情報通信技術の普及に伴い、政府や企業では情報を電子データの形で保有することが一般的となっています。このため、諜報の分野でも、情報通信技術を用いた情報収集(サイバーインテリジェンス)「最も安全で安価なスパイ」として注目されています。

 例えば、米国グーグル社は、平成21年12月に同社が中国から受けたサイバー攻撃において、中国の人権活動家の電子メールが標的にされたと公表しています。米国議会の諮問機関の年次報告書では、この攻撃は米国の金融、技術、メディア、化学等33以上の企業の保有情報を対象とした大規模なサイバー攻撃の一環だとしています。


 
北京にある米グーグル社の中国事務所。
平成22年3月、同社は中国本土でのネット検索サービスを停止しました。(ロイター/アフロ)


 

 サイバーインテリジェンスの手口としては、業務に関連した正当なものであるかのように装いつつ、不正プログラムを添付した電子メールを送付し、これを受信したコンピュータを不正プログラムに感染させることにより機微な情報の窃取を図るなどの巧妙な手法が用いられているものとみられています。

 サイバーインテリジェンスにより機密情報が窃取されると、我が国の治安、外交や安全保障に重大な影響が生じる可能性があります。警察では、我が国の政府機関や先端科学技術保有企業等に対してこのような攻撃がなされていないかどうか実態の解明を進めるとともに、我が国の国益が損なわれることのないよう、違法行為に対して厳正な取締りを行うこととしています。