はじめに


 情報通信技術の進歩や、パソコンの普及とオープンネットワークの整備・普及により、情報流通の高速化・ボーダレス化が飛躍的に進展しつつある。

 特に、オープンネットワークを利用して行われる、いわゆる電子商取引については、その即時性・簡便性の故に、国内外において有効かつ現実的なビジネスとして期待されており、既に実用段階に移行しているものも少なくない。

 しかし、一方では、このようなネットワーク社会への急速な移行に伴い、ネットワークを利用した不正行為・犯罪による被害が世界的に深刻化しつつあり、我が国においても、他人のIDやパスワードを盗み出した上、これを用いて他人になりすまして不正な取引を行う等の事例が発生しているとともに、これによる消費者被害が問題となっている。

 このような状況に対処するためには、まず、ネットワーク上でのリスクに対する認識を深め、ネットワーク社会における情報セキュリティの重要性について、広く国民的コンセンサスを形成するとともに、各リスクに対応する実効的な情報セキュリティ技術の研究・開発・普及を進めることが重要である。

 また、各個人や企業レベルにおける対処措置のみならず、法制的枠組みを中心とする社会システムの在り方についても、ネットワーク犯罪に対応できるものとなるよう見直しを図る必要がある。

 特に、インターネットの普及・発達に伴う情報流通の国際化が急速に進んでいる一方、国境を越えた多様なネットワーク犯罪が発生しつつある現状に照らせば、今後、一企業単位又は一国単位の情報セキュリティ対策では不十分となることは明らかであり、国際的な協調の下に情報セキュリティ施策を策定し、当該施策に則った形態の社会のセキュリティシステムを構築すべき要請が強まることは確実である。

 そして、そのような国際的ハーモナイゼイションを基調とした上で、我が国の実情に沿った形態の社会のセキュリティシステムを構築するためには、諸外国の情報セキュリティ施策の実態及びその今後の動向について的確に把握しておくことが不可欠の前提となる。

 このような認識の下、(財)社会安全研究財団の自主研究事業として、平成8年7月に「情報セキュリティ調査研究委員会」が設置され、(株)帝国データバンク及び(株)三菱総合研究所の協力を得て、国内企業を中心とした情報セキュリティ技術の研究・開発の現状及び情報セキュリティ施策の国際的動向に関する調査を実施し、それらの調査結果を基礎として、平成8年7月から平成9年3月まで計5回に渡り、今後の情報セキュリティ施策の在り方に関する討議を進めてきたところであるが、このたび、その概要をとりまとめ、ここに報告書として刊行することとしたものである。

平成9年4月  


情報セキュリティ調査研究委員会

委員長 辻井 重男


序章

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