新方針で臨んだ今次総選挙で議席を維持した日本共産党

1今次総選挙における「選挙闘争」結果

 日本共産党は、今次総選挙で、小選挙区選挙に152人、比例代表選挙に79人(小選挙区選挙との重複60人)の候補者を擁立しました。結果は、小選挙区選挙では全敗しましたが、比例代表選挙では前回同様、7ブロックで9議席(東北1、北関東1、南関東1、東京1、東海1、近畿3、九州・沖縄1)を獲得し、解散時の9議席(すべて比例代表)を維持しました。
 今次総選挙は、平成19年の第21回参議院議員通常選挙で改選前の5議席から3議席に減らしたことを受け、同年9月の第5回中央委員会総会(「5中総」)で、従来の全小選挙区への候補者擁立を見直し、比例代表選挙での前進に集中するとの「新しい選挙方針」で臨んだ初の選挙でした。このため、小選挙区選挙では得票数・率ともに大幅に減らしましたが、比例代表選挙では得票数が微増し、得票率は微減しました。日本共産党としては、小選挙区選挙の候補者を前回の275人から152人と大幅に減らしても、比例代表選挙での得票数が増加し、得票率は前回比で0.22ポイントの減少に抑えることができたことから、「新しい選挙方針」によって効率的に選挙闘争を行ったといえます。21年10月の第9回中央委員会総会(「9中総」)では、5中総の「新しい選挙方針」について、「全体として見るならば現在の党の力量、実情にそくした的確な方針であった」と評しました。
 また、5中総の「新しい選挙方針」の導入の目的は、多額の供託金没収等による財政圧迫の解消でもありましたが、今次総選挙での供託金没収額は、小選挙区選挙で3億7,200万円、比例代表選挙で1億8,600万円、合計5億5,800万円(前回比1億8,000万円の減)と高額になっています。5億円以上の供託金没収は、党財政上、大きな負担となったとみられます。

衆院選における共産党の議席及び得票数   記者会見する志位委員長(時事)
    記者会見する志位委員長(時事)

2新政権に対しても綱領路線を堅持

 日本共産党は、今次総選挙で民主党が308の議席を獲得したことについて、「国民が民主党の路線や政策を評価したためでないのは、世論調査の結果等でも明らかである」としました。さらに、「民主党は、『財界中心』、『日米軍事同盟中心』の自民党政治のゆがみを大本から正す立場がない」などとし、日本共産党が綱領で掲げている「対米従属」と「大企業・財界」の2つの打倒目標が、新政権下でも正されないとの考え方を示し、綱領路線を堅持していく立場を強調しました。志位委員長も、21年9月の党創立87周年記念講演会で、日本共産党は昭和30年以来、「正確な綱領路線のもとで、不屈さを発揮し、意気軒高で奮闘してきた」と述べ、綱領路線が不変である旨明言しました。
 日本共産党は、新政権に対しても従来の路線に従い、「『財界中心』、『日米軍事同盟中心』を正す」という立場から、「軍事費の削減」や「大企業・大資産家への減税見直し」などを追求していくものとみられます。
日本共産党87周年記念講演(時事)
日本共産党87周年記念講演(時事)

3党大会と次期参議院議員通常選挙に向けた党勢拡大を重視

 日本共産党は、9中総で、第25回党大会を平成22年1月13日から16日までの4日間の日程で招集することを決定しました。党大会の開催は、18年1月の第24回党大会以来4年振りとなります。
 また、9中総では、次期参議院議員通常選挙について、比例代表選挙では650万票以上の得票と5議席の絶対確保を、選挙区選挙では東京都選挙区での議席の絶対確保をそれぞれ目標とすることを決定しました。その上で、党大会に向けた「党躍進特別期間」に取り組むことを提起し、党勢拡大等の党建設への取組みの強化を図るとしました。
 日本共産党は、5中総以降、2万1,700人の新入党員を獲得して今次総選挙を闘ったとしていますが、20年7月の第6回中央委員会総会で目標として示した全党支部での党員獲得は、9中総時点で4割強の達成率にとどまりました。また、機関紙部数についても、今次総選挙後、大きく後退させ、9中総では、前回党大会時と比べ約18万部の減であることを明らかにしました。
 日本共産党は、9中総で、今次総選挙での最大の教訓は党建設の不足である旨断じたことから、下部組織は引き続き厳しい党勢拡大の取組みを迫られていくとみられます。
日本共産党の党員数