はじめに

 平成21年は、北朝鮮による弾道ミサイルの発射や核実験の実施、新型インフルエンザの世界的な流行等緊急事態への対応をめぐって緊迫した情勢が続きました。また、12月に米国旅客機内でイスラム過激派による自爆テロ未遂事件が発生したほか、米国や豪州において、イスラム過激派の思想の影響により過激化した者によるテロ計画事件が摘発されるなど、全世界で国際テロへの脅威が高まりました。さらに、7月には米国と韓国の政府機関等に対して大規模なサイバー攻撃が行われ、サイバーテロ発生の懸念が現実のものとなりました。
 国内では、8月に行われた第45回衆議院議員総選挙の結果、9月16日に民主党・社会民主党・国民新党の三党連立による鳩山内閣が誕生しました。右翼は、鳩山内閣の政策等に対して強く反発し、執拗な抗議活動に取り組みました。経済・雇用情勢については、11月の月例経済報告においてデフレが宣言されたほか、7月には完全失業率・有効求人倍率ともに過去最悪を記録するなど、一段と厳しさを増しました。過激派は、この経済・雇用情勢を組織拡大の好機ととらえ、大衆運動や労働運動への介入を強めました。また、平成21年7月中国・九州北部豪雨や台風9号に伴う大雨を始め、相次ぐ自然災害により、全国各地で大きな被害が発生しました。
 こうした中、警察は、国内外の関係機関等と緊密に連携して、テロ等の情報の収集・分析、重要施設の警戒警備等を推進するとともに、災害が発生した際には迅速かつ的確に救出救助活動を行うなど、警備諸対策に全力で取り組みました。
 また、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議は、22年11月に、横浜市で開催されることが決定しました。国際テロや反グローバリズムを掲げる過激な勢力等による暴動等の発生が危惧されることから、警察では、実戦的な部隊訓練を反復実施するとともに、国民の理解と協力の確保に向けた広報活動を行うなど、組織の総力を挙げて各種取組みを推進しています。
掲載内容は、特に記載のある場合を除いて、平成21年12月末現在のものです。

米国旅客機を標的とした自爆テロ未遂事件の容疑者が隠し持っていた高性能爆薬(時事)
米国旅客機を標的とした自爆テロ未遂事件の容疑者が隠し持っていた高性能爆薬(時事)
 
4月5日に発射された長距離弾道ミサイル「テポドン2号」(時事)
4月5日に発射された長距離弾道ミサイル「テポドン2号」(時事)
米国旅客機を標的とした自爆テロ未遂事件の容疑者が隠し持っていた高性能爆薬(時事)   4月5日に発射された長距離弾道ミサイル「テポドン2号」(時事)