第3章 少年非行の防止と少年の健全な育成

 我が国の次代を担う少年の非行を防止し、その健全な育成を図ることは、国民すべての願いである。
 少年非行は、戦後最高を記録した昭和58年以降、増減を繰り返しながら推移し、平成3年の刑法犯少年は前年に比べやや減少したものの、成人を含めた刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は、3年連続して過半数を占めた。内容的には、万引き、自転車盗等の初発型非行や低年齢層の少年による非行が高い比率を占めているほか、無職少年が女性アナウンサーをマンションの廊下で待ち伏せ殺害した事件のように凶悪、粗暴な非行が目立つなど、少年非行は憂慮すべき状況にある。
 少年を取り巻く環境についても、少年に与える影響が懸念される漫画やビデオソフト、パソコン用ゲームソフトが氾(はん)濫しているほか、自転車、オートバイの路上放置や店員の目が行き届かない大型販売店舗の増加といった初発型非行を誘発しやすい環境が多くみられる。また、少女売春、シンナー密売等の少年の健全な育成を阻害する犯罪も跡を絶たない。さらに、暴力団の少年に及ぼす影響についても、少年の健全な育成を阻害する犯罪への暴力団の関与や、少年を暴力団の活動に使用するといった問題がみられる。
 このような情勢に対処するため、警察では、非行少年等の補導、少年の福祉を害する犯罪の取締り、少年相談のほか、関係機関、団体等との連携を一層強化し、非行を誘発させない環境づくり等の諸活動を推進している。

1 少年非行の現状

(1) 刑法犯少年の状況
ア 概要
 平成3年の刑法犯少年は14万9,663人で、前年に比べ4,505人(2.9%)減少した。これを男女別にみると、男子が11万8,924人、女子が3万739人で、前年に比べ、男子は854人(0.7%)、女子は3,651人(10.6%)それぞれ減少した(資料編統計3-2参照)。しかし、成人を含めた刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は50.5%で、前年を2.1ポイント下回ったものの、3年連続して過半数を占めた。

図3-1 刑法犯少年のうち主要刑法犯で補導したものの人員、人口比の推移(昭和24~平成3年)

 刑法犯少年のうち主要刑法犯で補導したものの人員、人口比(注)の推移を現行少年法が施行された昭和24年以降についてみると、図3-1のとおりである。
(注) 人口比とは、同年齢層の人口1,000人当たりの補導人員をいう。
イ 70%を超える初発型非行
 平成3年の刑法犯少年の包括罪種別補導状況は、図3-2のとおりで、窃盗犯が10万1,187人と全体の67.6%を占めて最も多く、次いで占有離脱物横領の2万7,227人(18.2%)の順となっている。

図3-2 刑法犯少年の包括罪種別補導状況(平成3年)

 警察では、単純な動機から安易に行われることが多いと考えられる万引き、自転車盗、オートバイ盗、占有離脱物横領の4種を初発型非行と呼んでいるが、これらは、粗暴犯、薬物乱用等の本格的な非行の入口ともなるものであり、ゆるがせにできない非行形態である。3年の刑法犯少年のうち初発型非行で補導したものの数は10万7,138人で、前年に比べ2,040人(1.9%)減少したが、刑法犯少年総数に占める割合は71.6%と前年を0.8ポイント上回った。
 過去10年間における刑法犯少年のうち初発型非行で補導したものの数の推移は、図3-3のとおりで、刑法犯少年総数に占める割合は、昭和63年に70%を超え、増加傾向にある。これは、自転車、オートバイの路上放置、店員の目が行き届かない大型販売店舗の増加等、非行を誘発しやすい環境が多くみられることや少年自身の規範意識が低下していることなどによるものとみられる。

図3-3 刑法犯少年のうち初発型非行で補導したものの数の推移(昭和57~平成3年)

ウ 14歳から16歳が非行の中心
 平成3年の刑法犯少年の年齢別補導状況は、図3-4のとおりで、3年は、14歳から16歳までの低年齢層の少年が刑法犯少年全体の67.9%を占めている。

図3-4 刑法犯少年の年齢別補導状況(平成3年)

〔事例〕 高校生ら8人(高校1年生(15)1人、高校2年生(16)3人、無職少年(16)4人)は、路上で始発電車を待っていた大学生(20)と専門学校生(19)の周りを取り囲んで暴行を加え、ビール瓶の割れ口で顔面に切り付けるなどした上、ショルダーバックを強取し、大学生を死亡させた(警視庁)。
エ 凶悪、粗暴な非行が目立つ無職少年
 3年の刑法犯少年の学職別補導状況は、図3-5のとおりで、高校生が5万8,558人(39.1%)と最も多く、次いで中学生の順となっている。

図3-5 刑法犯少年の学職別補導状況(平成3年)

 また、人口構成比では2.9%にすぎない無職少年が、刑法犯少年全体の10.0%を占めている。3年における刑法犯少年のうち無職少年の罪種別補導状況は、表3-1のとおりで、

表3-1 刑法犯少年のうち無職少年の罪種別補導状況(平成3年)

凶悪犯、粗暴犯等の非行に占める無職少年の割合が高いことが注目される。
〔事例1〕 無職少年2人(いずれも16歳)は、ナイフや包丁で信用金庫の女性窓口係員を脅迫して、カウンター内の現金255万円を強取し、そのうち指名手配された1人は、逃走先のマンションの1室で、逮捕を免れるため同所にいた少年6人を人質にして立てこもった(大阪)。
〔事例2〕 無職少年(18)は、女性アナウンサーが居住するマンションの屋外で帰宅を待ち伏せ、マンション内の廊下において、部屋に入ろうとした同女を背後から襲い、ナイフで顔面、胸部等を突き刺して殺害した(北海道)。
(2) 触法少年(刑法)の状況
 平成3年の触法少年(刑法)は2万7,434人で、前年に比べ726人(2.6%)減少した。過去10年間の触法少年(刑法)の数の推移は、表3-2のとおりである。

表3-2 触法少年(刑法)の数の推移(昭和57~平成3年)

(3) シンナー、覚せい剤等の薬物乱用
 平成3年にシンナー等の乱用及び覚せい剤事犯で補導した犯罪少年の学職別状況は、表3-3のとおりである。特に、覚せい剤事犯で補導した犯罪少年の数は943人で、前年に比べ174人(22.6%)増加していることが注目される。
 これを学職別にみると、シンナー等の乱用では、有職少年が7,824人と

表3-3 シンナー等の乱用及び覚せい剤事犯で補導した犯罪少年の学職別状況(平成3年)

全体の38.9%を占めて最も多く、また、覚せい剤事犯では、無職少年が572人と全体の60.7%を占めて最も多い。
 これを男女別にみると、シンナー等の乱用では、女子の占める割合が約3割であるのに対し、覚せい剤事犯では半数を超えており、しかも、学生、生徒では、女子が約7割を占めている。また、近年の傾向として、シンナー等、覚せい剤の乱用とも女子の占める割合が増加を続けていることが注目される。
〔事例〕 女子高校生ら3人(いずれも17歳)は、知人を介して知り合った住吉会系暴力団員から覚せい剤、シンナー等を譲り受け、乱用していた(埼玉)。
(4) その他の少年非行の形態
ア 暴走族少年
 平成3年に犯罪少年として補導した暴走族少年は3,949人で、前年に比べ90人(2.3%)増加した。その罪種別補導状況は、表3-4のとおりである。
 犯罪少年として補導した暴走族少年の数は、昭和60年以降わずかなが

表3-4 暴走族少年の補導状況(平成2、3年)

ら増加を続けており、罪種別では窃盗、傷害が高い比率を占めている。
〔事例〕 暴走族構成員9人(成人1人、他は16歳から19歳の少年)は、歩行中の飲食店店員2人(23歳、20歳)を襲撃し、持っていた鉄パイプ等で暴行を加えて、1人を死亡させ、他の1人に全治9日の傷害を負わせた(警視庁)。
イ 校内暴力、いじめに起因する事件
 3年に警察が処理した校内暴力事件の状況は、表3-5のとおりであり、処理件数は625件で、前年に比べ155件(19.9%)減少した。また、校内暴力事件のうち教師に対する暴力事件は380件で、前年に比べ86件

表3-5 警察が処理した校内暴力事件の状況(平成3年)

(18.5%)減少した。
 校内暴力事件については、教育委員会、学校等と連携を図って対処しているが、総数、教師に対する暴力事件とも減少傾向にあり、警察の処理を必要としている事案が減少していることがうかがわれる。
 3年にいじめ(注)に起因する事件で補導した少年の状況は、表3-6のとおりであり、補導人員は305人で、前年に比べ41人(11.8%)減少した。

表3-6 いじめに起因する事件で補導した少年の状況(平成2、3年)

(注) 警察では、いじめを「単独又は複数の特定人に対し、身体に対する物理的攻撃又は言動による脅し、いやがらせ、無視等の心理的圧迫を反復継続して加えることにより、苦痛を与えること(ただし、番長グループや暴走族同士による対立抗争事案を除く。)」と定義している。
〔事例〕 中学3年生4人(男女各2人)は、校庭で約30分間にわたり、女子同級生(15)の頭部、腹部、背中を足げりするなどして死亡させた(大阪)。
 このように、校内暴力事件、いじめに起因する事件のような粗暴な行動は減少しているが、反面、無気力、引きこもり、登校拒否等の問題行動が近年増加してきていることが指摘されている。
ウ 家庭内暴力
 3年に少年相談等を通じて警察が把握した家庭内暴力の対象別状況は、表3-7のとおりで、母親に対するものが56.1%と最も多い。

表3-7 家庭内暴力の対象別状況(平成3年)

(5) 問題行動
ア 不良行為少年
 平成3年に補導した不良行為少年は76万6,628人、その態様別状況は、図3-6のとおりであり、依然として喫煙や盛り場等における深夜はいかいが跡を絶たない。

図3-6 不良行為少年の態様別状況(平成3年)

イ 性の逸脱行為
 3年に性の逸脱行為で補導した女子(注)は4,857人で、前年に比べ45人(0.9%)減少した。学職別では、無職少年が1,461人(30.1%)と最も多い。
(注) 性の逸脱行為で補導した女子とは、売春防止法違反事件の売春をしていた女子少年、児童福祉法違反(淫(いん)行させる行為)事件、青少年保護育成条例違反(みだらな性行為)事件及び刑法上の淫(いん)行勧誘事件の被害女子少年、ぐ犯少年のうち不純な性行為を行っていた女子少年並びに不良行為少年のうち不純な性行為を反復していた女子少年をいう。
 補導した女子の性の逸脱行為の動機についてみると、興味(好奇心)によるものが41.4%を占めて最も多く、次いで遊ぶ金欲しさによるもの (19.9%)の順となっている(資料編統計3-4参照)。
ウ 家出
 3年に警察が発見し、保護した家出少年は4万280人で、前年に比べ4,438人(9.9%)減少した。その学職別状況は、表3-8のとおりで、中学生が32.9%と最も多い。また、男女別では女子が54.7%と過半数を占めており、ここ数年このような傾向が続いている。

表3-8 家出少年の学職別状況(平成3年)

 なお、3年の春と秋の全国家出少年発見保護活動強化月間中に保護した家出少年のうち、非行に走った少年は7.6人に1人、犯罪の被害者となった少年は30.0人に1人であるが、これを男女別にみると、男子では5.6人に1人が非行に走り、女子では17.0人に1人が犯罪の被害者となっている。
 また、新しい傾向として、3年には、ダイヤルQ2で知り合ったことをきっかけとして家出した事例がみられた。
エ 自殺
 3年に警察が把握した少年の自殺者は454人で、前年に比べ13人(2.8%)減少した。その学職別状況は、表3-9のとおりで、男女とも高校生の自殺が最も多い。また、自殺の動機についてみると、学校問題が115人(25.3%)と最も多く、次いで病苦等、異性問題、家庭問題の順となっている(資料編統計3-5、なお、成人を含めた自殺全般については統計2-1統計2-2参照)。

表3-9 自殺した少年の学職別状況(平成3年)

 少年の自殺については減少傾向にあり、3年には戦後最低を記録した。

2 少年を取り巻く環境の現状と対策

(1) 有害な情報メディア
 最近の少年を取り巻く社会環境をみると、様々なメディアにおいて少年の健全な育成に有害な性に関する情報が氾(はん)濫している。
 例えば、表紙や題名だけをみると一般の少年少女向け漫画と同じようだが内容には露骨な性描写を盛り込んだ漫画が、一般書店やコンビニエンスストアで販売されている。また、NTTが平成元年に開始した電話情報サービスであるダイヤルQ2でも、性に関する女性の独白をテープで流す番組等が跡を絶たず、このシステムを使用して営業所で待機している女性と性的な会話をさせるという新たな営業形態(逆テレクラ)も出現している。さらに、パソコン用のゲームソフトで、漫画と同様、題名やカバーは一般のゲームソフトと同じだが、内容には学校での性交場面等を盛り込み、ゲームをする者がそれらをいわば擬似体験できるものが、大手の電器販売店、デパート等で販売されている。また、このような有害な情報に触発された少年事件も発生している。
 3年には、青少年保護育成条例に基づき、露骨な性描写を盛り込んだ少年少女向け漫画について、全国で延べ約4,900冊が有害な図書として指定された。また、警察では、関係機関と連携して、出版関係業界等に対し、販売方法等について自主規制の徹底を要請しており、さらに、法令に違反する行為については積極的な取締りに努めている。
〔事例〕 露骨な性描写を盛り込んだ少年向けパソコン用ゲームソフトを製造し、通信販売するほか、全国の電機製品小売店等に卸売していた東京都内のパソコンソフト製造販売会社2社の社長等5人を猥褻(わいせつ)物販売目的所持で検挙するとともに、パソコン用ゲームソフト等多数を押収した(京都)。

(2) 暴力団
 暴力団は組織勢力拡大のため少年に対し加入の勧誘をし、また、少年に対するシンナー等の密売や少女売春等の少年の福祉を害する犯罪(福祉犯)を敢行して少年を食い物にするなど少年の健全育成を著しく阻害している。
 暴力団員が福祉犯の総検挙人員に占める割合は10.0%であるが、覚せい剤取締法違反や児童福祉法の少女に淫(いん)行をさせる行為では、暴力団員の占める比率が高くなっている。このため、暴力団員等による覚せい剤、シンナー等の密売事犯、少女を対象とした性的事犯等福祉犯の取締りを積極的に行っている。
〔事例〕 暴力団幹部(42)は、無職少女(16)にささいなことで因縁を付け、同女をホテルに連れ込んで下着1枚にした上に暴行を加え、「お前のお陰で2,000万円の穴をあけた。どうしてくれる。ソープで働いて返せ」などと脅迫し、芸妓(ぎ)置屋に現金200万円で売り渡した。4月、職業安定法違反等で逮捕(神奈川)
 また、警察では、少年相談や暴力団が少年を食い物にしている実態等を明らかにした広報資料の作成等を通じ、少年の暴力団への加入の防止と脱退の促進を図っている。
〔事例〕 「男子高校生(15)が中学校の先輩である暴力団員(19)から『事務所に掃除をしに来い。事務所当番をしろ』と言われて組事務所に出入りしているようなので、事実を調べてやめさせてほしい」という教師からの相談を受け、事実を確認した上、高校生が出入りしていた暴力団の幹部に警告して、暴力団から離脱させた(栃木)。

3 少年非行防止、健全育成対策の推進

(1) 非行少年等の補導活動
 少年の非行を防止し、その健全な育成を図るためには、非行に陥った少年を早期に発見し、再び非行に陥らせないようにすることが最も大切である。警察では、日ごろから、少年係の警察官、婦人補導員等を中心に、盛り場、公園等非行の行われやすい場所で街頭補導を実施している。
 非行少年を発見したときは、少年の特性に十分配慮し、保護者等と連絡を取りながら、非行の原因、背景、少年の性格、交友関係、保護者の監護能力等を検討し、再非行防止のための処遇についての意見を付して関係機関に送致、通告するなどの措置を採っている。また、不良行為少年については、警察官等がその場で注意や助言を与えたり、必要な場合には保護者等に対して指導や助言を行っている。
(2) 少年の福祉を害する犯罪の取締り
 少女に売春をさせたり、少年にシンナー等を密売するなどの福祉犯の傾向をみると、享楽的な社会風潮を背景として、コンパニオンクラブ、テレホンクラブ等の営業に係る事犯が目立っているが、これらの犯罪は、少年の心身に有害な影響を及ぼし、少年の健全な育成を著しく阻害するものであることから、警察では、その積極的な取締り、被害少年の発見保護に努めている。
 平成3年に福祉犯の被害者となった少年(福祉犯被害少年)の学職別状況は、表3-10のとおりで、前年に比べ364人(1.9%)増加し、また、

表3-10 福祉犯被害少年の学職別状況(平成3年)

高校生、無職少年の多いことが目立っている。男女別では、女子が福祉犯被害少年の60.6%を占めているが、これは、飲食店等において客に接する業務に少女を従事させたり、少女に売春をさせるなどの事犯が多いことによるものである。
 一方、3年の福祉犯の検挙人員は1万1,154人で、前年に比べ501人(4.7%)増加した。
 福祉犯の法令別検挙状況は、図3-7のとおりで、毒物及び劇物取締法違反が31.6%と最も多く、次いで青少年保護育成条例違反の順となっている。福祉犯の検挙人員に占める毒物及び劇物取締法違反者の割合は年々高くなっており、昭和62年には13.1%であったものが、平成3年には31.6%となった。

図3-7 福祉犯の法令別検挙状況(平成3年)

(3) 少年相談
 警察では、少年の非行、家出、自殺等の未然防止とその兆候の早期発見に資するために少年相談の窓口を設け、自分の悩みや困りごとを親や教師に打ち明けることができない少年、子供の非行その他の問題で悩む保護者等からの相談に対して、心理学等に関する知識を有する専門職員や経験豊かな少年係の警察官、婦人補導員が必要な指導や助言を行っている。また、この制度をより簡便に利用できるように、都道府県警察では、ヤング・テレホン・コーナー等の名称で電話による相談業務を行っている。
 平成3年に警察が受理した少年相談の件数は9万8,375件で、前年に比べ1万2,203件(11.0%)減少した。その相談内容は、図3-8のとおりで、少年自身からの相談では、性、健康問題、交友問題に関する悩みが多く、また、保護者等は、非行問題等に関して悩みを持っている者が多い。

図3-8 少年相談の内容(平成3年)

(4) 地域社会等と連携した非行防止、健全育成対策
ア 少年の規範意識向上のための対策
 最近の少年非行の原因、背景の一つには、少年自身の規範意識の低下が挙げられる。このため、警察では、家庭、学校、地域社会等との連携の下、少年の規範意識の向上を図る活動を推進している。
(ア) 少年を非行から守るパイロット地区活動
 警察では、少年を非行から守る必要性の高い地域を「少年を非行から守るパイロット地区」に指定しており、平成3年度には、全国で392地区を指定した。これらの地区では、家庭、学校、地域社会の協力の下に、主に小学校高学年と中学生を対象にして、非行防止ハンドブック等を利用し、非行防止のための教室や座談会を開催している。3年度には、約1万回の非行防止教室を開催し、延べ約141万人の少年が参加した。
(イ) 少年の社会参加、スポーツ活動
 少年にとって、地域社会の様々な活動に参加したり、スポーツ活動を行うことは、地域の人々や少年相互のふれあいを通じて社会の一員としての自覚をはぐくみ、あるいは、努力することの大切さを学ぶよい機会であり、少年の健全育成に資するものである。
 このため、警察では、関係機関、団体、地域社会と協力しながら、社会奉仕活動、生産体験活動等の社会参加活動やスポーツ活動を推進している。特に、警察署の道場を開放して地域の少年に柔道や剣道の指導を行う少年柔剣道教室には、3年中に、約1,100警察署において、約11万人の少年が参加した。また、3年7月には、(財)全国防犯協会連合会主催の第4回全国警察少年柔道・剣道大会の開催に協力した。
イ 少年を取り巻く社会環境の整備
 警察では、少年を取り巻く社会環境の浄化を図り、非行を誘発する環境を除去するための活動を推進している。
(ア) 初発型非行防止のための環境整備
 警察では、関係業界等に対し、初発型非行を中心に少年非行が行われやすい環境を改善するよう協力を求めている。デパート、スーパーマーケット等に対しては商品の陳列方法の改善、保安体制の強化等を、自転車販売業者に対しては防犯登録、効果的な施錠の勧奨を、また、自治体、駅等に対しては、駅周辺の自転車置場、駐輪場等の整備とその適切な管理等を要請している。
(イ) 少年を守る環境浄化重点地区活動
 警察では、少年を取り巻く社会環境を浄化する必要性の高い地域を「少年を守る環境浄化重点地区」に指定しており、3年度には、全国で85地区を指定した。これらの地区では、地域住民や民間ボランティアが中心となって、少年のたまり場等の浄化運動、環境浄化住民大会等の環境浄化活動を推進している。
ウ 民間ボランティアの活動
 少年の非行を防止し、その健全な育成を図るため、少年指導委員、少年補導員、少年警察協助員等の民間ボランティアによって、地域に密着したきめ細かな活動が行われている。少年を有害な風俗環境の影響から守るために、全国で約5,000人の少年指導委員が少年補導活動や風俗営業者等への協力要請活動等を行っているほか、全国で約5万5,000人の少年補導員が地域における一般的な非行防止活動に従事し、また、全国で約1,100人の少年警察協助員が非行集団の解体補導活動に従事している。
(注) 少年指導委員、少年補導員、少年警察協助員の数は、4年4月1日現在のものである。
エ 関係機関、学校、職場等との連携
 警察では、教育委員会等の関係機関と連携を取り、広報啓発活動の強化をはじめとする諸施策の推進に努めている。特に、地域社会と一体と なった総合的な非行防止活動を展開するため、昭和54年からは、「青少年を非行からまもる全国強調月間」において、知事部局等の関係機関と連携した各種の活動を実施している。
 また、無職少年の非行を防止するために、関係機関と連携し、民間ボランティアの協力を得て、就労、就学を希望する無職少年を支援する活動を推進している。
 さらに、児童、生徒や勤労少年の非行を防止し、その健全な育成を図るため、全国で約2,800の学校警察連絡協議会と約600の職場警察連絡協議会が結成されている。
(注) 学校警察連絡協議会、職場警察連絡協議会の数は、平成4年4月1日現在のものである。


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