巧妙化・潜在化する不法入国・不法滞在事犯

1巧妙化・潜在化する不法入国・不法滞在事犯

 国内の不法滞在者(不法残留者、不法入国者及び不法上陸者)の数については、警察を含む関係機関による総合的な施策により減少して推移しているものの、平成21年1月現在で、約13万人とされており、依然として多くの不法滞在者が存在しています。
 警察で摘発した偽造旅券の行使等による不法入国事犯の検挙人員は17年をピークに減少傾向にあるものの、依然、高い水準で推移しており、特に最近は、偽造技術の向上により精巧な各種偽造証明書が出回っているほか、偽装結婚・偽装認知等により不正に在留資格を取得する事案や19年11月の国際空港等における個人識別情報認証システムの導入以降、退去強制歴のある者が我が国へ不法入国するため、偽造旅券等を所持するとともに、指先を刃物等で傷付けるなど指紋を偽装して入国しようとする事案も発生しており、犯行手口が、悪質・巧妙化する傾向にあります。
 また、最近の検挙事例では、雇用主が不法滞在者を工場の敷地内に居住させたり、稼働先と住居の間を車両で送迎するなど、摘発を免れるための対策を講じている場合もあるなど、不法滞在者が潜在化しており、その摘発が困難になっています。
 こうした不法滞在者の中には、犯罪に手を染めるようになる者もいることから、警察では、警察の各部門の総力を結集した取締り体制を構築し、入国管理局との合同摘発や集中取締りを積極的に実施したところ、21年中における出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)違反の送致人員と入管法第65条による入国警備官への引渡し人員の合計は6,982人となりました(暫定値)。
 警察では、今後も、関係機関と緊密に連携し、不法滞在者摘発のため、入管法第65条に基づく入国警備官への引渡しを積極的に推進するとともに、文書偽造や偽装結婚、偽装認知、ブローカーが介在する不法滞在助長事案等の悪質事犯に対する取締りを強化することとしています。
押収した偽造外国人登録証明書等(5月、愛知) 合同摘発の状況(5月、神奈川)
押収した偽造外国人登録証明書等(5月、愛知) 合同摘発の状況(5月、神奈川)

2新たな在留管理制度

 21年7月15日、新たな在留管理制度を定めた「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」が公布され、公布の日から3年を超えない範囲で施行することとされました。
 新たな在留管理制度は、適法な在留資格をもって我が国に中長期間に在留する外国人を対象として、法務大臣が在留管理に必要な情報を継続的に把握する制度の構築を図ろうとするもので、対象となる外国人には、在留カード(注)が交付されます。
 新たな在留管理制度により、在留期間の上限が3年から5年に伸長される等、適法に在留する外国人の利便性が向上するとともに、正確な在留管理情報の把握が可能となるため、不法滞在外国人を効率的に発見することができることとなります。警察では、今後も、我が国に適法に在留する外国人の共生に向けた取組みをより一層推進することとしています。
(注)本邦に在留資格をもって在留する外国人のうち、次に掲げる者以外の者に対し、在留カードが交付されます。
1 3月以下の在留期間が決定された者
2 短期滞在の在留資格が決定された者
3 外交又は公用の在留資格が決定された者
4 これらの外国人に準じたものとして法務省令で定める者
在留カード 在留カード

新たな在留管理手続の流れ 新たな在留管理手続の流れ 新たな在留管理手続の流れ 新たな在留管理手続の流れ
法務省入国管理局ホームページより引用