第3節 風俗営業の健全化と風俗環境の浄化

1 風俗営業の健全化

 警察では、風営適正化法等に基づき、風俗営業に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
(1) 風俗営業の状況
 最近5年間の料飲関係営業等(風営適正化法第2条第1項第1号から第6号まで)の営業所数の推移は、表2-29のとおりである。また、遊技場営業(風営適正化法第2条第1項第7号及び第8号)の営業所数の推移は、表2-30のとおりである。

表2-29 風俗営業(料飲関係営業等)の営業所数の推移(平成2~6年)

 ぱちんこ屋の営業所数は、増加の傾向にあり、平成6年の営業所数は1万7,453軒(前年比211軒増)である。また、風営適正化法の許可を受けたゲームセンター等は、営業所数は減少の傾向にあるが、6年の1営業所当たりの遊技設備の平均設置台数は昭和60年の約1.7倍、100台を超える

表2-30 風俗営業(遊技場営業)の営業所数の推移(平成2~6年)

遊技設備を設置している平成6年の営業所数は昭和60年の約3.2倍であるなど、大型化の傾向にある。
(2) 風俗営業の健全化に向けた施策の推進
ア 風俗営業からの暴力団排除
 ぱちんこ営業等の風俗営業は、その営業の健全化を阻害する大きな要因である暴力団の関与が依然としてみられるが、暴力団対策法施行後、風俗営業者の間でも暴力団排除機運が盛り上がりをみせており、暴力団排除総決起大会、暴力団撃退研修会等の開催、みかじめ料支払拒否運動等の暴力団排除活動が活発に展開されるようになってきている。警察では、暴力団が関与する事件の取締りを推進するとともに、風俗営業者の自主的な暴力団排除活動を積極的に支援している。
イ ぱちんこ営業の健全化
 ぱちんこ営業は、国民の身近で手軽な娯楽を提供する産業として大きく成長しているが、依然として暴力団の関与がみられること、営業所数の増加に伴う営業者同士の過当競争の結果、遊技機の内部の電子部品を不正に改造した著しく客の射幸心をそそるおそれのある遊技機を使用した違法な営業が後を絶たないことなど多くの健全化を阻害する要因を抱えている。このため、警察では、遊技機の不正改造事犯等の取締りを推進するとともに、関係団体による自主的な健全化のための活動を支援するなど、ぱちんこ営業の健全化を図っている。
〔事例1〕 10月、沖縄県において、改造を加えた遊技機を設置することを秘して許可を取得していた業界大手のぱちんこ営業者を風営適正化法違反で検挙し、12月、関係6都県公安委員会において、同営業者のぱちんこ屋30店舗の許可を取り消した。
〔事例2〕 遊技機製造業組合の商標を無断使用して正規部品のごとく装って製造した1万個余りの部品を全国のぱちんこ屋に密売していた密造関係者及び密造工場を商標法違反で摘発。改造事犯まん延の背景にある大規模密造グループの存在を解明(大阪)
ウ 管理者講習の実施
 警察では、風俗営業の営業所ごとに選任された管理者を対象として、風営適正化法に規定する遵守事項や暴力団からみかじめ料等を要求された場合の対応要領等について指導を行う管理者講習を実施している。その最近5年間の実施状況は、表2-31のとおりである。

表2-31 管理者講習の実施状況(平成2~6年)

2 深夜飲食店営業の状況

 最近5年間の深夜飲食店営業の営業所数の推移は、表2-32のとおりである。

表2-32 深夜飲食店営業の営業所数の推移(平成2~6年)

3 風俗関連営業の状況

表2-33 風俗関連営業の営業所数の推移(平成2~6年)

 最近5年間の風俗関連営業の営業所数は表2-33のとおりである。平成6年の風俗関連営業の違反態様別検挙状況は図2-13のとおりであり、検挙総数663件の68.0%を売春防止法違反が占めている。また、性風俗に関する営業であるが、風俗関連営業とされていないテレホンクラブについての警察の把握する最近5年間の営業所数の推移は表2-34のとおりである。

図2-13 風俗関連営業の違反態様別検挙状況(平成6年)

表2-34 テレホンクラブの営業所数の推移(平成2~6年)

4 売春事犯等及びわいせつ事犯の現況

(1) 売春事犯等
 平成6年の売春防止法違反の検挙件数は4,987件で、最近5年間の検挙状況は、表2-35のとおりである。これらの売春事犯の総検挙人員に占める暴力団勢力の割合は18.1%(357人)であり、売春事犯が暴力団の資金源となっていることがうかがわれる。最近の売春事犯は、公衆電話ボックス等にビラをはり付け、客との連絡に転送電話や携帯電話等を利用して売春をあっせんするなどの派遣型が主流となっているが、悪質な飲食店経営者等が外国人女性に売春を強要する事犯も目立っている。

表2-35 売春防止法違反の検挙状況(平成2~6年)

〔事例〕 大阪の盛り場であるミナミ地区において、約10箇月にわたる集中取締りを行った結果、公衆電話ボックスにビラをはるなどして売春をあっせんしていたデートクラブや、不法滞在している外国人女性に売春させていた飲食店を摘発し、暴力団組員ら132人を売春防止法違反、入管法違反等で検挙、売春誘引用のビラ約61万枚を押収した。
(2) わいせつ事犯
 平成6年のわいせつ事犯の検挙件数は1,742件で、最近5年間の検挙状況は、表2-36のとおりである。わいせつ物頒布等では、わいせつビデオテープを販売する事犯が依然としてその主流を占めているが、わいせつな画像情報を記憶させた光磁気ディスクやCD-ROMを販売する事犯もみられる。また、パソコン通信を利用して申込みを受ける新しい販売形態の事犯がみられる。

表2-36 わいせつ事犯の検挙状況(平成2~6年)

〔事例1〕 わいせつビデオテープを密造、販売して不法な利益を得ていた暴力団組員ら82人をわいせつ図画販売目的所持等で検挙するとともに、わいせつビデオテープ約5万5,000巻を押収(富山)
〔事例2〕 わいせつな画像情報を記憶した光磁気ディスク等をパソコン通信と宅配便を利用して販売していた会社員ら9人をわいせつ図画販売等で検挙(神奈川)

5 その他の風俗関係事犯の現況

(1) ゲーム機等使用賭(と)博事犯
 最近5年間のゲーム機等を使用した賭博事犯の検挙状況は、表2-37のとおりであり、平成6年の検挙件数は251件、検挙人員は1,991人、検挙営業所数は241軒、ゲーム機の押収台数は2,198台、押収賭金は約2億3,000万円に上っている。これら事犯の中には、暴力団が関与してその活動資金としている事例も多数みられ、また、最近は、トランプゲームやルーレット用の設備を設けて遊技をさせる「カジノバー」といわれる営業における賭博事犯が増加している。

表2-37 ゲーム機使用による賭(と)博事犯の検挙状況(平成2~6年)

〔事例〕 9月、トランプ用の設備を設けて客に賭博をさせていた「カジノバー」を摘発し、経営者(44)、客(41)、ゲーム台販売業者(55)、ゲーム場を経営者に賃貸した不動産業者(62)ら50人を賭博開帳図利等で検挙、トランプ台5台、賭金約2,600万円を押収(警視庁)
(2) ノミ行為事犯等
 競馬、競輪等の公営競技をめぐるノミ行為事犯の最近5年間の検挙状況は表2-38のとおりである。ノミ行為事犯のほとんどが競技場外で行われており、ノミの受付に転送電話を使用するなど悪質巧妙化している。また、総検挙件数の約8割に暴力団が関与しており、暴力団の有力な資金源となっていることがうかがわれる。

表2-38 ノミ行為事犯の検挙状況(平成2~6年)

〔事例〕 約10箇月間にわたり暴力団の関与するノミ行為事犯の集中取締りを行った結果、暴力団組員ら1,034人を競馬法違反、自転車競技法違反等で検挙(愛知)

6 風俗環境の浄化活動

(1) 風俗環境浄化協会の活動
 風俗環境浄化協会は、風俗環境に関する苦情の処理、風営適正化法に違反する行為を防止するための啓発活動、少年指導委員の活動に対する援助等を行っている。
(2) 地域住民と連携した風俗環境浄化活動
 盛り場等の風俗環境の悪化に対して、警察では、悪質な風俗関係事犯の積極的な取締りを推進するとともに、地域住民や関係団体と協力して風俗環境の浄化に努めている。
〔事例〕 日本最大の盛り場である東京都新宿区の歌舞伎町地区において、地域住民と連携して「新宿地区環境浄化総合対策」を展開し、多数の風俗関係事犯を検挙するなど風俗環境の浄化を強力に推進した。


目次  前ページ  次ページ