、山口組直系組長を14人検挙している。
〔事例1〕 山口組傘下組織組員(61)は、住吉会傘下組織幹部(47)らと共謀し、5年10月、山形市内のショッピングセンター付近路上において、こん棒、スタンガン等を使用して現金輸送車を襲撃し、輸送に従事していた銀行員に全治1週間の傷害を負わせ、現金約2億円を強奪しようとした。2月検挙(山形)
〔事例2〕 山口組直系組長(56)らは、自己の影響下にある建設業者の親睦団体に加入しないで営業活動を行っている土建業者から「付き合い料」名下に金員を徴収することを企て、3年11月、同人を同組長が経営する会社に呼び付け、「お前も毎月決まった金を入れろ」等と脅迫し、4年6月ころから6年3月までの間、3回にわたり合計700万円を喝取した。10月検挙(大阪)
イ 暴力団犯罪の傾向
 暴力団勢力の検挙人員を刑法犯、特別法犯別にみると、5年に比べ、刑法犯で385人(1.9%)、特別法犯で149人(1.1%)それぞれ減少している。また、罪種別では、覚せい剤取締法違反が6,328人(構成比18.9%)で最も多く、次いで傷害4,833人(14.5%)、恐喝3,192人(9.5%)、賭博2,925人(8.7%)の順となっている。なお、暴力団の構成員の検挙人員では、刑法犯で782人(8.5%)、特別法犯で944人(17.2%)それぞれ減少している。

3 暴力団対策法の施行状況

(1) 指定状況
 平成6年中は、新たに3団体が指定暴力団として指定された。また、暴力団対策法施行後、6年末までに指定された暴力団は25団体となり、全暴力団員の87.7%が暴力団対策法の規制の対象となった(表4-4)。
(2) 中止命令等の発出状況
 平成6年中は1,057件の中止命令を発出しており(表4-5)、4年の

表4-4 指定暴力団の指定の状況(平成7年2月15日現在)

暴力団対策法施行以降発出した中止命令は1,908件に上っている。
 6年の中止命令を形態別にみると、資金獲得活動である暴力的要求行為に対するものが613件(58.0%)、脱退妨害、加入強要に対するものが405件(38.3%)である。また、暴力的要求行為のうち、伝統的な資金獲得活動であるみかじめ料、用心棒料等要求行為に対するものは248件(23.5%)を占めた。
 団体別にみると、山口組に対するものが469件(44.4%)、次いで稲川会169件(16.0%)、住吉会149件(14.1%)の順であり、3団体に対する中止命令件数が、全体の74.5%を占めている。
 また、6年中においては、37件の再発防止命令を発出しているほか、再発防止命令を受けていたにもかかわらずみかじめ料を要求した二代目工藤連合草野一家傘下組織組員を、10月、福岡県警察が全国初の暴力団対策法違反事件で検挙した。
 なお、命令が発出された事案のうち、被害者の申出を受けたものについて、都道府県公安委員会が48件の援助を行っており、これにより、中止命令を受けた指定暴力団員が支払いの免除又は猶予を要求していた債務を弁済するなど、指定暴力団員による暴力的要求行為の相手方の被害の回復が図られている。
〔事例1〕 二代目工藤連合草野一家傘下組織組員(61)は、他の者が競売により買い受けたマンションに、自分の荷物を置くなどして占有していたが、3月、同人に対して、同マンションについて支配の誇示をやめることの対償として金品を要求した。8月中止命令(福岡)
〔事例2〕 山口組傘下組織組員(51)は5年11月中旬ころから6年1月下旬までの間、共同企業体が大阪市から受注して行う地下鉄工事に関して、同共同企業体及びその下請会社等に対して、警備業務の提供の受入れ等を要求した。6月再発防止命令(大阪)

表4-5 暴力団対策法に基づく中止命令及び再発防止命令件数(平成4~6年)

(3) 暴力団員の離脱促進、社会復帰対策の状況
 警察及び都道府県暴力追放運動推進センター(以下「都道府県センター」という。)が相談活動等を通じて離脱意思を有することを認知し、又は離脱することを説得し、かつ、その者に対する援護の措置等を行うことにより暴力団から離脱させた暴力団員は、平成6年中は710人であり、暴力団対策法の施行後2,120人に上っている。
 また、関係行政機関や民間団体と連携を図り全国に設立された社会復帰対策協議会には6年末までに約5,460社の協賛企業が加入しており、同協議会を通じて約250人の元暴力団員が就業に成功している。
(4) 責任者講習の実施状況
 警察及び都道府県センターによって、暴力団対策法に基づく各事業所の不当要求防止責任者に対する講習(以下「責任者講習」という。)が実施されており、平成5年4月1日から6年3月末までに、暴力団員による不当要求の被害を受けやすい金融・保険業、建設・不動産業、ぱちんこ営業等を中心に約5万6,200人の不当要求防止責任者が受講した。
〔事例〕 建設会社の不当要求防止責任者が、4月、暴力団員風の男から機関紙の購読を要求されたことに対し、責任者講習を受講して習得した対応要領に従って自信をもって対応し、「不必要なので機関紙は購読しない」として、き然とした態度でこれを拒否し撃退した(岐阜)。

4 暴力団排除活動の現状

(1) 暴力追放運動推進センターの活動状況
 都道府県センターは、暴力団排除活動の中核として、暴力団員による不当な行為に関する相談事業をはじめ、暴力団員の違法、不当な行為による被害者への見舞金の支給、訴訟費用の貸付け、暴力団員の組織離脱の支援等、警察等関係機関との連携の下に活発な活動を展開している。
 とりわけ、平成6年は、警察の取締りと連動して、都道府県センターが地域住民の活動を支援することにより、効果的な暴力団事務所撤去活動が推進された。
 6年中に都道府県センターに寄せられた困りごと等の相談を相談種別にみると、表4-6のとおりである(前年比1,732件増)。
 警察及び都道府県センターに寄せられた相談の種別をみると、「暴力団対策法第9条各号に関する相談」が9,625件(31.7%)であり、なかでも「因縁をつけての金品要求行為」、「不当債務免除要求行為」、「不当贈与要求行為」等、市民生活に不当に介入する形態での資金獲得活動に関する相談が多いことがうかがわれる。「離脱に関する相談」は1,962件(6.5%)に上っている。
 また、11月29日には、村山首相の出席の下に第2回全国暴力追放運動中央大会が開催され、暴力団排除気運を盛り上げた。
〔事例〕 暴力団組長は、組事務所建設に際し、その敷地上にあった同組長の妻名義の建物を同建物の抵当権者に無断で取り壊し、建造物損壊事件で検挙されたが、かねてから同組事務所の撤去運動を支援していた暴力追放県民センターは、抵当権者の申立てにより同事務所敷地の競売申立てがなされたのに際し、住民の意向を受けて入札に参加し、9月、競落した(徳島)。
(2) 暴力団、暴力団利用者等の公共事業等からの排除
 暴力団の資金源を遮断するため、暴力団、暴力団フロント企業及び暴力団利用者を公共事業から排除する「公共事業からの暴力団排除」をはじめとした、地方公共団体における暴力団排除活動が積極的に推進された。
 警察としても、暴力団犯罪の取締りに当たっては、犯罪を検挙するだ

表4-6 相談種別暴力団関係相談件数(平成6年)

けでなく、捜査の結果判明した事実を基に、税務当局に対する課税通報をはじめ、関係機関と連携して、暴力団、暴力団フロント企業及び暴力団利用者を公共工事から排除するなど、暴力団排除活動を推進している。
〔事例〕 暴力団組長が実質的に経営している建設会社の建設業法違反事件を検挙して、その実態を解明し、関係機関に排除要請を行った結果、3月、同会社は、公共工事から排除され、建設業許可が取り消された(大阪)。
(3) 暴力団員を相手取った民事訴訟の動向
 平成6年は、5年に引き続き、地域住民等が原告となる暴力団事務所の撤去、使用差止め訴訟や暴力団員の不法行為による被害回復のための損害賠償請求訴訟が活発に提起されるなど、国民が民事訴訟により暴力団の被害から自らの権利や生活を守り、あるいは被害の回復を図ろうとする事例が目立った。
 なかでも、町政批判名目で街頭宣伝活動を行った暴力団組長らに対し、当該活動を差し止めるとともに、違反行為に対する制裁金を命じた仮処分が認められ、制裁金の不払いに対して街宣車を差し押さえた事例や、暴力団員による犯罪行為の被害者からの損害賠償請求訴訟において、実行行為者の所属する暴力団の組長について、民法第719条(共同不法行為責任)に基づく賠償責任を認める判決が出された事例等、被害回復の道を広げる画期的な判決、決定が出されている。
〔事例〕 暴力団組長らがその組織の威力を利用し、運転代行業者の組合を組織して自己の支配下に置くことを企てた際、同組の複数の組員が、これに反対した女性が経営する運転代行会社の従業員に対して再三にわたり嫌がらせをしたほか、同女の顔面等を切りつけて約3週間の傷害を負わせたことなどの一連の事案について、組長を刑事上の共謀共同正犯として立件するには至らなかったものの、同女等が、同組長等から受けた不法行為による被害の回復のため提起した民事訴訟において、3月、共同不法行為責任に基づく損害賠償責任が認められた(佐賀)。


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