第10章 警察活動と国際協力、国際交流

1 外国捜査機関との捜査協力、ICPOにおける活動、海外での警察活動

 近年、国際犯罪の増加に伴い、外国捜査機関との国際協力を行うことが一層重要になっている。
 外国からの依頼に基づき捜査共助を行う場合、外交ルートによるものと、より迅速、簡易な手続で行われるICPOルートによるものがある。平成3年中の外国からの依頼に基づく捜査共助の件数は629件(うち外交ルートによるものが1件、ICPOルートによるものが628件)で、年々増加する傾向にある。
〔事例〕 盗難届が出された車が日本に持ち込まれているとの情報に基づき、ICPOルートで車両の発見の依頼を受け、我が国で調査を行ったところ、その車両は盗難届を出した本人から日本人が正規に購入したものであることが判明した。当該国警察では、保険金目的詐欺事件として捜査を開始した。
 また、近年国際的な取組みが進んでいる薬物犯罪に関しては、常時外国関係機関との情報交換を実施しており、また、積極的な捜査協力を行っている。
 さらに、海外における警察活動として、3年には、湾岸危機の発生に伴い、国際移住機構の要請に基づいて、イラク等の紛争地域からエジプト・カイロに避難していたベトナム人、タイ人1,046人を我が国の民間航 空機により本国へ輸送するに際し、警察官を航空機に同乗させてハイジャック等のテロ行為の未然防止に当たった。

2 途上国に対する技術協力、援助

 警察では、途上国に対して様々な技術協力、援助を行い、途上国の通信施設等の近代化、鑑識技術の向上等に協力している。
 平成3年には、国際協力事業団(JICA)と協力して交通規制、高速道路、交通管理に関する技術移転のため、専門家及び調査団延べ13人を中国に派遣したほか、ICPO通信網近代化計画に基づき、政府開発援助(ODA)により供与した通信機材の運用、保守等の技術指導を行うためヨルダン及びバングラデシュへそれぞれ警察職員1人を派遣する

表10-1 途上国に対する技術協力、援助(平成3年)

などの技術協力、援助を行った。
 3年中に警察が行った途上国に対する主な技術協力、援助については、表10-1のとおりである。

3 海外研修、スポーツ交流

 平成3年には、米国における英会話研修及び現地警察における研修に全国の青年警察官83人が参加したほか、13都道府県警察の幹部職員16人がローマ及びマドリード警察における地域警察活動についての研修等に参加した。
 また、3年中、警察では、柔道及び剣道の講師として世界21箇国に延べ16人の職員を派遣したほか、国際スポーツ大会延べ6種目24回に、監督、選手等延べ86人を派遣している。

4 各種セミナーの開催、外国関係機関からの人の受入れ、共同研究、国際会議への出席

(1) 各種セミナーの開催
 警察では、外国の研修員の受入れ等の海外技術協力を推進し、外国の警察職員に対する捜査技術や警察制度の紹介等に努めている。
 平成3年には、国際捜査研修所において、アジア各国の警察幹部を対象とした外国上級警察幹部研修を実施したほか、国際捜査セミナー、アジア地域組織犯罪対策セミナー、フィリピン捜査幹部セミナー等を開催している。
 3年中に警察が単独で、又は国際協力事業団等の協力により開催した主なセミナーについては、表10-2のとおりである。

表10-2 警察が開催した主なセミナー(平成3年)

(2) 外国機関からの人の受入れ、国際会議への出席
 警察では、来日した外国の警察職員、学者等による日本警察の視察を実施するとともに、各種国際会議に職員を派遣し国際交流に努めている。
 平成3年は、米国法学者に対する兵庫県神戸西警察署の見学、インドネシア上級警察幹部に対する交通警察研修等を実施するとともに、国際麻薬取締り会議、環太平洋税関会議等に出席した。
 3年中に警察が受け入れた外国関係者の状況については、表10-3、また、警察職員が参加した国際会議については、表10-4のとおりである。

表10-3 警察が受け入れた主な外国関係者の状況(平成3年)

表10-4 警察職員が参加した主な国際会議(平成3年)

5 国際警察緊急援助隊の活動

 警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律に基づき、発展途上にある海外の地域等における大規模な自然災害の発生に際し、迅速かつ効果的な救助活動を行うため、国際警察緊急援助隊の充実に努め、携行資機材の整備、救出及び救護訓練等を行ってきた。
 平成3年中は、国際警察緊急援助隊の派遣は行われなかったが、警察では、関係機関との合同訓練を実施したほか、各都道府県警察においても訓練を行い、派遣に備えた。


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